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モーニング娘。'21『16th~That's J-POP~』をアンジュルムヲタが全曲レビュー

モーニング娘。'21が3年ぶり(びっくり!?)にアルバムを出した。思えば2015年あたりからアンジュルム(まだスマイレージだった)ヲタへシフトしていったもので、なかなかモーニング娘。をしっかりと観る機会は減ってしまった。ちょうど、つんく♂さんがプロデューサーから外れた時期とも被っている。別にそれは「こんなのモーニング娘。じゃない」なんていう『つんく♂原理主義』に基づくことではなく、どちらかというと「鞘師の卒業がショックで仕方なかった」という理由だ。

心の傷を癒す存在がアンジュルムだった。

以来、モーニング娘。の単独コンサートは行かなくなってしまい、メンバーのパフォーマンスを観る機会はハロコンくらいしかなくなった。それから6年が経ち、今回3年ぶりにアルバムを出すことが発表された時、僕は迷わず買うことを決めていた。

なぜか?

去年からのコロナ禍において、モーニング娘。のことを改めて観る機会が増えた。石田さんの積極的なSNS発信に感心したり、逸材だらけの15期に魅了されたり、理由は様々ある。

なかでも大きな切っ掛けは、ライブやイベントの配信が増えたことだ。なかなか現場まで行けない状況にあって、手軽に、時間を気にせず視聴できる環境ができたことは不幸中の幸いだ。なのでFC限定配信なども含めて、けっこうな数の配信を観るようになった。

観てるとやっぱり「モーニング娘。っていいよなぁ」と思う瞬間が出てくる。普段はアンジュルムという対極に位置する動物園(いや、サファリパークか)で生活している人間としても、正統派ハロプロ様式美を受け継いでいるグループの安定感と15期による「未来へのタスキ」的な希望がバランスよく交じり合う現在のモーニング娘。は、とても魅力的だ。

特に『純情エビデンス』が発表された時の衝撃は個人的にすごかった。MVのサムネにもなっている15期の北川莉央ちゃん。この子の素晴らしさに気付いた瞬間、「恋カナ?」なんて気持ちにもなった。

思わずnoteも書いた。現リーダー譜久村聖さんのことを「どこかウェットな憂いがある」と加入当時つんく♂さんが評していたが、彼女にも同じようなウェッティーな美しさと儚さと心強さが感じられる。

そんなこんなで15期を切っ掛けとしても、モーニング娘。を再評価している(偉そうな言い方ですね)わけだ。そこに発表された3年ぶりのアルバム発売。収録曲の1/3がシングル曲でもあり、9曲も書き下ろし楽曲が追加される。しかも全て、つんく♂作詞作曲によるもの。これは買うでしょ。そう思うのも自然な流れだった。

ということで、相変わらず前段の長いnoteだけど「アンジュルムヲタから観た全曲レビュー」でもしてみたいと思う。

つんく♂さんのサロンでも「感想とかもっと呟いたり書いたりしろ」とつんく♂さん本人が仰っていたので、てか、あんな人(成功者という意味でね)でもまだまだ自分の曲の評価とか気になるんだなぁと微笑ましくも思ったので書いていきますね。

① 愛してナンが悪い!?

1曲目からスルメ。何度も聴いているうちに効いてくる「つんく♂感」がたっぷり詰まっている。そこまでアップテンポでもないのだけど、地に足着いた安定感を感じさせる。つんく♂さんのライナーノーツにも「私たちはブレません」という言葉が出てくるとおり、ドッシリと構えた強さがある曲。

楽曲全体から「このアルバムのコンセプトはこれやで」と言わんばかりの挑発的な鋭さが出ているのも、コーラスに譜久村聖、佐藤優樹、小田さくらに加え野中美希が入っていることによる声の厚み、深みに起因している気がする。縦への鋭さのなかに横軸の広がりが野中コーラスにある。たぶん。

あと、大好きなところがAメロすぐに出てくる

ジュージュージュジュっと裏返せ 深夜焼肉デイト

歌詞に食べ物ネタ、それだけで「つんく♂的アンセム」感が出てくるのが不思議だが、僕らはこれを待っているんだろう。いつになっても。

② ギューされたいだけなのに

2020年末に発売されたシングル曲。「ウサギちゃんシンドローム」というパワーワードにモーニング娘。ヲタ界隈は賑わっていたが、個人的にはそこよりも全体から溢れ出る「肥大化した承認欲求」の波動にクラクラした。

「ギューされたいだけなのに」は言い換えれば「いいね!されたいだけなのに」という気持ちと同義なんだろう。SNSでの上手くいかない自己表現に焦る感情と周りの成功者への嫉妬。そんな歌に思えてならない。

それは音の面でも、ずっと足踏みして進まないようなダウナー感によって演出されているんじゃないだろうか。

あと「女って単純」という歌詞を最年少の山﨑愛生ちゃんに歌わせるところが、とてもモーニング娘。だなぁと思う。

③ 信じるしか!

