推しがセンターになってヲタ卒する女の話①

 きっかけはオーディションだった。
 高校生の時忙しかったはずなのに暇で、なんとなく受けた歌手のオーディション。
 1次審査があっさり通って配信審査をアプリでしていた時に、同じアプリでオーディションをしてたのがそのグループだった。

 当時は自分のオーディションにいっぱいいっぱいで(自称ファンに粘着されたり嫌がらせされたりした)病んで結局辞退したけど、その後たまたま動画サイトでおすすめにあがって「ああ、あの時の」と何気ない気持ちでタップした。

 一言で言えば、革命だった。
 同い年くらいの女の子達が笑顔でキラキラ輝いている様子は、必死にもがいても変な人からしか好かれない自分とやけに対照的で、勝手に劣等感を覚えた。それでも目を逸らせないほどに衝撃的で、何よりもこういうアイドルが好きだなと思った。

 最初はセンターの子が可愛いなと思った。
けど、回数を重ねてMVを観るうちに、ボブの女の子も友達に似てて可愛い、と思うようになった。友達は中学校の同級生で、特別仲が良かったわけではなかったけど、さっぱりした美人であどけない可愛さも持ち合わせてた女の子だった。いつも話しかけたいと思ってたけど、「何?」と怪訝そうにされてしまうのではないかと弱気になって自分からは話しかけられなかった子でもあった。似たアイドルはその子よりも髪が短くて前髪が重くて、ちょっとまだ芋臭かった。そんな彼女に親近感が湧いた。

 そうこうしてる間に2ndシングルが発売された。この頃には私の推しは確立していて、ボブの女の子とセンターの女の子、単純に自分と同じ年のメンバー2人が好きだった。(ここからボブの推しはボブ子、センターの推しはあい子とする)地方在住の私の周りにはそのアイドルを好きな人はまだ誰もいなくて、それが返って優越感になっていた。

 表題で初めてボブ子のソロパートがあった。1stでは数えるほどしか映らなかったのが一気に増えて、思っていたよりも低い声色に驚いた記憶がある。

 この頃から初めて青い鳥を始めた。別の地下アイドルが好きな高校の友達に「リプしたら認知もらえるよ」と言われたのでちょくちょくリプするようになった。青い鳥を始めて、ボブ子がアニメを好きなこともダンスがうまいことも知ることができた。そうしていくうちに、「会ってみたいな」と思うことが増えた。でも、女子高生とはいえ田舎のモサい女が行ったところで浮いてしまうのではないかと思い、CDを購入することしかできなかった。

 やっぱり行こうと思ったのは、3rdシングルの発売イベントが思ったより家の近所でやることを知った時だった。3rdシングルはドラマ仕立てであい子もボブ子も目立ってた。自分の見た目どうこうよりも「カッコよかった、素敵だった、好きだった」と本人に伝えたいと言う気持ちの方が強くなった。

 人生で初めてアイドルの現場に行くからどうすればいいか分からなくて、ネットで色々調べた。私服で行こうかなと思ったけどお洒落な推しにダサいと思われるのは嫌だなと思った。お母さんに新しい服を買ってもらおうかと思っていた矢先、そういえば推しがこの前来ていた制服が自分の学校の制服とそっくりだったことを思い出した。誘う友達がいなかったから1人でバスと電車と地下鉄を乗り継いで会場に向かった。

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