加賀楓さんのことモーニング娘。のこと

今年のロッキンで久しぶりにモーニング娘。のパフォーマンスを観た時に印象に残ったメンバーのひとりが加賀楓さんだった。昔は「加賀ちゃん」だったが、もう「加賀楓さん」だなというくらい凛とした佇まいが決まっていて、曲によってはセンターでソロダンスなんかして、完全に場を支配できるアイドルのオーラをまとっていた。

だから先日の突然の卒業発表にも、驚きはしたけど意外性はなかった。

ハロプロあるあるのひとつ「卒業を決めたメンバーはキラキラして見える」を完全に加賀楓さんは体現していた。

SNSでは発表直後からあらゆる温度感での感想であったり、ご意見からお気持ち、果ては他メンバーへの誹謗中傷にまで広がった。良い悪いは置いておいて、その根源には等しく「もっと観たかった」という想いがあったと思う。

そしてモーニング娘。に存在するパートの偏り問題という長年に渡って改善されないモヤモヤが大きな原因なんだろう。

昨今のアンジュルム、Juice、つばき等ハロプロの他グループでは新メンバーが加入したらすぐに新曲でメインを任せ、既存曲でもパートを与え、決してモブダンサーにはしない。特に最近のアンジュルムやつばきの若い子たちのイキイキとした活躍が「なぜモーニング娘。では出来ないのか」という潜在的なイライラを肥大化させてしまう要因にもなってしまっているように感じた。

例えば僕はアンジュルムのヲタクなので、この4年間で多くの卒業を経験した。特に2018年から2020年はアンジュルムの屋台骨を支えていたメンバーが次々続々と卒業し、2022年現在の10人中5人がほぼ新人メンバーという状態だ。一時期は「大丈夫か？」とも言われたが、今やもうアンジュルムは新人メンバーと言われる子たちが支えているくらいになっている。

これは安直に欠けたパートを歌えるメンバー（竹内朱莉、上國料萌衣）に振らず、むしろ積極的に若手に任せていくことを選んだ結果だ。だからだろうか。去年の笠原桃奈卒業時に今回のような話は一切見なかったし聞かなかった。

桃奈だって若手の有望株で、将来のアンジュルムのリーダー候補だった子だ。活動期間も6年くらい。まだまだこれからもグイグイとアンジュルムを引っ張ってってくれると誰もが思っていたなかで、卒業を発表した。

誰もがビックリしたし、残念にも思ったが、そこに負の感情は1ミリもなかったと思う。

今回の加賀楓卒業発表と何が違ったのか。

やはり分かりやすくそのメンバーの活躍、特にライブでの活躍を目の当たりにできたかどうかなのかなと思ってしまう。桃奈は17歳にしてアンジュルムの中心メンバーとなっていた。分かりやすく桃奈はアンジュルムとして輝いてくれていた。

でもね。たぶん、コアにモーニング娘。を追っていた人なら加賀楓さんがモーニング娘。の中心で輝いていたことを知っていると思うのだ。冒頭でも言ったように、久しぶりに観た僕ですら、加賀さんはモーニング娘。の中心的な存在になっていると感じることができた。

ハロプロダンス部としても加賀楓の存在感は確固たるものになっていた。

冷静に考えたら、加賀さんはじゅうぶんに活躍していることが分かると思う。そしてよくよく考えると加賀さんもモーニング娘。で6年、研修生から数えたら10年以上もハロプロで活動している。これはかなり長い。

「消化不良」という表現は、彼女には当てはまらないと思うのだ。

ダンスを学びたいという卒業理由も、前述のダンス部での活動を経験して更に幅広いダンスに目が行くようになったんだと当然のように理解できる。そこに何の不思議もないはずなのだ。

モーニング娘。の構造的な問題点とメンバー個人の卒業を同軸で考えてはいけないと僕は思う。それはそれ、これはこれである。

「もっと観たかった」というヲタクのエゴの押しつけは誰も幸せにならない。そしてそれが既存のメンバーへの誹謗中傷に発展してしまうのだけは本当にダメだと思う。「上が辞めないから下が育たない。ベテランは早く辞めてくれ」というのはあまりに短絡的過ぎる。卒業するメンバーには「辞めないで」と言うくせに、ひとつのグループに長く在籍してくれることのありがたさを、こういう時だけ忘れがちなのはヲタクの悪い癖だ。

あれだけモーニング娘。になれたことを喜んだ子なのだから、そこから卒業することにどれだけ悩んだか僕らには計り知れない。

悩んで悩んで決めたことに対し、ヲタクが関係ないメンバーやモーニング娘。自体を否定するような発言をしてしまうのは彼女にとってどれだけ辛いことか。すこしだけ寄り添ってあげて欲しいと思うのだ。

モーニング娘。に構造改革が必要なことは否定しない。

それはまた別の話として喧々諤々と意見を事務所にぶつけるのは良いと思う。でも、そこでも個人を攻撃してはいけない。あくまでプロデュースしている側の問題として改善点を伝えるべきだ。

事務所に厳しくアイドルに優しく。できれば事務所にも敬意は忘れずに。

そういうヲタクに僕はありたい。