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知識ゼロから Zoom演劇を 生配信で上演した話⑥ テクニカル編

オンライン演劇 リーディング『音の世界』の裏側。
『音の世界』の公演情報はコチラ

読んでくださってありがとうございます。Celebration of Possibilitiesの西村壮悟です。

前回は、『音の世界』の演出について、書きました。

書ききれなかったこともあるので、今回は実際にどんなことがあった(した)のか、テクニカルなことも書いてみたいと思います。
ちょっとマニアックというか、実際にZoomを使ったことある人でないとイメージしにくいかもしれません。


テクニカル1:通信と画質を天秤に

冒頭の写真は、本番(生配信)のときの部屋の様子です。
まぁちょっと見せるのは恥ずかしい絵ですが、せっかくなんで公開します。
誰かの役に立てばいいんです。

ノートパソコンにiPadを掛けているのが分かりますか?
変な使い方をしています。

僕の使用していたパソコンは古く、カメラとマイクの性能がイマイチです。音質についてはUSBマイクを買いましたが、カメラは外付けのものを購入してなかったので、照明を暗くすると動いたときに極端に見えにくくなります。
映像を見ていただけると分かると思いますが、照明を部分的に当てたりして狭いホテルの部屋の雰囲気を出しています。天井にある電灯を点けることはしたくありませんでした。
しかし、そもそも画質が悪くて見えにくいと、お客様にはストレスになりかねない。そこで比較的カメラ・マイク性能の良いiPadを使用することを考えました。

そこで通信の問題が。
配信をするにあたり、通信が安定していることが大前提なので、有線LANケーブルを使用していました。有線だと切断してしまうことはまずありません。でもiPadにはケーブルは付けられません。

そこで生み出したのが、有線LANのパソコンをZoomホストとして使い、撮影はiPadでするという方法。これで通信と画質どちらもクリア。
同一アカウントでZoomミーティングに入り、パソコン側をビデオ・マイクオフ(本体からミュート)にしました。


カメラの位置と台本

稽古の途中からiPadにしたことで、変更しなければいけないことがありました。それが台本を置く「場所」です。

『音の世界』では演技中、画面越しに相手を見る(あるいは見ているように見せる)ために、要所でカメラを見るようにしています。ですが、リーディングでもあるので、台本も見なければいけない。
だから、カメラの近くにテキストとZoomの画面(相手)を持ってくるようにしました。

ノートパソコンのカメラは、本体上部にあるので、Zoomを最小化し、カメラ近くに表示する。そして台本はWord画面中央揃えに表示。
これでカメラ、Zoom、テキストが縦のライン上に統一されます。目線は縦よりも横移動のほうが目立つので、縦ラインにしたのです。
Zoom画面の相手の顔は小さくなってしまいますが、これが今のところはベストな方法だと思います。

ですが。稽古途中から撮影をiPadにしたので、それができなくなりました。
タブレットは横使いです。これは他の出演者と統一させるため。
するとカメラは下敷き(土台?)となったパソコン画面のなかに位置するようになります。
テキストはパソコン画面右(iPadが掛からない位置)に寄せました。
しかしこれで諦めないといけないのが、相手の顔を見ることです。
相手の顔(Zoom画面)は、iPadカメラの左側に表示されます。テキストはカメラの右横。視線の横移動が目立ってしまいます。
なので、あまりしっかりと相手を見ることは僕はしませんでした。カメラから離れたときに見るくらい。ソフトフォーカスでぼんやり見る感じ。
しっかりと見るより、声で相手を感じ取るようにしました。
注意しないと相手を実際に見てしまいがちなので、これは慣れが必要です。
ですが、やっぱりね。できれば見たほうが良いです。情報量が違うので。だから次やるとしたら外付けカメラ買いますね。


声の反響を抑える

この部屋がまた反響しまくるんです。なので毛布を貼りました。さいわい?クローゼットがあったので扉に挟みこんで大変ではなかったです。


ある物を何でも利用

家がスタジオ、みたいな状態なので、もうある物を出来る範囲で利用して作ります。

タブレットを掛けるとパソコンの上の部分が倒れてしまうかもしれないので部屋の隅に置いていたラックを引っ張ってきて支えています。ラックの上にあったケースにカンペを貼ったりもしています。
机はミネラルウォーターの箱です。ちょうど良い高さ大きさのテーブルも机もなかったので。

