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ふたりはDIVA~高木紗友希と小田さくらがMISIA「逢いたくていま」を歌う意味~

まだまだ予断の許さないコロナ禍のなかでハロプロは他に先駆けてホールでのコンサート開催を決定した。全国規模で毎年行っている夏のハロープロジェクトコンサート通称ハロコンは、通常であればハロプロの全メンバーが一堂に会するコンサートだが、密を避けるために3チームに分けて、かつ全てソロでの歌唱。しかもハロプロの楽曲ではなく様々なアーティストのカバー曲を歌うという。

大英断だが「なぜハロプロの曲じゃないの?」と若干の違和感を持たせることになった。52人分のバラード曲をハロプロ内だけで用意するのが流石に難しいということはあったのかなと想像できる。色んな『大人の事情』もあるのだろう。

そんななかで2つの動画が突然公開された。

カバー曲をハロプロが歌う意味

現役ハロプロメンバーでも屈指の歌姫と称されるモーニング娘。'20小田さくらとJuice=Juice高木紗友希が同じ楽曲をカバーしたMVを公開した。

MISIAの『逢いたくていま』である。

この曲はドラマ『JIN−仁−』のテーマソングだ。ちょうど自粛期間中に再放送もされて、その内容が今の日本や世界が置かれている状況と似ていることでも話題になり多くの共感を生んだ。

この曲「離れ離れになって二度と逢えないことは分かっているのだけど、それでもまた逢いたいと願ってしまう」という切ない離別の歌だ。ただ、歌詞はそうなのだが、聴いているとどこかに「さみしさ」とか「悲しさ」だけじゃない「希望」のようなものを感じるのが不思議だ。

ドラマでは「神は乗り越えられる試練しか与えない」というセリフが出てくる。それは困難な状況のなかでも現状を打破していこうとする“人々の想い”が込められているように曲からも伝わってくる。

ハロプロの二大歌姫のカバーからも、その想いは伝わってきた。アプローチの仕方自体に差はあるが、根底にある想いは共通しているように感じた。

以前のように気軽にコンサートも出来ない状況。それでも「逢いたい」と願う気持ちはメンバーもヲタクも同じ。では、どうしたら「逢える」のか。それはお互いがお互いを真摯に思いやり、細心の注意を払うことで可能となる。厳戒態勢下で開催される夏のハロコンは1000人規模で客入れをする。ここで感染者が出たりクラスター化したりすれば、ハロプロは一気に評判を落とすことになる。

奇しくも某舞台公演において、演者と客も巻き込んだクラスターが発生したばかりだ。ひとりでも意識の低い人間がいると危険な状況になってしまう。そんな時に多数の客入れ公演を開催するハロプロに係わる人間にとって、このふたりの『逢いたくていま』は心に強く刺さったと思う。

また、同時に改めてハロプロの、アップフロントという事務所の音楽に対する真摯な姿勢も感じさせられた。様々なアーティストのカバー曲でコンサートを行うが「ただのカラオケ大会にはさせない」という気概と意思表明もこのふたりの動画には込められているんじゃないだろうか。

当初のリストにはなかったAKB48のカバーを各チームで歌うというサプライズも、アイドル界も一致団結して力を合わせて難局を乗り切ろうというハロプロからのメッセージなんだと思う。それはプロ野球とJリーグが手を取り合って乗り越えてきたように、みんなで協力しましょうという“想い”からの『365日の紙飛行機』だったんじゃないだろうか。

関係ないけど、この曲は山本彩のソロから始まることで一個強い芯が通った曲になっていて、とても良いですよね。

つんく♂から小田さくら、高木紗友希へ

たまたま11日の土曜日はつんく♂さんのオンラインサロンのミーティングが行われていて、そこでもふたりのカバー動画に関する話題が出た。つんく♂さんは、その場でYouTubeを聴きなおしてそれぞれに対するコメントを出してくれた。

小田さくらに関しては「REC前に一言話してあげたかった」「小田はとても出来る子で、いい感じに成長もしているし期待もされているから大変だと思う。だからこそ、さくっと1、2回でOKしてしまうくらいの“勇気”が欲しい」とつんく♂さんは言っていた。

“勇気”という言葉にはとても新鮮な感銘を受けた。確かに本人も最近よく歌に対する悩み、声変わりからくる変化に戸惑っているようだ。でも、だからこそ自信を持ってドン!と一発録りするくらいの気持ちが出たら小田さくらがまた一段階レベルアップするんだと思う。

高木紗友希には「普段はもっともっと粘っこくビブラートきかせて『私を聴いて!』みたいな歌い方なのが、どこか心ここに非ずな無責任さ、しれっと歌っているのが良かった」という評価。

これも面白い見かたで、高木紗友希という子は「自分、自分」となりがちな所があるが、この曲に関しては歌詞や意味を自分のなかで昇華して、マイクの先にいる人へ意識を最大限向けていたからなんじゃないだろうかと思う。「自分」ではなく「相手」がどう受け取るかに委ねた結果、いい意味で力が抜けてスッと視聴者にも入るものとなったのかもしれない。

つんく♂さんは「ふたりともハロプロには重要な子だから、これからも長い目で見てあげてほしい」と、変わらない愛のある言葉もくれた。なかなかハロメンに合う機会も無くなってしまい、モーニングのレコーディングくらいしか直接会えない(RECに参加してくれているという驚きはある)みたいだけど、今もハロメンのお父さんなんだなぁと瞬間、強く思ってしまった。

ハワイに拠点があるから難しいこともあるだろうけど、体調面とも相談しながらこれからもハロプロのことを見守って欲しいと願ってやまない。今のハロプロ、アップフロントの体制に大きな不満はないが、それでもやはりつんく♂という存在は偉大なんだと実感してしまうミーティングだった。

そして、歌のチカラの偉大さも最近よく考える。

アイドルを語る時によく「アイドルに完璧なんて求めていない。未熟なところがあるから応援したくなる」という論調がある。これは半分正しいが、半分以上間違っていると思う。「アイドルに『最初から』完璧は求めていない。未熟なところが『成長していく』から応援したくなる」のではないだろうか。

ハロプロはアイドル歌手の集団である。だからこそひとりひとりが「歌」を大切にしている姿が見れるこの夏のハロコンは、とても貴重な体験が出来るコンサートになると思う。

そして静かに、しっとりとハロメンのソロ歌唱を聴くという贅沢な時間をヲタクそれぞれも意識を高く持って大切に過ごして欲しいと願うのだ。


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