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オンライン演劇『音の世界』という企画に関わって② 出演者から

ー「音の世界」という企画にまつわる文章を、出演者の皆さんに書いていただきます。第2回目は、廣田明代さん(女役)。


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こんにちは。

オンライン演劇リーディング「音の世界」

女役の廣田明代です。

noteをご覧いただき、ありがとうございます。

もしまだ「音の世界」をご覧になっていない方、ご興味ありましたらこちらから御視聴、ご観劇頂けます。


今回の新型コロナウイルスにより、全ての方が自粛を余儀なくされました。

生活環境ががらりと変わった方がほとんどなのではないでしょうか。

演劇界でも公演の自粛による中止や延期が相次ぎました。

その状況下で、zoomなどのアプリを使ったフルリモートで作る作品が生まれたり、劇場から無観客で作品を上演、配信をする団体が増えていきました。

そんな新しい流れの中、ツイッター上でこんな文章をみかけました。

『リモート演劇はカニカマだ。』

…???

カニカマ????

おつまみの???

その方の前後の文章を読んでいるうちに

だいたいのことは想像できました。

カニが手に入らない状況を、演劇が出来ない今の状況にたとえ、リモートの作品はカニカマボコだと。

このカニカマという表現は、宮城聰さんがおっしゃった言葉だと、後ほどわかりました。

宮城さんご自身の言葉を聞くと、とても前向きでどんな状況下でも演劇や表現することを模索している言葉のように感じ取りました。

この宮城さんのご自身の言葉を知ったのは後のことで、

その時、私が目にしたのツイッターのタイムラインでは、カニカマという表現をどちらかというと否定的な言葉として書かれてあるものを多く受け取りました。

演劇ではない。

むなしい。

つまらない。

好きではない。

私はただ、

美味しいカニカマになればいいんじゃないか。

と思いました。

ただの食いしん坊な発言ですね…

確かにこれはカニではなくカニかまぼこかもしれない。

でも食べる物がなくなって今にも飢え死にしそうな時、

本物のカニじゃなきゃ嫌!とは言ってらんないです。

素手でカニかまぼこにむしゃぶりつきます。私は。

本物のカニが、お客様と同じ時間や場所を共有できる表現である演劇が、すばらしいのは大大大前提として。

本物のカニもカニカマボコも、どちらにもよいところがあるかもしれない。

そんな中で宮城さんがおっしゃるようにカニを見つけられるかもしれない。

本物より本物らしくなれるかもしれない。

そもそもこれは演劇なのかどうかという問いは、カニにだって言えることです。

本物のような偽物も、偽物のような本物も世の中にはきっとたくさんあるはずです。

今を生きているものだけが新しく歴史を作り変えていくことができるのだから、

今しか出来ないものに手を出さないわけあるまい!

そしてオンライン演劇リーディング「音の世界」の生配信上演に至ります。

その後は、お客様がご覧になったものが全てです。

現代に生きる皆様に、90年前の岸田國士が描いた「音の世界」を

オンラインでお届けします。

ぜひご覧ください。

本編はおよそ30分です。
※アーカイブ配信は6月30日までを予定しております。



廣田明代

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2018年まで演劇集団アクト青山で活動。
主な出演作品は「薔薇」「かもめ」
「僕の東京日記」「近代能楽集 班女×熊野」など。



(西村壮悟より)
廣田明代さんとは、昨年末に僕のマイズナーワークショップに参加してくれたのが出会いです。
マイズナーやる人によく言うのが「礼儀正しく(大人しく)しないでくれ」なんですが、やっぱりWS初日だと未経験者は大概大人しいんですよね。自分を出すのを恐れます。
でも明代さんは、WS最後のほうで一歩踏み込むリスクを負って、相手に向かっていって、その姿が「お、出してきた」と印象に残ったのを覚えています。

そういう根性というか気の強さみたいなもの、その裏側にある繊細さは、今回の「女」という役には欠かせない要素です。彼女のことをよく知っているわけではなかったけれど、可能性を感じて『音の世界』への出演をお願いしました。

結果として僕の期待以上でした。この役って矛盾も抱えている複雑さがあって、演じるのに難しいところがあると思います。
明代さんはそのハードルをちゃんと分かっていて、自分で準備や研究をして、稽古の度に良くなっていったので、僕も演出として「もっといける」と高い要求をしたと思います。共演者としても、また(今度はリモートではなく)一緒にやりたい女優さんです。


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