灰色の夢
学校帰りの私は、赤いランドセルを背負っている。家は5階建てのマンションの306号室。雨が降りそうな夕方。
ーー今日のおやつはなんだろう。
ロビーを抜けて左に折れるとエレベーターが現れる。灰色がかった緑色の分厚いドアがガッチリと閉ざされている。小学生でも手の届きやすい位置にある「↑」のボタンを押す。オレンジ色に「↑」が光る。この動作は生まれてから何回も行なっているもので、無意識的である。
エレベーターの扉がゆっくりと開く。
誰も乗って居ないエレベーターに乗り込む。定員10人のグレーの箱。上から数えて2つ目の「3」のボタンを押す。速度はゆっくりだが、「3」まで上がるのはたった15秒数えれば良い。
ーー早くおやつ食べたいなぁ。
1、2、3、……… 12、13、、
ここで違和感を感じた。
ーー身体に力がかかっている…??
ふと目線をあげると、ガラス付きの扉の向こう側を、ありえない速さで景色が過ぎていく。左側にあるボタンの羅列は、「5」までのはずなのに「14」まで増えている。「14」がオレンジ色に点滅している。
ーーこのままだと、マンションの5階を突き抜けちゃう……。
全身を貫く、恐怖。
ものすごい轟音が響き渡り、エレベーターがマンションの天井を突き破ったのを感じた。
次の瞬間、音が消えた。色も消えた。
Gが全力で体を潰しにかかる。自由落下。
あるはずのない「B2」階まで堕ちた。
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