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【実話怪談】紙一重

こんなことがたまにある。

小学生の頃、5年生くらいだったと思う。寒い冬の朝6時台に部活の朝練に参加するため家を出ていつものルートで学校に向かっていた。その日は霧が濃く立ち込めていて公園の前を通る時も園内が全く見えないくらいだった。

朝練が終わり教室にいくと登校してきたばかりの連中が騒いでいた。何かと思い聞いてみると公園で首吊りがあったらしい。直接死体を見たわけではないが、鉄棒にロープをかけて自殺してたようだと野次馬している大人たちから聞いたと言う。

朝、僕が通った公園だった。たまたま霧で見えなかっただけで僕が通った時間はブラブラと死体が揺れていたことになる。

中学生の頃、登校中にマンションの前で救急車と数台の消防車が停まっていた。そしてマンションのエントランス部分が大きくブルーシートで覆われていた。多くの人が右往左往しているのを横目に僕は遅刻しそうだったので、チラッとマンションの上を見て走って通り過ぎた。

後で聞いたら女性が飛び降りたらしい。非常階段の柵を飛び越えて、途中、出窓のような部分にぶつかってエントランスへと落下したようだった。かなり悲惨な状態にその人もマンションもなっていたと聞いてゾッとした。

そこは小さい頃に友達が住んでいてよく遊びに行っていたマンションでもあった。よく非常階段の踊り場から下を覗いては金玉がヒュッてなる感覚が面白くて友達と笑い合っていた思い出がある。なんだか不思議な、吸い込まれるような感覚がスリリングだったのだが、もしかしたら何かチカラが働く場所だったのかもしれない。

思い返すとそんなことに昔から遭遇しやすい気がする。

10年くらい前になるが、けっこうエグい経験もした。会社で仕事中にちょっと気分転換をしたくて外に出た。すこし会社の周りを散歩しようと思ってグルっと大回りに15分ほど歩いて戻ってくると会社のそばのビルの路地に警察が数人いて、ブルーシートを広げようとしていた。

地面がピンク色に染まっていた。

「ああ、脳漿か」と、なんだかすごく冷静に分析しているホラー映画好きな自分がいた。たぶん真っ逆さまに頭から落ちたんだろう。血飛沫よりもピンク色のモノが印象的で、ゲーム『ダンガンロンパ』シリーズの血の表現みたいな非現実的な光景だった。

あと5分早く戻っていたら、そして、あの場所を通り過ぎるルートを使っていたら、僕は瞬間を目撃していたかもしれない。最悪、巻き込まれていた可能性すらあった。

東京は電車に飛び込む人も多い。

通勤で使う駅のホームで、その朝もボーっと電車を待っていた。時間的にラッシュの谷間で人もまばらだった。すると向かいのホームに通過電車が入ってくるのと同時に物凄い音量の警笛が鳴った。なにかと思って顔を上げると同時にこちら側のホームにも通過電車が入って来た。

そして電車が通り過ぎると反対側のホームには通過したはずの電車が中途半端な位置で停止していた。そして悲鳴があがっている。

目の前で人が飛び込んだらしい。こちら側の通過電車のおかげで瞬間を見ずに済んだ。ああいう時、たまにSNSで写真撮りにいく人間いるけど、そんなことする気が知れない。まったく気分の良いモノじゃないし、悪趣味にもほどがあると思う。

しかし何度かそんな人身事故に遭遇している。

乗っていた電車が急ブレーキをかけて緊急停車して、足元がゴットンとおかしな浮き方をして停まったこともあった。あの何とも言えない感触は忘れられない。

今は東京も多くの路線でホームドアが設置されてきたから良いのだが、綺麗に真っ直ぐな線路の駅で電車を待っているとフワッと線路の方に引き寄せられそうになるから、なるべく前にいかないように気をつけて電車を待つ習慣もついた。

こういう時、見える人には何が見えているんだろう。

前に漫画『見える子ちゃん』について書いたことがあった。僕は見えもしないし感じることもないのだけど、本当に見える人ってどんな感覚なんだろう。

この世には人間と同じくらい死んだ人の思念が至る所に存在しているんじゃないだろうか。そんな風に思うことがたまにある。

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