見出し画像

SDGsはポテンシャルのあるチャンスだ――SDGs×RUBBER#1イベントレポート

SDGs×RUBBER」は、ゴム業界の情報を発信するポスティコーポレーションが主催の、全5回開催のリレートークセッションイベントです。日頃お世話になっているゴム業界への恩返しと、SDGsの周知、事例紹介を目的としています。

今回は2020年10月30日にオンラインで行った第1回のトークセッションと質疑応答について、そのレポートを掲載させていただきます。

第1回のテーマは「SDGsの本質を捉え、ゴム業界の将来を考える」。

GM、SDGs×RUBBER#1の様子(トリミング済)

【画像】トークセッションの様子。左上から馬場(弊社)、佐藤氏、古澤氏、左下から村上氏、稲継氏

当イベントの監修を担当している環境省SDGsを活用した社会課題・環境課題同時解決支援事業委員長を務められた、佐藤真久東京都市大学大学院 環境情報学研究科教授をはじめ、ブリヂストンの稲継明宏サステナビリティ推進部長(イベント開催当時)、ランクセスの村上幸コーポレートコミュニケーションズ 日本統括マネージャー、WWFジャパンの古澤千明自然保護室 森林グループ プロジェクトマネージャーの4名の方々にご登壇いただきました。司会は、弊社代表取締役社長の馬場孝仁が担当しました。

SDGs×RUBBER#1、グラフィックレコーディング

当日のトークセッションをまとめたグラフィックレコーディング(グラフィッカー/しおりん

コロナ禍でも止めないSDGs

馬場:
最初のトークセッションのテーマは、「コロナ禍としてSDGsをどう見ているのか、またなにか取り組みを行ったか」です。

今年は、本当にこの新型コロナウイルスに翻弄された1年でした。このような時代に、SDGsをどう取り込んでいくのか。今回ご登壇いただいた皆さまに、それぞれのお考えについて聞いてみたいと思います。

まずはブリヂストンの稲継さんからお願いします。

【ブリヂストンの回答】
■"New normal", "Green recovery", “Build back better", 変革の機会として捉えている
■今まで以上にSDGsの達成に向けて継続的に取り組むことが重要に
■事業を通じて、人々の安全・安心とレジリエントな社会基盤を足元から支えていく

グラレコ、コロナ禍_ブリヂストン

稲継:
先ほど、今年新たに掲げたビジョン〔※〕と中長期事業戦略構想〔※〕をご紹介させていただきましたが、その策定の背景には、新型コロナウイルス感染拡大を含めた、大きな外部環境の変化があります。

※【参考】ブリヂストンが中長期事業戦略構想を発表https://www.bridgestone.co.jp/corporate/news/2020070801.html

その中でコロナ後の"New normal"、あるいはヨーロッパを中心に"Green recovery"〔※〕、“Build back better"〔※〕、といった動きが色々とあるなかで、やはり元に戻すのではなく、これを「変革の機会」として、どう捉えていくのか。ここに事業としての成長の機会があるのではないかと捉えています。

※Green recovery(グリーンリカバリー)=新型コロナウイルス感染症の流行で冷え切った世界経済の再起を図るのに際し、脱炭素社会など環境問題への取り組みも合わせて行おうとするアフターコロナの政策の一つ。
※Build back better=よりよい復興 参考:http://www.bousai.go.jp/kyoiku/fukko/index.html

このSDGsというのは、そういった機会に対しての重要な羅針盤です。今まで以上に、SDGsの達成に向けた取り組みの重要性が増していきます。その点は、サステナビリティ〔※〕に取り組んでいる私以上に、経営トップ自らがこの認識を強めているといったところを、強く感じています。

※サステナビリティ(持続可能性)=何かの物事について、現在から将来にわたってそれを持続することが可能である、という概念。

当社事業も新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けました。ですが、人々のモノの移動や、生活自体の移動を支えているといったところで、やはりここは事業の基盤として、私たちは足元から社会のシステムを支えているという認識を新たにしました。こうした変化をチャンスと捉え、事業を持続的に成長させていく機会にしたいと考えています。

馬場:
ありがとうございます。
それではランクセスの村上さん、いかがでしょうか。

【ランクセスの回答】
■ 社会課題、環境課題はコロナ禍でもなくなることはなく、むしろ取り組みをさらに強化していかなければならない
■SDGsに取り組むことで、会社・社員にとって良い循環を生み出す

