見出し画像

#12 ポシュロウの人たち【和泉 亮さん】


ハロー、どうもどうも~
 
亮さんは、そう言っていつものように、やさしく穏やかな口調で声をかけてくれた。
そんなナチュラルで、ともすればアンニュイなリズムに、こちらも自然に表情が緩む。
 
今日はポシュロウの監修のお一人、
フクシのみらいデザイン研究所の和泉亮さんと“ポシュロウ“についてお話をしました。

和泉 亮(IZUMI Ryo)
ソーシャルワーカー / 精神保健福祉士

精神保健福祉士として、旧法時代の精神障害者通所授産施設、精神科クリニックにソーシャルワーカーとして勤務。2011年全国で就労支援サービスを展開する株式会社に入社。複数拠点の立ち上げにサービス管理責任者として関わり、後半は法人本部のHRにて人材育成採用評価等の業務に携わる。
2019年「フクシのみらいデザイン研究所」設立。フリーランスソーシャルワーカーとして活動。動画制作などを通じ社会に新たな価値を提供。龍谷大学、光華女子大学、大阪歯科大学、京都医健専門学校にて非常勤講師も務める。

【好きなこと】
・自由に自分のペースで過ごせる
・ドライブ
・高利回り投資

【苦手なこと】
・人の多いところに行く
・行列に並ぶこと
・普通預金


“ポシュロウが作る新たな価値”


山本:
今日はありがとうございます。
早速、亮さんの紹介をしたいのですが、
ただ、亮さんって何者かってとても説明しづらいんですが(笑)
 

亮:
そうそう、それは、怪しい人というか、どういう風に表現するのが良いんだろうなって。

 
山本:
怪しいって(笑)
 

亮:
でも、いつも自己紹介するときは“フリーランスのソーシャルワーカー”って名乗っていますね。
で、学校で教員として次世代のソーシャルワーカーの育成をしつつ、世の中に新しい価値を発信できたらと動画づくりをしています。
…みたいな感じが最近のプロフィールでしょうかね。
 

山本:
そうですよね、亮さんはご自身でもYouTubeで映像コンテンツの発信をしていますもんね。そういう意味ではユーチューバーでもあるし、職業“和泉亮”って感じですね。
 

亮:
説明しにくいポジションにいるっていうのは実は結構大事だなと思っていて。
教員していますとか、会社員していますとか、説明しやすいですけど、要は一般化されている職業であって。
どう説明してもイマイチ伝わらないっていうのは、それだけマイノリティということで。
少数派にいる方が、おもしろい取り組みができるんではないかと思っているので、それくらいの方が自分としては安心しますね。
 

山本:
なるほど~!たしかに新しい価値を社会につくっていくという意味では既存の職業の枠組みだと限界みたいなものはあるかもしれないですしね。
 

亮:
でも、動画を作ることも、授業をつくることも実はつながっていて、動画の取材の中での学びが授業に活かせたり、動画がそのまま教材にもなったりします。
先日も地方に取材に行ったときも、撮影しながら「これは後期のあの授業で使えそうだなぁ」とか考えていたりします。
 

山本:
すごいなぁ、まさに亮さんだからできていることですね。そのうち、ポシュロウの取材も・・・(笑)
 

亮:
いや、ぜひ、本当にポシュロウはとてもすごい取り組みだと思っていて。
チームで上下の関係性がない、フラットな立場の中で、それぞれが強みを発揮するという制作プロセスも素敵ですし。
製品としても特殊な枠組みの中で、サービスを届けるというのがもちろん大前提にあるけど、直さんが社内のダイバーシティの引き金にもしたいと言っていたのがすごく面白いなと感じていて、いつか取材したいと思っています。
 

山本:
嬉しいです~!
 

