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大学院はテクニシャン養成学校?テク型研究者について語る!!

こんにちは、海外で現役ポスドク(生命科学系)をしておりますポス山毒太郎と申します。このnoteはあくまで毒太郎の体験を元に、偏見に基づいた感想を語っていく場です。ですのでほとんど統計値などは出てきませんので悪しからず。

今回は、テク型研究者に関して解説しつつ、教授との距離感を語っていきたいと思います。

ではまずテク型研究者とは何かについて語ります。
まずは前回の9 types of postdoctoral fellowの記事をご覧ください。この図の真ん中におわしますThe Robotというのが今回の標的です。ぜひ一度ご確認ください。

まずテク型研究者の“テク”とは何を指すと思いますか?テクノロジーではありません。研究者の皆さんはわかると思いますが、テクニシャンです。

日本語でもテクニシャンと呼称しますが、正式には技官、もしくは技術補佐員と言います。彼ら彼女らは基本的に大学教員の下について、大学教員の代わりに実験をする、いわば実験手技に特化したプロフェッショナルです。大学院生やポスドクとは全く違った存在です。

研究室によってテクニシャンの仕事はさまざまで、誰でもできる雑用のような仕事をするテクニシャンから、ポスドクでも難しいマウスの手技をひたすらやるようなテクニシャンまで幅広いです。

注意点ですが、本記事はテクニシャンを馬鹿にする意図はありません。彼ら彼女らはラボに必須な存在ですし、尊敬しています。

この記事でいうテク型研究者とは、“テクニシャン型の研究者”の略称で、大学教員からの指示を受けてのみ実験をする研究者(大学院生から、ポスドク、大学教員まで)のことです。そして彼ら彼女らは自分で実験内容を考えることが出来ません。というかしようとしません。

「えっ、それって当たり前じゃないの?特に学生なら。」と思った方もいると思います。
あなたは要注意です、というか勿体無いです。

これは筆者の意見ですが、アカデミア研究者の皆さんはなぜわざわざ安月給で研究者をやっていると思いますか?

そうです、自分のやりたいことをやれるからです。それが出来ないなら企業に行ったほうがいいでしょう。

それではまず研究のサイクルに関して簡単に語ります。

研究とは、まず仮説を立てます。

そしてその仮説をどのようにしたら証明できるか、現実的な実験系に落とし込みます。

そしたら実験をします。

そして最後に得られたデータを解析し、立てた仮説が正しかったか考察します。

そしてその考察からさらに
1)仮説を立てて
2)実験に落とし込んで
3)実験して
4)解析、考察しての繰り返しとなります。

これが筆者の考える研究のサイクルです。研究が関係ない方でも、ビジネスでPDCAサイクル(Plan, Do, Check, Action)は聞いたことがあると思いますが、それと似てます。

博士課程はPDCAサイクルを実践的にひたすら回すトレーニングをしていると言えます。

一方で、テク型研究者はこのうち3段階目の“実験”のみを行います。

そこが、筆者がテク型研究者を好かない理由です。

この1)2)4)の苦しみを知らない、いや知ろうとしていないのです。

ちなみに筆者が度々いじっている医師研究者は、「1)仮説を立てる」に関しては臨床経験もあってピカイチで筆者のようなnonMD研究者ではとても勝てません。

ですので、医師研究者は研究室のトップに向いているし、きちんと尊敬しています。

ただ彼らは2),3)はそこまで得意でないような気もします。前回のNIHの絵でもいじられていましたが、単純に科学のトレーニング不足です。

平気でn=1の実験結果をそのまま論文に出すんだよなぁ。基礎実験はケースリポートとは違うんだぞ!!

なので医師研究者がトップのいいラボには、2)を考え、3)を統括する優秀なnonMD No2がいることが多いと感じます。

かなり話がずれました、戻ります。

じゃあ医者が研究のトレーンングすれば最強じゃんと思ったそこのあなた。

おっしゃる通りです。

これはnonMD研究者としての筆者のポジショントークもありますが、全てを網羅できる恐るべき医師研究者も僅かにいます。

しかし、ほとんどのMD研究者はnonMD研究者に比べると、仮説の実験への落とし込みは甘いし、結局は中途半端な医師研究者が多いのが実態です。まあ皆1)-4)において得意不得意があるということです。

こちらは筆者が留学中への医師研究者への怒りをぶつけた記事となります。ですが、内容は建設的ですので興味のかる方はぜひどうぞ!