グラレコ、コロナ禍_ランクセス

村上:
私どもも、ブリヂストン様と同じような方向性をもっています。社会課題、それから環境課題というのは、このコロナ禍ではなくなることはありません。むしろ、さらにそういった社会課題などは顕在化していく傾向があると感じました。

私どものCSR活動、SDGsへの取り組みというのは、コロナ禍でも止めてはいけないと感じています。このSDGsの目標、クリアな目標があったからこそ、迷いなく、こういった取り組みを前進させていけます。また、それはドイツ本社でも、私ども日本法人でも同様です。

コロナ禍の最中、色々な障害はあるんですが、SDGsのようなクリアな課題があることで、この目標をどうやって達成していくかという次のステップに思考を向けることができると思っています。

例えば、私ども先ほど寄付の話〔※〕もさせていただきましたが、実は従業員に関しても、この寄付を通して色々な勉強の機会になっています。また、こういった行動が、実は自分たち自身にも、心理的に良い影響があるとも言われています。ですので、こういった良い循環というのは、私ども自身にも向けられるものだと思います。

※ランクセスは2020年2月に、中国の武漢市と周辺地域の病院に合計1トンの消毒剤Rely + On Virkonを、4月には世界13カ国の病院、当局、公共機関に、同社の消毒剤Rely + On Virkon(合計100万リットルの消毒液に相当)を寄付。また日本では4~5月、公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの実施する「新型コロナウイルス緊急支援プログラム」を支援し、従業員募金キャンペーン及び寄付のマッチングプログラムを実施。

馬場:
はい、ありがとうございました。

それでは、続いてWWFジャパンの古澤さんはいかがですか。

【WWFジャパンの回答】
■「変化に対応できないと生き残れない時代」
■ 新たな感染症による「当たり前」の崩壊、新しい価値観
■サステナビリティが事業や消費、生活に及ぼす変化
■SDGsに本質的に向き合っているか

古澤:
本当に難しい問題なんですが、まずこのテーマを聞いた時に、思いだした言葉が一つあります。それが一番目に書かせていただいた「変化に対応できないと生き残れない時代」です。この言葉は私が考えたものではなく、今年の初め、コロナよりも前に人から言われた言葉なんですね。その時私は「ふうん、そうかもね」ぐらいに思っていたんですが、その後この新型コロナウイルスの感染拡大がありました。これまでの“当たり前”というものの崩壊、そして新しい価値観の急激な浸透を目撃して、“変化に対応できないと生き残れない時代”というものを、「あ、こういうことなのか」と身をもってようやく理解できたような感じです。

先ほど私の話の中でコロナのような、動物由来感染症も、人と自然との付き合い方の一つの要因となっていると申し上げました。やはり今後の社会において、サステナビリティ、具体的に言えば、気候危機に対する対応であったり、森林破壊であったり、人権問題であったり、そういった事業やサプライチェーンに対する高い要求というのはますます出てくる、避けられないものだと思っています。そしてこれに迅速に対応していくことが必要なんじゃないか、そういう風に考えています。

その中で、やはりSDGsというのは、道標のような、非常に重要な考え方として、より根付いていくんじゃないかと考えています。

質問①天然ゴムのトレーサビリティについて

馬場:
ありがとうございました。皆さんそれぞれの考え方がよくわかりました。

今、古澤さんの言葉にもあったように「SDGsは道標である」。それによって、皆さん、歩みを止めてはいけないということなのかなと感じました。

ここでご質問、ご紹介したいと思います。

質問者①:
この業界(ゴム業界)でもSDGsの考え方が広まってきたと思います。タイヤの原料である天然ゴムですが、実際の天然ゴム農園までトレース(追跡)して、その農園が環境を守り、森を守り、また労働者の人権が守られているかどうか確認ができているのでしょうか。天然ゴム加工工場だけではなくゴムの林をもつゴム農園が大切だと思いますが。
またWWFジャパンの講演にもありましたが、ゴム農園の実態を調査することが大切だと思います。タイヤ企業として、ゴム農園の実態確認はどうされているのでしょうか。

馬場:
ということで、まずブリヂストンの稲継さんにお聞きしたいと思います。その後ですね、数多くの農園を見てこられています古澤さんに、天然ゴム農園の実態を教えていただきたいと思います。

