見出し画像

BEYOOOOONDS『英雄~笑って!ショパン先輩~』からQUEEN果ては筋肉少女帯へと至る回想または未来

「元気がない時はBEYOOOOONDSに限る」とは誰かが言ってたような言ってないような言葉だが、この度BEYOOOOONDSが発表した新曲が素晴らしく、すこし気持ちが沈んでいた僕にはとても効能があった。

ありきたりな感想になってしまうが、なんて言うんでしょうかね、この多幸感は。僕はあまり「多幸感」というのを簡単に使いたくないというひねくれた人間なんだが、それでもこの曲には「多幸感」が一番しっくりくる気がするのだ。

そもそもで曲が良い。「誰だよ作曲者?」と見ればFREDERIC FRANCOIS CHOPINと書いてある。

「ちょぴん?」

最近スウェーデン人作曲家のJosef MelinがJuice=Juiceに『Va-Va-Voom』『Future Smile』、つばきファクトリーにも最新曲『涙のヒロイン降板劇』を提供しているから、その流れで新しい人が書いたのかな? とも思ったが、そういえば聴いたことある曲調だ。

クラシックでこんな曲あった。

というか、あれ? 前に小林萌花さんがバースデーイベントかなんかで弾いてたショパンの『英雄ポロネーズ』じゃん。あれあれ? サビも聴いたことあるメロディだぞ。これは映画『櫻の園』のラストシーンで印象的に使われたショパンの『ノクターン』っぽくないか? てか、僕は映画『櫻の園』が好きすぎて『ノクターン』聴くと反射的に「これは百合!」と思ってしまうので、変なノイズが入っちゃうぞ。

むむむ、とこの間、約1秒くらいでFREDERIC FRANCOIS CHOPINが普通にショパンだと理解した。

BEYOOOOONDSで星部ショウさんの関わっている曲なので、また勝手に盛大なギリギリオマージュ楽曲かと思ってしまって一瞬混乱した。というか、たしかにショパンの楽曲をそのまま下敷きにしているとはいえ作曲者の欄に普通に「ショパン」の名前を記載するか? イカれたことするわ、ビヨ制作陣。

YouTubeのコメント欄やTwitterでは「Queenの『ボヘミアン・ラプソディ』っぽい」という意見もある。そこも分かる。特に後半のギターが物凄く『ボヘミアン・ラプソディ』っぽい。

そうそう、Queenといえば昔『THE ビッグオー』というテレビアニメがあって、そのOPが“まんま”Queenの『フラッシュのテーマ』でブライアン・メイに怒られたって逸話があったりする。そんなギリギリアウトな作曲をしたのは永井ルイさん。ハロプロとも縁のある人だ。

永井ルイさんといえばタンポポの『乙女 パスタに感動』なんかをハロプロに提供している初期ハロに結構欠かせない作曲家だ。そして『乙女 パスタに感動』のギターもどことなくブライアン・メイっぽい。

なんだかグルグルっと回ってハロプロに回帰してくるが、やはり今の制作陣が根っこの部分で影響受けているモノが似てるんだろうな。アラフォー、アラフィフ世代のクリエイターはみんな同じモノ通ってるもんな。

そんで、僕もご多分に漏れず同世代なので更に脱線していくと今回の『英雄~笑って!ショパン先輩~』の曲構成が筋肉少女帯の『サンフランシスコ』あたりと近しい関係性に思えてしまって、そこでも勝手にエモさを感じてしまう。

まあ、知らない人はまず貼った動画を見てほしい。

筋肉少女帯には三柴理さんというピアニストがメンバーにいる。通称エディと呼ばれる彼はクラシックにも造詣が深く、彼が参加している曲には必ずピアノソロが含まれていたりする。

「ほのピアノ」ならぬ「エディピアノ」だ。

エディさんのピアノソロからの橘高さんの荒ぶるギターソロの流れのエモさとBEYOOOOONDSの楽曲にある小林萌花さんのピアノソロからギターが加わってくる流れのエモさは、とても近しいマインドを感じるのだ。

そこに大槻ケンヂさんによる壮大な語りのような歌が加わることで、まるでオペラのような高揚感が生まれるのが筋肉少女帯であり、BEYOOOOONDSもまたメンバーたちの個性的な歌声のハーモニーがオペラのような、ミュージカルのような不思議なモノになっていく。

大槻ケンヂさんといえばハロプロにも縁がある。

今のハロプロ演劇女子部が誕生する切っ掛けとなったのが、大槻ケンヂ作『ステーシーズ』をミュージカル化した『ステーシーズ 少女再殺歌劇』だ。

これで演出家の末満健一さんとハロプロが出会い、「演劇女子部」というプロジェクトがはじまり、後の伝説『LILIUM』へと繋がっていく。

そしてその演劇女子部で2019年にBEYOOOOONDSが再演した『リボーン~13人の魂は神様の夢を見る~』で小林萌花さんはすでにショパンを演じているのだ。なんという因果応報。

過去が未来に干渉し、未来が過去へと回帰していく。

今回の楽曲について小林萌花さんもブログで

20歳の時に、
小学4年生のころの自分から
届いた手紙。

前回ブログに載せた時は、
英雄ポロネーズまだ弾けませーんって
言ってたのに
なんか
弾けました、どころじゃないよね…
MVになっちゃったよ。笑

と、しみじみ語っている。

そして2022年の春、BEYOOOOONDSは武道館に立つ。

ハロプロの歴史で「結成から誰ひとり欠けることなく武道館公演が決まったのはBEYOOOOONDSが初」と言われてる。2018年の結成から4年というのも早い。しかし僕はそこにも事務所の優しさを感じる。

コロナ禍でビヨは2020年のホールコンサートが中止となってしまった。2020年は前年からの勢いに乗って一気に飛躍する年となるはずだった。そこから2021年も単独でコンサートを開催できず、ジリジリと時間だけが過ぎていった。

この先も情勢は不透明だ。

だったらもう慣例や慣習とか関係なく、やれる時にやってしまおうと事務所も思ったんじゃないだろうか。世の中の学生たちも10代の多感な時期を目いっぱい楽しめずにいる。修学旅行、体育祭、文化祭などなど多くの学生イベントは軒並み中止、規模の縮小を余儀なくされている。

アイドルである時間にもそれぞれ限りがある。だからこそ、今この12人が集っている奇跡をしっかりと歴史に刻みたい。その一瞬のきらめきを大切にしたいというアップフロントの想いがビヨの武道館公演を決めたんじゃないかと僕はロマンチストだから思ってしまうのだ。

ねぇ、先輩!

以上、超強引な『英雄~笑って!ショパン先輩~』感想でした。


全て無料で読めますが、「面白かった!」「すき!」なんて思ってくれたら気持ちだけでもサポート貰えると喜びます。