亮:
私の持つ授業のテーマで“ソーシャルアドミニストレーション”というものがあって。
これは福祉の組織管理みたいなニュアンスで、人材育成とか、経営管理とかの視点が含まれるのですが、
よくある“生産性を高い人を育てて、効率的な組織をつくろう”という文脈であれば語りやすいかもですが、そうではなくて、ソーシャルワーカーが“自分の組織や地域に働きかけを行っていくことによって、結果として良い組織が作られ地域課題解決につながっていく”という考え方なんかも含まれるんですね。
まさしく直さんのやっていることはソーシャルアドミニストレーションを語るうえでの良いテーマになると思います。
 

山本:
たしかに。最近思っているのは、僕がやっていることって、効率的に進めるのとは、ちょっと真逆の、遠回りをした進め方に見えると思うんですが、リターンはとても大きいと思っていて。要は、結果的に生産性は高くなると思うんですね。
なので、おっしゃって頂いたように、そういう組織作りっていう観点でも面白い取り組みなのかもなと思います。



“これからの社会の在り方とポシュロウ“


亮:
そうそう“効率化“みたいな話でいうと、
よく、AIが進化しすぎると、人類が淘汰されるみたいな話あるじゃないですか。
完全なものが残っていって、不完全なものを取り除いていくと。
でも我々人類は、そうやって、これまで不完全なものを排除して、効率化しながら進化してきたんですよね。例えば何かが不得意な人を組織から外したりして。
 

山本:
人はそもそもみんな不完全なのにですよね。

 

そうです。それで、Chat-GPTとかが出てくると、我々全人類の不完全さが浮き彫りになって、『次は私が淘汰されるかも知れない』という話ですよね。
完全さを目指すがゆえに、どんどん生きづらくなっている。
ただ、そんなこと言っていたら、人間生きていけないので。
そういう不完全さを包摂するというのが、次の時代に求められるのではないかと思うんです。
 

山本:
なるほど。たしかに。
 

亮:
人の不完全さを前提として、それを集めたときに何が生みだされるのか、ということが次のステップだとすると、ポシュロウはそれを先取りしていると思うんですよ。
 

山本:
偉人の予言みたいですね(笑)そういう風に捉えていただけるのは嬉しいです。
よく研究されたアカデミックな理論を“大文字の理論”と呼んで、
私たち個人が経験や体験の中で培った考えや理論を“小文字の理論”と呼ぶらしいのですが。

一見、アカデミックな物がすごく尊重されたり、大切にされたりもするけど、どっちにも価値があると思っていて。

そういう“小文字の理論”と呼ばれるような、誰か身近な人の経験から出てきた言葉のほうが、大きな自分の支えになったりすることもありますよね。
ポシュロウはそういう意味で、アカデミックなものと同じくらい、個々にあるいろんな考え方を大切にして価値を作りたいと思っていて。
これって不完全さを前提にそれらを包摂して価値を作るっていう話とちょっと近いなと思いました。
 

亮:
僕が大事にしているセルフヘルプグループとか、ピアサポートとか、当事者の人だからこそ発揮できる価値があるという考え方がありますけど、それも今話にあった“小文字の理論”の話ですよね。
 

山本:
まさに!そういう価値を大切にしたいですね。
 

亮:
福祉の業界でも“理論”と“実践”を行き来きしてっていう表現をしますけど、理論だけでは幸せにつながらないかもしれないし、実践も理論から離れると独りよがりになってしまうこともある、そのバランスは大事なんだろうなと思いますね。


“ポシュロウを通じての学び”


山本:
ちなみにポシュロウの話が最初にあったときにどんな感想でしたか?
 

亮:
まさにさっき言った、不完全さを包摂することで新しい価値を生むというサービスがとても面白いなと思ったのと、
もうひとつ思ったのが、障害福祉のサービスって公的なお金が使われていて、それはそれでとても大切で必要だと思っているのですが、
一方で、民間の企業とかが福祉的な業界で、利益を上げる仕組みを創っていくことは、福祉の未来を考えた時に必要だと思っていて。
ある意味、それをポシュロウはしようとしていて。制度の枠組みではないところで成り立たせるサービスなわけですから、これこれ!と思いました。
 

山本:
たしかに、めちゃくちゃ難しい挑戦であるというのは理解しつつ、すごく大切な事だろうなと思います。
最近だと、ヘラルボニーさんとか、障害福祉文脈の中でちゃんとビジネスというゲームで勝っていく仕組みをつくる人達が増えたり、社会的にもそういう価値に目を向けつつあったりするなぁ思っているので、とてもやりごたえはありますね。
ちなみに実際に作っていく中での感じることはどうですか?
 
