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ダークマイトにチャンスをください 「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユア ネクスト」


#ネタバレ

子どもはきっと満足できると思う、今回これに尽きるかな…少なくとも私は楽しめない部分が多かった
でもダークマイトは大好き、という話を書き留めておけたらと思っています



私がどのような距離感でヒロアカに触れてきたのか、についてはこちらに詳しく書いているのですが



いや〜しかし劇場版ヒロアカというくくりで並べてみると今回は、せっかく順当に面白くなってきてた流れが、突如現れた巨大要塞によって完全に押し潰されたなという感じ

夏休み映画として小中学生をメインターゲットとして定め、そういった年齢層の観客にしっかり楽しんでもらえるバランスを想定して作ったのだと思う、そう落とし込まないと悲しくなる

そのことに良いも悪いもないとは思うけど、映画として満足感のある仕上がりには到底なっていないように感じた


きっとこの先も多くの映像作品が作られていくであろうヒロアカの歴史において、すっかり埋もれていくんだろうなという寂しい予感が既にある





時系列で言うとアニメ7期前半の真ん中あたり、死柄木戦を直前に控えた緊迫感ある時期を物語の舞台としていて
そのうえで劇場版オリジナルキャラを軸として進んでいく話ではあるんだけど、その推進力のなさといったらもう、本編に影響出たらまずいからってこの薄さはあんまりだ

話の中心になるジュリオとアンナ、いかにも特定のファン層に向けて「どうせこういうのが好きなんでしょ?」という発想ありきで造形されたキャラクターなんだろうなという、奥行きに欠ける割にそういう臭みだけはある人物像でかなり苦手な部類でした
このあたりは個人的な趣味嗜好の問題でもあるんだろうけどね、さすがにテンプレ感ありすぎ





その点ダークマイトは!!!!薄味ながら独特の魅力を放つ、しっかり爪痕を残すメインヴィランになれてたと私は思う、かわいかった

ただし大前提として、本来想定されてたであろう「偽オールマイト」としての魅力は皆無、ここに関してはもう徹頭徹尾スッカスカの雑ヴィラン

市民がダークマイトに魅力を感じているわけでもなければ具体的な「象徴」としての活躍も全くない、なかなかに期待外れな立ち位置だった

これが例えば「市民は熱狂しているけど実はヤバい偽物」とかいうことであれば、終盤で「なぜオールマイトは平和の象徴たり得たのか」という答えに深みが増すんだろうけど、今回ずっと悪者だったもんな…それが良いと言われればそれまでだけど





ただしダークマイト、それだけでは終わらないのが困ったポイントで

オールマイトの大ファンでありながらその本質を大きく見落としているという残念感、ここに更正の余地なく偏った強い思想が合わさることで「間抜けだけど真面目」という味わいが生じていて

ファミリーを束ねていながらカリスマ性がまるで感じられないというアンバランスさも、作り手が意図していない愛嬌のように見えた



ただこれはヒロアカのメインヴィランとしてはやっぱり物足りないな〜!彼が悪事を働くに至った動機があまりにも弱いし、最後の決着も単なる腕力勝負なので、ひるがえってヒーローの正当性も描けていないし

要塞の内部がやたらと細かく分かれているのも尺を引き延ばすためだけの設定という感じがする、それぞれのギミックが大して差別化されていないのも退屈さの要因だと思わずにはいられない


しかしそのおかげというか!!!どのエリアにもリモートでこまめに顔を出してきっちり対応する、あっちで部下を厳しく罰したかと思えば直後にこっちでヒーローを煽る、こういう応対の丁寧さ・無駄のなさがダークマイトの真面目さを際立たせているのがね〜クセになるんよね

よく働きよく喋る、部下の誰よりも体を張って仕事するボスという点が憎めなさに繋がってるのかもな、こういうところがファミリー統率のポイントなのかも!と結果的に大忖度できてしまう構図がなかなか興味深かった


そもそも登場シーンからね、オールマイトの写真いっぱい貼ってる暗い部屋でテレビ観てるイタリアンマフィア、これをウケ狙いでなくやってる様子なのでたまらないものがあるなと思いました



「オールマイトの影響力の大きさ」についてステインとはまた別の角度で語る話だと思えば、試み自体は番外編として悪くないのかも

なぜダークマイトが象徴たり得ないのか、について爆豪と轟が語るシーンは本編あってこその場面なので素直にグッと来たしね





そのうえで、やっぱりうまくいってないと思う部分もそれはそれは多くあって

中でも特に嫌だったのが中盤、デクがジュリオから責め立てられたことへの返答として「辛そうな顔をしてたから」「本当は撃ちたくないんじゃないかと思って」と言うわけですよ、これがねーーー本当にいただけない

デクがこれまで爆豪や死柄木に同様の言葉をかけたのは、奥底にあるその感情に本人も気づけていない、助けを求めることすら自分ではできなくなっている相手の本質に目を向けて手を差し伸べる、そういうヒーローとしてのデクの天性を示すものだと思ってて

要は辛そうな顔してる人に向かって「辛そうな顔をしてたから」とバカみたいに語りかける人物ではないんじゃないかなと


今回ジュリオは普通にしんどそうだったし撃ちたくなさそうだった、まぁ状況としてそれが見た目にも分かることだとしても!