生田、石田、小田、加賀、森戸、岡村による曲。ライブでのパフォーマンスがどんな感じか気になる。なかなかまだモーニング娘。の最近の子の声を完璧に聴き分けられないのだけど、岡村ほまれちゃんがお姉さんメンバー達に混じってどんなパフォーマンスをするのか楽しみだ。

9期加入当時の鞘師くらいのインパクトが出てると嬉しいのだが、それはハードル高すぎるか。

つんく♂さんがライナーノーツでも書いている、ラストの

一番の強敵だ
皆が知ってる最強のカワイイ私

は、数人のユニゾンっぽいけれど岡村ほまれちゃんの声が聴こえる気がするので、ラストは彼女がカメラアップで抜かれてヲタクが「ほまたん優勝!
」となる絵を想像している。

④ TIME IS MONEY!

佐藤、野中、横山、山﨑による曲。ライブで披露する時の難易度はかなり高そう。この曲も佐藤優樹、野中美希でコーラスをしてるが、この二人の声のハモリが好きなのかもしれない。とても心地よい。

曲自体はどこか80年代から90年代のエレクトリックサウンドを感じさせる構成で、そこも含めて心地よい。歌詞の細かいセンテンスの区切り方と細かく刻む音を高音が刺さるメンバーたちで歌っているのが良いんだろうなぁ。

⑤ 泣き虫My Dream

この曲に関しては、四の五の言わずつんく♂さんのライナーノーツを読んでもらえたら全て良いと思う。

最近、noteやサロンで対談した譜久村や石田からもやはり感じます。戦ってるなぁ〜って。25年という歴史あるブランドを背負って戦ってる。そう思いました。

この曲はそういう戦士たちに対して、時には「泣き虫」でいい。今はまだ途中だろうけど、その夢信じて。自分が「泣き虫」であることを認めて、そして隠す必要は無い、そういうことを伝えたかったのだと思います。

多くを語る必要もなく、ライブでもラストで聴かせて泣かせてくる絵が見える。とても雄大で暖かで、現リーダー譜久村聖のことを歌っているんじゃないかと個人的には感じるくらいだ。

ふくちゃんの卒業の時にこれ歌われたら号泣必至かと。

人生って 綺麗事じゃない 驚きもあるから
強くなる 素直な泣き虫でいいの Believe me

ここが特に。

※定期マガジン購読者限定のには更に詳しく、ふくちゃんに関して言及していた。やっぱりそういう曲なんだな。

⑥ 二人はアベコベ

譜久村、牧野、羽賀、北川による曲。新メンバーを全て別のユニットへ組み込むところが試みとして正しいなぁとまず思う。この4人は4様に自分の中の「カワイイ」を持っている子たちという印象がある。だからこそ、こういう正統派なカワイイ曲がよく似合う。「四人はアベコベ」だわ。

最近のギンギンに強気な音作りの曲が多いなかで、こういう癒しソングが入っているとアルバムとしても深みが出るし、モーニング娘。の多面性を表しているんじゃなかろうか。

ライブでは4人がセンターを奪い合うような、「私がカワイイでしょ」と自己主張をぶつけ合うような(大人げなく譜久村さんが一番目立とうとする感じとか)演出で歌ってほしい。

⑦ 純情エビデンス

大好きな曲。ここ数年のモーニング娘。の曲でも上位に確実に入る。そして前段でもさんざん書いたことだけど、とにかく北川莉央ちゃんが素晴らしい。先日行われたタワレコの有料配信イベント「アイドル三十六房」にてゲストの譜久村・生田両人も北川莉央ちゃんのカメラ目線、決め方を絶賛していた。

もう一度、貼っておこう。ホント素晴らしい。

⑧ このまま!

問答無用でライブでアガる曲。ジャンプ禁止どころか声出しまでコロナ禍で出来なくなってしまっているのが辛い。この曲を聴いていると自然とコールをするヲタクの声がイメージできる。そしてみんな笑顔でジャンプしている。

笑ってってって YEAH YEAH YEAH
夢ってってって YEAH YEAH YEAH

でステージも客席も満面の笑みでピースしている姿が目に浮かぶ。

ひなフェスでのパフォーマンスがハロステでアップされた。ひなフェスはテレビで観ていたけど、最高だった。多幸感に満ちすぎて、単独コンで歌ったらヲタク泣くんじゃないかと思う。