 
亮:
一番は勉強になっていますね。
頭の中のものをアウトプットするプロセスで、自分の中で整理したり、これってどうだったかなと改めてインプットしたりして。
要はインプットとアウトプットを繰り返すわけです。
伝えやすい言葉で、限られたスライド数と時間という枠組みで、かつ対象も色んな人たちがいる中で、その表現を考えて、どう伝えるかみたいなことを考えるのは非常に勉強になっています。
 

山本:
確かに。色んなポシュロウとしてのアウトプットのルールがあるし、動画の台本作りのインプット・アウトプットって、普段の作業とはちょっと脳の使い方が違いますよね。
 

亮:
僕の中で、授業の中でしゃべる言葉の伝え方とかも変わってきているような気がします。
 

山本:
へえ!そうなんですね!それは興味深い。
たしかに、私たちの関係性の中で気にならなかったワードも、また違う表現でビジュアル化されたり、語り手が変わったりすると、ここの表現こう伝わっちゃうかも、とかよくありますよね。
 

亮:
そうそう、だから、今まで何気なく使っていた言葉も、もしかしたらこういう風に伝わっていたかもしれないなと、作業の中で自分自身を修正する機会に確実になっていますね。
なので、アウトプットとインプットの繰り返しってやっぱり大切だなと思うわけですよ。
 

山本:
そうですね、なんか仕事が忙しいと、アウトプットだけで終わって、インプットがおろそかになったりするし、逆に勉強ばっかりになって、話す機会やそれを基に考える機会がないみたいなこともあったり。両方あってこそだなっていうのはありますよね。
 

亮:
ポシュロウもリリースしたら、ある意味、利用する人たちはインプットするわけじゃないですか。
だからそういうのをしゃべり合う機会とかでも良いですし、利用される人たちのコミュニティみたいなものは、次の進化の方向性としては面白いかもですよね。
 

山本:
そういう意味では、就労移行支援を利用しない方がメインのターゲットにはなるものの、就労移行なんかでも必要に合わせて積極的に利用してもらって、そこから周りの方と対話をする、みたいな使い方もとても良いだろうなと思います。
 

“ポシュロウに期待すること”


山本:
最後にポシュロウに期待することについて聞かせてください。
 

亮:
冒頭からも話していましたが、これまでの世の中は1億円売り上げたら、来年は2億円!みたいな話だったり、次は、使う原料をもっと安くしようとか、人件費を削って効率的にしようとかだったり、そういう試行錯誤をしてきたと思うんですね。

そういう“右肩上がり”イコール“幸せ“という価値の、次の時代の価値や共通認識を作るのは、ポシュロウのようなサービスだと、勝手に思っています。
もちろんポシュロウだけで、どこまでつながるかというのはまた別の話かも知れないですが、その可能性を秘めている。そういう希望みたいなものは見出しています。
 

山本:
いやぁ、ありがとうございます。そう言って頂けて嬉しいです。
でもおっしゃるとおり、SDGsしかり、成長するというところの価値は一旦おしまいにしましょうか、ということが共通認識になる時代が徐々に来ている感じはありますよね。
 

亮:
ほんと。AIの話もそうですけど、そういう社会がそこまで来ている気がしますね。
 

山本:
いやぁ、記事にするのがとても楽しみになってきました!別途掲載する写真も後で何枚かください~!
 

亮:
写真館にでも行ってきましょうか?
 

山本:
(爆笑)

【編集後記】
亮さん、改めて今回はインタビューのお時間をいただきありがとうございました。
とてもリラックスした中で、互いに考えていることを自分たちの間に置いて重ねていく感じが心地よく、様々な内省や気づきがありました。
お話の中で、私がポシュロウの最終的な価値について、ひとつ新たに言語化できたと思ったのが「すべての人の不完全さを前提に、それらが集まったときに生まれる価値に光を当てること」です。
これは大切にしたいことでもありつつ、ドキッとしたというか、私もついつい不完全なものを取り除く思考のようなものが無自覚に生まれてしまう中で、今、自分が果たしてできているのだろうかと、非常に考えさせられました。
きっと簡単なことではないし、一気に景色が変わっていくようなことではなく、本当に少しずつ変わっていくことだと思うのですが、”ポシュロウとは何か”を突き詰めていく先に、亮さんがおっしゃったような新しい時代が待っていると良いなと思います。
                                山本



▼亮さんの活動はコチラ▼

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?