グラレコ、天然ゴム農園_ブリヂストン

稲継:
はい、ご質問ありがとうございます。これは非常に重要な、そしてかなり難しい課題だと捉えています。

当社でも、自社で農園をいくつか保有しています。自社で持っている農園については、働いている方の労働環境や契約などをしっかり管理できます。また、第三者の方にも見ていただいて、状況を確認することもできます。

難しいのは、私たちの会社に納入いただく天然ゴムのバリューチェーン〔※〕全体がどうなっているのかを把握すること。私たちが全て直接見に行けるかというとそうではなく、非常に複雑なルート、非常に膨大なルートを、どこまで把握するのか、やはり難しいところです。

※バリューチェーン=製品の製造や販売、それを支える開発や労務管理など、すべての活動を価値の連鎖として捉える考え方。1985年にハーバード・ビジネススクール教授のマイケル・ポーターが著書『競争優位の戦略』にて提唱した。

SDGs×RUBBER#1、WWFジャパンスライド

【画像】WWFジャパン講演資料より

この課題は、1社だけでは解けない問題です。そういった背景もあり、GPSNR〔※〕といった、私たちタイヤ業界だけでなく、実際に天然ゴムを作られている方、さらに小規模農園の方にも入っていただいたうえで、どういう風にトレーサビリティ〔※〕を確保していくのが効果的なのか、実効的なのか、そういった議論をまさに始めたといった状況です。

GPSNR(Global Platform for Sustainable Natural Rubber)=ゴム業界の中でもタイヤメーカーを中心に、複数の企業、NGO、農園など様々なマルチステークホルダーが連携した持続可能な天然ゴムのためのグローバルプラットフォーム。
※トレーサビリティ(追跡可能性)=物品の流通経路を生産段階から最終消費段階あるいは廃棄段階まで追跡が可能な状態。

一説には、小規模農園は600万箇所あるとも言われている中で、本当にそれをどうやって見ていくのか。森林破壊という観点で言うと、衛星写真を使いながら見ることもできるのですが、労働環境などをどうやって確認していくのか、これは非常に重要かつ難しい課題なので、ここをマルチステークホルダーの方としっかり議論しながら、実効性のあるやり方でやっていくといったところかなと思います。即効性のある、すぐに解決できる問題ではない部分が多いので、一歩ずつ着実にやっていくことが重要だと捉えています。

馬場:
ありがとうございました。続いて、古澤さんいかがでしょうか。

古澤:
はい、ありがとうございます。今、稲継様に仰っていたのが全てだろうと思いますので、私からは他のコモディティ〔※〕のお話をさせていただきます。天然ゴムと同じような課題を、植物油の一種であるパームオイル〔※〕が抱えていました。

※コモディティ=「商品」「日用品」といった意味の言葉だが、投資用語では、商品取引所で取引されている商品、または商品先物取引のことを指す。
※パームオイル=アブラヤシの果実から得られる植物油。通常ギニアアブラヤシから得られる。食用油とするほか、マーガリン、ショートニング、石鹸の原料として利用される。

このパームオイルに関するトレーサビリティ、サステナビリティが話題になって、注目を集めたのが10年くらい前だと記憶しています。パームオイルも天然ゴムと同じように、小規模農家の人たちによって生産されているのが大部分ですが、当時は「トレーサビリティを取りたい?絶対無理だよ。絶対、絶対、絶対無理!」って言われていたんですね。

10年経って現状がどうかというと、まだ完全に業界全体が、トレサブルになれたわけではありません。ただ、多くの問題が少しずつ少しずつ改善してきました。これは決して一朝一夕でできる話ではないんですが、こういったもの(トレーサビリティ・サステナビリティ)は時代のニーズであり、避けては通れませんので、少しずつ進んでいくんじゃないかと考えております。

天然ゴムの持続性のある安定した調達をどう考えるか

馬場:
ありがとうございます。

これは私からの質問なんですが、天然ゴムの調達について、企業の担当者の方はもちろん関心を強く持っていらっしゃいますが、それ以外の方では「天然ゴムって単純に、お金を出せば買えるんじゃない?」、程度の認識といいますか、調達に関して安易に考えていると感じられる時もあります。