あと、何気にアレンジ平田祥一郎さんのギターが荒ぶっているのも楽しくなる要因なんだろうな。いい曲。好き。

⑨ KOKORO&KARADA

15期が加入した一発目のシングル曲。この曲はMVのサムネにあるように「佐藤優樹」が全面に出てくる印象だ。心と体というテーマに、今のまーちゃんはピッタリだと思う。急激に大人になっていく彼女のバランスとアンバランスが、時に危うく感じる瞬間もあれば、何とも言えない魅力に感じる瞬間もある。

リリース当時よりも彼女自身、難しいバランスのなかでタイトロープを渡っているようにも見えてしまっているのが、怖くもありワクワクもしてしまう。本当に一瞬でも目を離したら消えてしまうんじゃないかと思うのだ。

未来へ向かう雲にポンっと飛び乗っていってしまいそう。

笑いながら。

⑩ 人生Blues

2019年のシングル曲。もうそんなに経つんだ。この曲もめちゃめちゃ好き。リリース当時もずっと聴いていた。なにが自分に刺さったのかは明確で、歌詞がグサグサ刺さるのだ。

人生って
なんとも無理な場面から
なんとかするから なんとかなる

ここがリズム含めて気持ち良すぎるのと同時に、ハッと気づかされる感じで聴くたびに動揺する。曲自体からブルース感は微塵も感じないのだけど、歌詞からはブルースの魂が溢れていて、とても説教臭い言葉が並んでいるのに嫌味が無く受け入れてしまうのも不思議だ。

曲がいいんだろうなぁ。

当時noteも書いたんだけど、あんま読まれなかった。これも人生。

⑪ Hey! Unfair Baby

2019年からライブでは歌われていた曲らしい。当時のハロステでも、すでにレコーディング音源をライブ映像と合わせて配信していた。ハロプロってたまにこういう曲がある。Juice=Juiceの『プラトニック・プラネット』もそうだが、なかなか音源化されない名曲ってある。

この『Hey! Unfair Baby』も娘。ヲタの間では長らく音源化を待望されていた曲なんだろうな。とてもライブ映えする楽しさが詰まっている。

途中の二回ある「変わらなきゃ!」というセリフを山﨑愛生ちゃん、岡村ほまれちゃんが担当しているのもいい。『ギューされたいだけなのに』の「女って単純」と同じだね。こういうセリフを最年少メンバーが担当するのがエモだったりしちゃうわけよ。

「ケツ拭くのもあんただろ」という歌詞が出てくる。ケツって、と思ってしまうが、その時の振りが後ろ向いてお尻をペンペンしていて可愛い。とても良い。

⑫ 恋愛Destiny〜本音を論じたい〜

Hello! Project presents...「Premier seat」モーニング娘。'21が初披露だったのかな。この番組、大好きで全てのグループの放送を観ている。

とにかくカメラワークと照明効果が素晴らしくて、普通のスタジオライブなんかとも違うプレミア感が味わえる。これ観たことない人はdTVチェンネルでも観られるから是非とも観てほしい。4月18日にも全グループまとめた総集編(未公開映像含む)が配信されるようなので。

放送後にYouTubeにもLyric Videoとして映像が公開された。もう、イントロがはじまってからの疾走感、「これぞモーニング娘。」というアッパーなロックテイストが最高だわ、と初見で思った。そして、この曲を筆頭に書き起こされているアルバム曲は、確実に素晴らしいものだろうと直感した。

明るいロックな曲調だけど、歌詞は「自分だけが一方通行な愛情表現しているようでイライラする」「もう、私たちダメなのかな」という焦りを感じている女子の気持ちが描かれている。「婚期」というのも意識しているようだが、ただ、もうそんな時代でもない気がするので、この主人公の女性は本当に自分がしたいことを見つめなおしても良いんじゃないかと思ってしまう。

まあ、そういったモヤモヤを心の中で爆発させているのが、まんまアップテンポな曲調で表されているんだろうなと。ただ、そこでも「本音を論じたい」とぶつけるよりも、サッサと切り捨ててストレスフリーな環境に身を置く方が楽だと思いますよ、なんて思っちゃったりする。

歌詞を読み込むとそんな感情が出てくるけれど、モーニング娘。が歌うとジメジメした感じが払しょくされて「なんだかんだあるけど、明るく前向きに進むぞ!」って結論になっている気がしてくるのが面白い。

大好きな曲ですわ。

⑬  LOVEペディア

13期加入の時、モーニング娘。では珍しく『BRAND NEW MORNING』という星部ショウ曲が一発目に採用された。「つんく♂曲じゃないんだ」と驚いたと同時に、モーニング娘。にも新しい風を入れていくのかなと思ったものだ。

さて、15期加入の一発目も作詞・児玉雨子、作曲・オオヤギヒロオという非つんく♂な組み合わせで『LOVEペディア』『人間関係No way way』が発表された。

僕は児玉雨子さんの歌詞が大好きだ。つんく♂さんとはまたベクトルの違う「女性観」を繊細かつ大胆に描くのを深読みするのが大好きだ。この『LOVEペディア』と『人間関係No way way』は面白いギミックとして、曲は同じものを採用しながらアレンジと歌詞を変えることで全く別の曲に着せ替えてしまっている。

