【実話怪談】雨の日の火の玉
子供の頃のことだ。家から少し離れた川の堤防沿いに公園があって、そこは幼い僕らの遊び場のひとつだった。普通の公園だったのだが、ある日の夜、じいちゃんが僕に「あそこは昔、火葬場だったんだ」と教えてくれた。
火葬場と言ってもちゃんとした建物があったわけじゃなく、ほぼ野焼きのように火葬しているような場所だったらしい。今の感覚からしたら信じられないが、戦時中の話となると納得できると思う。
そういえば、鬱蒼と木々に覆われた奥まった場所に大きな石碑が立っていた。その一角だけは昼間でも薄暗くて空気が澱んでいて、子供たちもあまり近づかなかったのは本能的に「死」の臭いを遠ざけていたのかもしれない。
しかも、ほとんど野焼きのように棺桶を焼いていたからか「よぉ死体が棺桶をブチ破って起き上がってくるんだ。あん時は驚くわ」と、じいちゃんが笑って話すのがめちゃくちゃ怖かった。
そして火葬をした後に雨が降ると、決まって火の玉が漂うらしい。
「あれが不思議だった。毎回じゃあないが、雨がシトシト降る夜にフワ~と火の玉が浮かんどるのを何度も見たことがある」
と窓を開けて夜の道路を僕に見せるのだ。
悪趣味この上ない。「窓閉めて!」僕が怒ると、じいちゃんは笑いながら窓を閉めて僕に謝った。
じいちゃんは地域の消防団にも所属していたから、事故現場や火事場にもよく行っていたせいで「死」というものが普通よりも「普通」なこととして身近にあって、だから笑い話のようにもなってしまうようだった。
「今は夜でも明るいからか、火の玉を見ることはなくなったわ。昔は真っ暗だったから、よう見えた」
そんな風に言うのが、なんとも真実味があって僕は怖くなってしまい、その話を聞いてからは公園に近づかないようになった。
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