俳句のいさらゐ ☬◙☬ 松尾芭蕉『奥の細道』その二十一。「語られぬ湯殿にぬらす袂かな」
湯殿山での吟、「語られぬ湯殿にぬらす袂かな」は、さっと読み飛ばされてしまう俳句だろう。句の姿は伝統的に、端正に整っているから、つまらない俳句に見えて来る。
湯殿山神社を参拝した者は、掟として見たさまを語ることは許されない。今その秘儀を賜っているありがたさに涙がこぼれる、という意味だと諸本は解釈している。
しかし私には、そういう、説明に堕しかねないことを詠んでいるだけなのかという疑問が大いにわく。
その疑問を持って俳文の方を詠むと、参道の山道で遅桜の花に心を奪われたこと、その