天然ゴムは一次産品で、極端な話、儲からなければ作らなくてもいい作物とも言えます。その辺が、工業用途に使われる原材料と考えると非常に心配です。小規模農家さんを数多く見てきている古澤さん、天然ゴムの持続性のある安定した調達について、どのようにお考えでしょうか。

グラレコ、安定した調達_WWF

古澤:
そうですね…また非常に難しい問題なんですが、馬場さんに仰っていただいた通り、小規模農家の方たちの中にもいろいろな方たちがいます。本当に天然ゴムを作ることに誇りを持っている、伝統的に家業としてやってきた農家さんもいれば、一方で割と近年になって、天然ゴムというものに着手された、天然ゴムにそれほどこだわっていない農家さんもいるように思います。

経済性を重要視する農家さんも多く、そういった方たちは、何かあった際、例えば儲からなくなったときに、木を切って売ってしまって、もっと家計の助けになる別の産品を植えていこうという事になるわけで、そうした例は多々目にしています。

経済的な持続可能性というのはもちろん大事ですが、同様に、モノを買っている人、使っている人たちの「責任の捉え方」、そういったものが、かなり変わってきていると思います。

特に、農産物・林産物・水産物では、サプライチェーンの上流にいて、生産している、もしくはそれに近い現場にいる方だけではなく、結構川下の、全然生産現場のことはわからない、「買っているだけだよ、使っているだけだよ」といわれる方も結構責任を問われる時代になっているのではないかと思います。

具体的な事例としてご紹介したいのが、環境に関する法律が、特にヨーロッパを見てみると、非常に先行していると思います。ヨーロッパでは最近、インポーテッド・デフォレストレーション、要するに「輸入される森林破壊」に対する法律の規制を強化しよう〔※〕、そういった話が出ています。

※参考:Legislation with binding measures needed to stop EU-driven global deforestation
https://www.europarl.europa.eu/news/en/press-room/20201016IPR89560/legislation-with-binding-measures-needed-to-stop-eu-driven-global-deforestation

木材では先行して、かなりきちんと規制されているんですが、それが何の象徴かというと、「買っている側、使っている側としての責任をちゃんと果たしていこう」という流れではないかとみています。サプライチェーンの川下でも責任をしっかり意識していくことが、今後ますます重要になってくるのではないかと思います。

様々なバッググラウンドやスキル、経験を持つ人々が集まって「多様性」が生まれる

馬場:
ありがとうございます。

ここで一度話題を変えたいと思います。SDGsでは、「多様性」を重要視しているということで、ランクセスの村上さんに外資企業で感じる「多様性」について、お答えいただけないでしょうか。

グラレコ、多様性_ランクセス

村上:
私が外資企業に勤めていて最近感じるのは、外資企業というのは昔からのイメージですと、外国人の社長の人がいて、社内では英語をしゃべって、トップダウンで物事が決められるみたいなイメージがあると思うんですが、今、日本の企業も非常にグローバル化が進んできて、今や外資系、あるいは日本の企業っていう垣根に違いはないのかなと。例えば製薬会社さんもトップの方が外国人の方であったり、自動車会社さんもそうですよね。日本の企業のトップに外国人の方が就くっていうのも非常に増えてきましたし、明日から外国語が公用語だということもあると思うんですね。

ですので、「多様性」という部分において、外資系の企業と、日本の企業に違いはなかなか無いのかなと。私が今の会社、あるいは前職にいて思ったのは、例えば、「多様性」といったときに女性であるとか、国籍であるとか、年齢であるとか、色々あると思います。ですが、今言われている「多様性」っていうのは、もう少し人そのものにフォーカスしているのではないかと。それぞれのバックグラウンドであったり、経験であったり、あるいはスキルであったり、そういったものが「多様性」っていうのを作り出しているんじゃないかなと感じています。

多様な人材で、多様な経験を持っている人がいて、それが集まって、最適な解を導き出せる確率が上がっていくんじゃないか、私自身は、そういったところが多様性の素晴らしさではないかと思います。

例を挙げさせていただくと、最近会社のある課題に対して、広く社内に、「皆さんどうですか?」と問いかけをする機会があったんですね。そうすると、本当にいろいろな意見が出ます。「全く反対です」、「すごく賛成です」という賛否だけでなく、アイデアもたくさん出てきます。最終的に決めるのは経営層になると思うんですが、すごく面白い試みが社内でも行われてきたと感じています。