再度話は戻りますが、あなたが教育的立場である大学教員ならわかるでしょう。テク型研究者がいかに扱いやすいかを。

そうです。自分が頭を使う1)2)4)さえすれば、3)はテク型研究者がやってくれるのです。

我を出して変に1)2)4)に口出ししてきません。しかもそれがポスドクともなれば、それなりに信用できるデータを出してきます。

いわば高級テクニシャンなのです。

逆に大学院生が1)-4)全てをやろうとしたら、上司の先生からうざがられる可能性すらあります。「1)2)4)は教員がやるから、君らは手を動かしてくれ」となることでしょう。

そして教員が1)2)4)、学生が3)のみをこなす方がデータが出やすいのが現実です。そしてデータは出るし、教員の言うことも良く聞くしで、テク型研究者は教員の評価が割と高いです。

確かに「素直さ」は研究者、特に若手にとっては重要なファクターです。この点において、ちょっと筆者は後悔しています。

ただし筆者は、大学院生ほど1)-4)すべてのプロセスをトレーニングするべきと考えます。

繰り返しですが、大学教員によっては「学生風情は手を動かしていたらいい、研究費を取ってきてるのはこっちだぞ!」と思う方もいると思います。

ですが筆者が考えるに院生と言えど、研究者になったら全員平等です。科学の土俵の上では上下はありません。

また当たり前ですが、プロジェクトを進めていけば、そのプロジェクトそのものに世界で一番詳しいのは『あなた』になるはずです。ボスより詳しくて当然です。適度に外の意見を取り入れると良いこともありますが、そのプロジェクトに一番解像度が高い自分を基本的には信じましょう。

ですので、教員にうざがれたとしても1)-4)のすべてを自分で出来るだけやるように、少なくとも考えるよう心がけてください。

何なら他人(教員)のお金で研究できるなんて学生の時のみです。しかもこちらは学費を払っています。

1)-4)を自分で沢山やって、他人の金で沢山失敗してください。そんな経験ができるのは学生さんは今のうちだけです。

ですので、大学院生として入るなら、遊びの実験を多少は許容してくれる器の大きいラボを選びたいところです。

そして、もし教授や上司とあなたで次にどんな実験をするか違う意見となったとしましょう。そんな時あなたはどうしますか?

その時は両方やることをお勧めします。

筆者が学生の頃は、そのような時、教授の案は無視して自分が思った実験のみをやって、その結果教授と少し関係が良くなかった時期があります。正直言って反省しています。ちなみに今では当時の教授との関係性は良好(のハズ)です。

そういった意味で筆者はラッキーでしたし、学生時代所属していたラボのボスには感謝しきれないほど感謝しています。

なんかテク型研究者をディスるはずが、熱い感じになってしまいました。まあたまにはね。

なのでテク型研究者よ!、特に大学院生は学費も払っているのに「言われたことやってるだけでは勿体無いぞ」と言っておきたいです。大学院はテク養成学校じゃないぞ!!

ただしあまりにも我が強いとそれそれはで苦労すると思うのでそれ相応の御覚悟を。また大学院生が筆者みたいなやつばっかりだとラボが崩壊するかもしれません。いろんなタイプの学生、ポスドクがいることは否定するつもりはありませんし、ラボの規模や、ボスのタイプによるところも多いです。

筆者はそういう意味でも運が良かったと思っています。

ただし、筆者の場合は最初にもらったプロジェクトがポシャって、その後放置されたので、仕方がなく1)-4)を全て自分でやりざるを得なかったので、運が良かったのか悪かったのかはわかりません笑。博士号取得には苦労しました。

教授のタイプ別解説はこちら!

筆者が考える大学院生にとって”いいラボ”について語った記事はこちら!!

筆者が苦労した博士課程とそれに纏わる「深い闇」を解説した記事はこちら!!!


では、最後にもし筆者が万が一PIになれたらどんな研究者を雇うと思いますか?



そりゃテク型研究者ですよ、当たり前じゃないですか。頭脳は2個いらないねん。

最後に盛大なダブスタをかますポス山毒太郎でした。


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