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PhantasMaiden

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記事一覧

PhantasMaiden プロローグ

――泡沫のように、『私』が弾けては消えてゆく。
ヒトの身体が魂の入れ物なのだとすれば、今まさに私の魂は零れ落ちているのだろう。
『私』が末端から消えてゆくのが感覚的に伝わる。
……静かだ。
もうどれくらいの時間が経ったかすらわからない。それは数多の英雄譚が紡がれるほどの途方もない年月だったかもしれないし、あるいはほんの数秒にも満たないのかもしれない。
ただ一つ理解できるのは、私が確実に終わりに近づ

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PhantasMaiden 1話

(夢じゃないんだ……よね?)
エミリア・プラテルは目の前で起こる不可思議の連続に、思わず頬をつねった。
鋭い痛みでこの世界が虚構ではないことを再認識する。
目の前の光景が信じられない訳ではない。目を覚ましてからというもの、めまぐるしく変化していく様相に、徐々に現実感が失われていただけだ。

後ろを歩く少女、ジャンヌ・ダルクも思考は同じである。
夢か現か。嘘か真か。明滅する思考を束ねあげるには、まだ

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PhantasMaiden 2話

オオカミ少年との戦闘を終えたジャンヌとエミリアは、荒野を跨いで次なる領域へと進んでいた。だが、その足取りは決して軽やかとは言えるものではなく、2人の間には先の戦闘によるものか、なんとも言い難い沈黙が続いていた。
 そんな沈黙を破ろうとするかのようにエミリアが口を開く。
「そういえば、領域について話していませんでしたね」
「領域、ですか?」
「ええ、この世界にはこの荒野以外に様相の異なる7つの場所が

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PhantasMaiden 3話

ウェーバーの領域を離脱したジャンヌとエミリアの二人は、緩衝地帯である荒野を進んでいた。
ここまでの過程がそうさせたのだろう、二人の足取りは、決して軽いものではなかった。
「私、昔聞いたことがあるんです」
どこか重苦しい空気に耐えてかねてか、おもむろにエミリアが口を開く。
「魔弾の射手、ご存知でしょうか」
エミリアの問いに、ジャンヌはいえ、とだけ答えた。
それを聞いたエミリアは、自分が知りうる、オペ

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PhantasMaiden 3.5話

 ひどく懐かしい感触が五感を刺激する。私が歩を進める度に、それは段々と強く、濃くなってゆく。
 闇夜に点々と輝く焚火の明かり、土と金属の入り混じった独特の臭い、あちこちから響く談笑の声、それら一つ一つの要素が、私に懐かしさと安心感を与える。
 私――エミリア・プラテルは、自らの領域に足を踏み入れていた。というのも、連続で戦闘を行ったことで消耗した体力を、一度各々の領域で休憩することで回復しようと私

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PhantasMaiden 4-1話

――自らの領域を出発しておよそ二時間。
さらに言えば、鬱蒼とした森の中に足を踏み入れて三十分。分け入れば分け入るほどに光の射さぬ場所、あたりはまるで夜のように薄暗かった。
メアリーとの戦いの後、一度自らの領域に戻ったジャンヌ、エミリアの二人はその後、それぞれが別の領域を目指していた。
「……そろそろか」
エミリアは小さく呟いた。もうじきたどり着くだろう。導かれるように歩を進めるごと、何かが近づいて

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PhantasMaiden 4-2話

 ジャンヌが黒猫の後を追っていると、気が付けばそこはオルレアンと似た街並みの、けれどもどこか異なる中世の街だった。
 そんな周りの景色に意識を取られていると、気が付けばジャンヌは黒猫を見失ってしまっていた。
「どこへ行ったんでしょうか……」
 そう呟きつつ、辺りを散策する。よく見ると、道行く人は女性ばかりであり、皆一様に何かに怯えているかのようだった。
 そんな風景に違和感を覚えつつもジャンヌが大

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PhantasMaiden 5話

最初からそう決まっていたかのように。
まるで予定調和のように。

――夕暮れの荒野、そこに残されたのは、かつて手を取り合った二人の戦乙女だった。
それは当然の帰結なのだろうか?
二人には分からない。
それは幸運の積み重なりか、はたまた不幸な出来事か。
それも、分からない。
運命と言うには勝手が過ぎるだろう。しかし、二人は残された者として、こうして対峙している。それがすべてだ。
「私たちが最後の生き

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PhantasMaiden 6話

「う、ん……」
 ジャンヌが意識を取り戻すと、最初に感じたのは後頭部への柔らかい感触だった。
「あらジャンヌ、おはよう」
「――ッ!」
 自分がアリスに膝枕されていることに気付くと、警戒心から反射的に起き上がり、距離を取る。
「あら、せっかく怪我も直してあげたのに……つれないのね」
「……ッ、何が、目的なのですか……アリス」
 言われた通り、ジャンヌの身体の傷は完治しており、体力も完全に元に戻って

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PhantasMaiden エピローグ

 目が覚めると、そこは知らない天井だった。無機質な部屋に、布団の柄で申し訳程度に女の子らしさを出したベッド。
……長い夢を見ていたような気がする。覚醒に慣れていないのか、身体に対する違和感が激しい。
布団から身体を起こしながら記憶を辿ってゆく。集められた7人の女の子たち。各々が抱えていたであろう、失ったものへの願い。殺しあわなければならなかったあの惨劇。ゆっくりと、辿るように1つずつ思い出していく

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