馬場:
ありがとうございます。私の思い込みが薄っぺらなものだったというのが、よくわかりました。すみません。

またご質問がありました。

質問②環境への配慮と経済の発展、両立させるには

質問者②:
環境に優しい製品を提案すると、多くの企業様がおもしろいと言って頂けます。ですが、いざ値段が高いとなると採用されません。環境には優しいがコストが高い製品が受け入れられる土壌を作るにはどうしたら良いでしょうか。

馬場:
こちらの質問は、まず稲継さんにお答えいただけますでしょうか。

グラレコ、環境とコスト_ブリヂストン

稲継:
はい、ご質問ありがとうございます。

これは、私もサステナビリティを担当している立場として非常によくわかるところです。当社の中長期事業戦略で掲げているのもまさにそこでして、やはりお客様の価値だけでやっていても駄目なところがありますし、一方で、社会の価値だけでやっていても事業活動が永続しないというところもあります。事業とお客様の価値、環境への貢献といった社会価値、それらを如何に結びつけるかが重要と思います。

SDGs×RUBBER#1、ブリヂストンスライド

【画像】ブリヂストン講演資料より

そうはいっても、すべてが事業に結びつくものではない部分もあります。例えば私たちが、社会・お客様・ビジネスパートナーと一緒に、新しい価値を生み出すために協働するといったときに、当社を“協働するパートナー”として、認めていただかないといけない中で、どうやってその信頼を獲得していくのか。そういったところで、例えば環境にやさしい製品を提供している、世の中に貢献する活動をしている、そういったことが効いてくるんですね。

もちろん事業と環境への貢献を両立することがベストです。ただ、事業に直接結びつかない取り組みであっても、それをすることによって信頼の醸成につながります。バランスを取りながらやっていくことが、重要なのではないかなと今考えております。

馬場:
ありがとうございます。

村上さんはどうでしょう。メーカーとして、何かお考えはありますか。

グラレコ、環境とコスト_ランクセス

村上:
はい。難しいトピックをいただきました。

SDGs×RUBBER#1、ランクセススライド

【画像】ランクセス講演資料より

私ども先ほども説明しました、7つの企業責任分野〔※〕の中で、サステナビリティに基づいた製品の開発を行っています。同じような回答になってしまうかもしれないんですが、そういった社会課題、世界の課題を解決できるような製品を提供していくと。その方向性をお客様にご理解いただき、企業としての姿勢に理解をいただきながら、お話をしていく。

※①レジリエントな調達②安全で持続可能な事業所③気候保護とエネルギー効率④やる気にあふれた従業員と成果を上げるチーム⑤ビジネス主導の革新⑥持続可能な製品ポートフォリオ⑦お客様との関係を大切にする(ランクセス 7つの分野における企業責任)

やはり、企業と企業のお付き合いですので、信頼性のある、持続可能性のある製品を作り続けていくというのは非常に重要です。そういったビジョンを共有していくというのが重要で、私どもの企業としての発展につながっていくと、信じて行っています。

馬場:
ありがとうございます。

質問が相次いでおりまして、ありがとうございます。時間の関係で、お答えできる質問もあと二つほどになります。

質問③株主との方向性で感じるギャップ

質問者③:
ESG投資〔※〕も広がっていますが、ブリヂストンさんやランクセスさんではSDGsや持続可能性について、株主とは意識や方向性にギャップはあるんでしょうか。あるとしたらそれはどんなものでしょうか。

※ESG投資=Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス=企業統治)の3つの観点から企業の将来性や持続性などを分析・評価した上で、投資先(企業等)を選別する方法。

グラレコ、株主_ブリヂストン

稲継:
はい、ご質問ありがとうございます。

今、このESG投資の文脈の中で、機関投資家とのエンゲージメント〔※〕というのはここ2~3年、急速に広がっています。以前は問い合わせは少なかったんですが、今は月数回、実際に機関投資家の方と色々な状況について対話しています。

※エンゲージメント=個人と組織が対等の関係で、互いの成長に貢献し合う関係

その中で、やはり過去は割と、環境に特化されていたり、ガバナンスに特化されていたり、機関投資家毎にフォーカスされているところが違った部分もあったのですが、今は機関投資家の方から期待される方向性はかなり集約されてきたと感じています。もちろん、様々な視点がありますので一概には言えない部分はあるんですが、ESG投資、またそれを大きく動かしている機関投資家の方々の視点といったものは国内外のギャップがかなりなくなってきています。サステナビリティに向かった方向性に収斂されているといいますか、一致してきているように今感じています。