作り手の「こういうこと言えばデクっぽいでしょ」という姿勢があるように思えて嫌だった、という場面でした、記号としての名セリフ引用って感じで



ただまぁそういう雑な感じも楽しみ方次第ではあるというか
A組みんなでアンナ救出を決めるシーンで最後に尾白が「俺もそう思う」とだけ言った、こういうまるで練られてない無味乾燥な役割ゼリフは本編だとまずあり得ないとかね、それも味わいではあるけど





どうにか爆豪と轟の思いも乗せつつ決着をつけた後もね〜、蛇足としか言いようがないラストバトルに至ってはもうあくびすら出てこない
抽象画のような超速アクションがそのまま物語のピントの散らかり具合を示すようでもあった

ジュリオとアンナのストーリーまるごと全然楽しめてない立場だったので、いかにもテンプレ的な結末も当然乗れず、知らん人の知らんロマンスほどつまらんものはないなと思いながら、閉じていく物語を寂しく眺めていた





それから結末についてはもう一点

よく知らんラブロマンスがハッピーエンドを迎えるそばで、暴れ散らした末にひっそり負けていった、みじめかわいいダークマイトがいるわけだけど

「次は君だ」を曲解して受け取ったダークマイトにも、自分ごととして受け取って頑張ったなりの救済はあってよかったんじゃないか?とは割と真面目に思ってる


「今度は自分が力で支配するぞ!」という結論を出しちゃってる時点で断罪されてしかるべきバカではあるんだけど、でもな〜「ヒーローから何かを受け取って生き方を選ぶこと」それ自体の否定にもなってしまってない???


オールマイトの「次は君だ」に鼓舞されてどうにか日々を生き延びてる作中の一般市民は大勢いるだろうし、決死の覚悟と勝利からポジティブなメッセージを受け取った読者や観客も大勢いるわけで

なんというか、「受け取り方を間違えた人はやり直すチャンスなしです」と言わんばかりにあっさりダークマイトを退場させたことで、「You're Next」の「You」には特別な力を持つA組の面々くらいしか該当しませんよ、という宣言になってしまってるように思えてならない


ダークマイトが自分の過ちを自覚して改心するプロセス、それを映画として描くことを放棄するための言い訳が「だってマフィアのボスだから」ということなら、やっぱりヒロアカのシリーズに連なる作品として不誠実だと思う

かといって、心を入れ換えるの無理そうだな〜と思えるほどの極悪人として描いてるかと言えば別にそんなこともない、なんか雑に回想シーンで苦悩した過去とか入れるし

劇場版2作目のヴィランもよく分からんかったけどね、積み重ねての4作目だから余計に厚みのなさが残念だった






それはそうと、劇場で派手に活躍するA組の面々を観られたというその一点においては大満足、しかし映画としては残念ながら、そこらへんにいくらでも転がってる薄味で退屈なアニメ映画になってしまってると思う


でもまぁオールマイトというあまりにも巨大な存在を失った後の、防ぎようがない世界規模でのゴタゴタを描いていると大枠で考えれば!

これもまたサイドストーリーとしてアリという気もしてくる、わざわざファミリーみんなで来日するイタリアンマフィアという訳わかんなさも味わいではあったし



なのでですね分かってます、細かいことを気にせず楽しむのが正しい態度だと思うし、公開に向けたコラボ祭りや入場特典なんかも充実してて嬉しかったのも事実
ただやっぱり仮にも映画の形式をとってるわけだからそこは、言わせてよという気分にはなりました


何をするにもとっ散らかっていて、既視感以外に何も中身がないやりとりの繰り返し、番外編として楽しむのもなかなか難しく

いやはや劇場版アニメをリアルタイムで観ることの喜びと代償を全身で浴びました、こういう感じなのか…



とはいえ明日いよいよ原作が完結、最終回はそれこそ映画にしてくれたりしないかな〜!!今回みたいにうまくいってない部分も含めて楽しめる程度にはヒロアカが好きです

引き続きアニメで追いかけながら、いずれは原作コミックも全部しっかり読み倒したい





#映画 #ヒロアカ #僕のヒーローアカデミア #ユアネクスト #感想 #映画感想文

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