アップフロント制作陣の遊び心と児玉雨子さんの苦し紛れの作詞が奇跡の融合を果たした結果なのだが、その辺の顛末を以前、トークイベントで児玉雨子さん、星部ショウさん、そしてアップフロントの橋本さんが詳しく喋ってくれている。そのイベントのレポも書いてあるので貼っておきますね。

超面白いので。

ところで、この曲では15期を中心にした歌割りになっている印象だ。若い子たちがメインだから声質も全体的に若い。次の『人間関係No way way』とユニゾンの雰囲気を聴き比べるのも面白い。

※『LOVEペディア』『人間関係No way way』の作曲はオオヤギヒロオさんでした。4/18に加筆修正しました。ご指摘ありがとうございました。

⑭ 人間関係No way way

こちらは『LOVEペディア』と打って変わって12期と13期がメインになっている。普段、モーニング娘。には歌割りに偏りがあるイメージを外から見ていると感じる。どうしても小田さくら、譜久村聖、佐藤優樹という強い個性が確固たる地位を築いてしまっているので、簡単に割って入る隙がないのかもしれない。

だが、『人間関係No way way』ではMVを観ても完全に12期13期がメインになっている。重要なパートを野中美希や羽賀あかね、加賀楓が歌いセンターに牧野真莉愛が君臨し、ポイントポイントで横山玲奈が愛嬌を振りまいている。そして、しっかりと後ろで9期10期11期が支えている。

こういうのも、もっと観たいと思うのだ。14期の森戸ちぃちゃんだけ若干、目立つ部分少ないけど、この頃って喉の調子が悪かった時期だっけ?なんかそんな時期があったから“敢えて”パートがないのかなと思ってるんだけど、違ったかな。違ったらごめんなさい。

『LOVEペディア』と『人間関係No way way』では『人間関係No way way』派です。真ん中に牧野真莉愛という布陣が好きなんです。

ところで、つんく♂さんのライナーノーツでは、この2曲に関しては詳しく言及していない。だが、ぜひ今後つんく♂さんには児玉雨子さんや星部ショウさんについて聞いてみたい。若い才能をつんく♂さんがどう見ているのか、とても知りたい。つんサロのゲストで出てくれないかな。

⑮ 青春Night

アルバムのラストを飾るのは2019年に発売された『人生Blues』と両A面の『青春Night』だ。僕は正直、当時は『人生Blues』が好きすぎてこの曲を過小評価していた。

ただ、ライブなんかで聴くとやはり良いのだ。KOKORO&KARADAに沁み込んだつんく♂ディスコサウンド、赤羽橋ファンクイズムが無条件に反応してしまう。そしてMVを観返すと森戸知沙希ちゃんが最高に可愛い。ちぃちゃんが可愛いというのは、それだけで正義になる。なんか、そんな感覚。

この曲にはラップパートがある。モーニング娘。ってラップ上手だよね。昔から伝統的に上手。アンジュルムや他のグループにないリズム感がある。たぶん、徹底的に16ビートなんだろうな。アンジュルムを普段観ていると、もう少しルーズな部分あって、リズムよりも感情を優先してたりすることもある。

モーニング娘。は、やはり16ビートの化身なんだろう。

以前、アンジュルムの『恋はアッチャアッチャ』の企画で最高にふざけたMVを作ったことがある。ここにハロプロのメンバーが友情出演(?)してアッチャアッチャのダンスをしている。

この佐藤優樹を観て貰いたい。ひとりだけリズム感が段違いなのだ。完全に16ビートを刻んでいる。ひとりだけ倍速でリズムを取っているようにすら見えるくらいレベルが違う。

ああ、すごいな。と思った。

■ 総括

えー、アンジュルムヲタ的な目線が入っていたかといえば、そこまででもないレビューだが、この1週間くらい久しぶりにモーニング娘。の曲を聴きまくっていた。シングル曲もいいけど、やはりアルバムを通して聴くところにこそモーニング娘。の醍醐味があるわと感じた。

それはいまだに僕的ハロプロ不朽の名作『セカンド モーニング』が心にあるからだろう。

16枚目のアルバムも、また誰かにとっての不朽の名作たり得る作品に仕上がっていると思う。それくらい、つんく♂さんのマインド、エモーションが詰まっているバラエティ豊かな曲が揃っている。はやく単独コンサートで、このアルバム曲をメインにしたセットリストを観たいですね。久しぶりにモーニング娘。コンに行きたくなる一枚でした。

つんく♂さん、感想書きましたよ。


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