グラレコ、株主_ランクセス

村上:
私ども日本法人は日本では上場をしていませんが、会社全体としましては、ダウ・ジョーンズのサステナビリティ・インデックス(DJSI)〔※〕の構成銘柄にも入らせていただき、情報開示を非常に積極的に行っています。

※DJSI=米国ダウ・ジョーンズ社とスイスのSAM(Sustainable Asset Management)が選んだサステナビリティ株式指標。

ドイツ本社では、ステークホルダー・ダイアログ、ということで色々なステークホルダーの方との対話を行っています。そういった活動は非常に積極的に行っていまして、透明性、そして対話というところは非常に重視していると理解しております。

馬場:
ありがとうございます。これが最後の質問になります。

質問④関連部門との連携方法

質問者④:
経営方針や事業目標への落とし込みを進める際に、関連部門との連携はどのように促進されましたか。トップダウンでの指示があったのでしょうか。工夫された点や、やり方があればポイントを教えてください。

グラレコ、経営への落とし込み_ブリヂストン

稲継:
私もこのCSRや、サステナビリティの分野で長く仕事をしていますので、この課題は非常に苦労しながらやっている部分があります。やはり、外圧をうまく使うといいますか、実際にお客様からサステナビリティに関する問い合わせや、要求があったりすると、関連部門の人は、「なにこれ?サステナビリティってどういうこと?」みたいなことになります。その時にサステナビリティを推進している部門が、しっかりそこをかみ砕いて説明する、そこでバックボーンになる大きな戦略や方向性をしっかり説明する準備をしておくといったことがまずは大事になるかと思います。

やはり、トップ自らサステナビリティの重要性を語ってもらうことが一番効果的です。今回当社の事業戦略の中で「サステナビリティを中核にした」といった言葉が非常に効いてきまして、「そもそも中核にするというのはどういうことなのか」、「そもそもサステナビリティって何なのか、ちょっとレクチャーして欲しい」とか、今までサステナビリティとの関係性が低いと認識されてきた部署からの問い合わせも増えてきています。そういったトップダウン、また横の連携と外圧、この辺りをうまくバランスさせながら、しっかり認知・啓発・認識を深めていく活動が重要だと思っています。

馬場:
ありがとうございます。もうそろそろ時間が来てしまいました。残念ながら、トークセッションも終わりの時間が来たようです。

最後に佐藤先生、感想をお願いします。

SDGsはポテンシャルのあるチャンス

グラレコ、総括

佐藤:
やはりゴムの業界も、色々な生産、調達、消費のチェーンのなかで、同時解決というのが決して企業だけでやるものではなく、調達、消費者側の責任も出てきているということがあるのかなと思っています。

SDGsは決して企業だけでやるものではなく、また業界だけでやるものではないわけです。多様な人たちがいるからこそ、真摯にやれば多くのファンが支えてくれるという文化になってくるので、従来の、自分の会社だけ、自分の業界だけではない、このポテンシャルってものがSDGsの魅力なのかなと聞かせていただきました。

SDGsというものは、環境、経済、社会の統合のアプローチの文脈を越えて、これからは中長期的にリスクをチャンスに置き換えて、そして捉えていくという、発想の転換が重要だと思っています。SDGsに関わることによって、色々なものの進め方、社員を育成しながら、新しいファンを作っていく、それを踏まえて、ここに乗るか乗らないかというのは大きな分かれ道だと思います。SDGsそのものが、それだけポテンシャルのあるチャンスだということですね。

馬場:
ありがとうございました。

今、SDGsは小学生から勉強されているということなので、我々も頑張っていかなければならないと思っております。

SDGs×RUBBER#2 申し込み受付中(終了しました)

SDGs×RUBBER#2が、2021年2月26日(金)にオンラインで開催されます。

テーマは「中小企業と考える、ゴム業界×SDGsの可能性」。ゴム業界の特徴として、大企業から零細企業まで規模の異なる企業が多く存在していることが挙げられ、業界を支える中小企業の存在は無視できません。今回は、主にゴム業界の中小企業の事例をご紹介します。

みなさまのご参加お待ちしております!

※申し込み締め切りは、2月22日(月)

この記事が参加している募集

イベントレポ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?