高さも一番やりやすいように色々試しました。
実は初期には僕は立って、パソコンをラックの一番上に置いてやっていました。しかし立つと意図しない細かい身体の動きが増えてしまうことが分かりました。
役としては落ち着かない、衝動的な人間だから、動きが多いのはフィットするし、どっしりとした「男甲」という、もう一人の男性の役と対比にもなるのですが、それにしても動きが多すぎて画面のなかで見ると変だったので、座ることにしました。
まず背もたれのない台を椅子がわりにしていましたが、背もたれがあるほうが座り方、身体の位置によりバリエーションが出るので、椅子に変更。それで高さが変わったので、机の上に台を追加しました。

ちなみに椅子は二つ使っていて、写真右側の椅子はマウス置きです。机に置いているとマウスを触るときに肩が上に動いてしまい、芝居と関係ない動きが見えてしまうので、影響の出ない高さに置きました。マウスのクリック音を拾わせないためでもあります。

オンライン演劇が舞台とは大きく違うのは、これはカメラのなかの演技であるということです。その点では、これは演劇というより映像作品なのかもしれません。
カメラを通してしか見れないので、カメラの枠に映っている動きが全てになります。どう見えるかということがより重要になります。
俳優の動きには多かれ少なかれノイズが生じます。本人が意図している、やりたい演技に見えないのはこのノイズのためです。このノイズが面白かったりもするのですが、表現の邪魔になるのであればなくしていくことを、録画映像をチェックしながら、やりました。


他にも注意したこと

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・カンペには番号振っておく
これは僕が実際にゲネでやらかしたことです。カンペをランダムに何枚か貼っていたのですが、次にどこを読むか分からなくなってしまい芝居が止まってしまいました・・・。基本ですが、番号は書いておきましょう。

・使っているデバイスを充電しておくは必須。
電池を食うので。初期の頃はZoomに慣れてなくて「すみません、スマホ充電がなくなりそうだから繋ぎます!」とかよく聞きましたね。

・本番中のやりとりはZoomチャット機能とLINEグループ。
「とにかく念のためもう一台のデバイスを見えるところに置いといて」でした。
これでキュー出しや、ミュートし忘れを指摘したりしました。

・アクシデントがあったときに備えておく。
音楽は別の出演者が担当していましたが、かからなかったとき用にすぐ入れられるよう僕もスタンバイはしていました。
他にも、もしも誰かがZoomから落ちるなど続行不可能なアクシデントが起こった場合には全員即座にビデオとマイクをオフにする、一人が「しばらくお待ちください」と書いた紙を映し出すetc、段取りは決めてました。

・開演前は余裕を持つ
これが一番大事ですね。舞台と同じで当たり前のことですけど。
オンライン演劇で怖いのは、リモートだから直接助けられない点です。
問題解決に余計時間がかかります。リモートだしあまり厳しくメンバーを拘束したくないという考えだったのですが、緩すぎて準備がギリギリになるとアクシデントが起こったとき対応するのが大変です。その焦りが全員に伝染するのも避けたい。
早めに開演前の確認作業は済ませておくのが一番です。


失敗したこと

音楽を開演前とエンディング~カーテンコールに使ったのですが、パソコンで流しているものをそのまま拾っていたので音質が悪かったです。いくつか試したのですが結局解決できずじまい。
ですが、本番が終わってから方法があることを聞きました。Zoomで画面旧友機能があるのですが、音楽も共有することができるそうです。僕の調べ方が悪かったです・・・。
あの音楽は「蓄音機で聞いているように聞こえるかな好意的に解釈すれば」と自分のなかで言い訳しましたが、テクニカルに解決することができなかったのでした。


とにかくどんなものか見て欲しい

さて、ここまで色々と制作の裏側について書きましたが、
やはり作品を見て欲しいです。
その結果、どんな作品が出来上がったのか。

アーカイブ映像は、6月30日(日)まで、公開しています。

生配信の緊張感は残っています。
本編27分の短編。

オンライン演劇 リーディング『音の世界』
作:岸田國士 演出:西村壮悟
出演:瑚海みどり 山森信太郎 廣田明代 西村壮悟 せんす 小川浩平

ぜひご覧ください!







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