|重陽の節句|年中行事は作る楽しみと食べる楽しみをくれる
一月七日の七草粥は欠かさない。二月三日には硬い意志をもって恵方巻を黙々と食べる。三月三日には祖母お手製のちらし寿司と、ひなあられ。五月五日は柏餅で、七月七日はお素麺。
初孫の私に与えられた立派なお雛様はずうーっと光を浴びないまま箱入り娘状態だし、ハロウィンの仮装はしませんが。
私は節句やイベントに纏わるものを食べることでその季節を身体で感じたいタイプの人間です。ちゃんと噛みしめたいのです、季節の巡りも、味も。
九月九日は、重陽の節句。
これまでお月見団子ばかりに気を取られて通り過ぎていましたが、先日買い物をしていると、重陽の節句について書かれた説明文を目にしました。
別名「菊の節句」とも言われ、大きな奇数が重なるとても良い日とされているそうで。邪気を祓うために菊酒なんかを飲むらしい。
菊酒、、ちょっとそれはよく分からないな。お酒飲めないしな。と思っていると、重陽の節句は庶民の間では「栗の節句」と親しまれ、栗ご飯を炊いていたとも書いてありました。
庶民には栗ご飯。これは庶民代表として炊くしかないな。ということで、数日前から重陽の節句に栗ご飯を炊く(食べる)ことを楽しみにしていました。
実は、ひとり暮らしを始めてから、もうひとりでただ食べる為にご飯を作ることにちょっとだけ疲れていました。最初こそお気に入りの食器にご飯をよそうことが楽しかったのですが。
朝ごはんを食べて仕事に行って、仕事の帰りにスーパーに寄ればもう時間帯は夜で。まだまだ仕事には慣れないので帰る頃にはぐったり。それから凝った料理を作るなんて出来ない、でも明日のお弁当に入れるおかずもないなーと重い腰をあげてキッチンに立つ。
そんな私はとうとうお惣菜という技を覚えたり。ランチに誘われると、やったー!お弁当作らなくてもいいー!と、心が躍ったり。
そんな時に、重陽の節句がやって来たのです。私の心を躍らせてくれる、季節の巡りを感じるイベント。通り過ぎるわけにはいきません、きちんと立ち止まって、噛みしめなければ。
あの、ピクニックのお弁当を作る時のうきうき感を、クリスマスディナーを作る時のわくわく感を、久しぶりに感じられるはず。
ということで、炊くぞ。栗ごはん。
本当は、栗を買って剥いて、無添加の栗ごはんを作りたかったのですが、あいにく近くのスーパーには売っておらず。剥くのも大変なので潔く諦めて、こちらをサッと洗って使用しました。
私の相棒、電気圧力鍋にどーん。
スイッチを押すだけでご飯も炊いてくれるし肉じゃがも作ってくれる素敵な相棒です。今回も、スイッチを押してひたすら待つだけです。
炊っけた〜〜〜〜!
いい感じにもちもちしております。
そして、おくんち(九日)に茄子を食べると中風にならない、という謂れもあるそうな。頭痛に悩まされてきた人間としては是非とも茄子を食べておきたいと思ったので、長ナスを焼き浸しにしました。
味付けは簡単にめんつゆ様を頼ります。ここも次回からは無添加を目指したい。兎にも角にも大葉とすりごまをパラパラ〜っとかけて。
秋といえば秋刀魚だなー食べたいなーと思ったのですが、魚焼グリルのないキッチンなので、秋刀魚はやめておこうという決断に至りました。
代わりに鮭と卵焼きを焼いて、重陽の節句定食(朝ご飯)の完成です。
え?朝だったん?と、びっくりするかもしれないけれど、朝ご飯です。栗ご飯と茄子の焼き浸しは前日に仕込んだのです。
お昼はランチの約束があったし、夜は習いごとのお試しに行く予定があったので、私には朝しかなかったのです。早起きは苦手でいつもベッドでうだうだしていますが、栗ご飯を思えば起きられましたよ。ついでに言うと、よりおいしく食べられるようにラジオ体操をして、お腹を空かせましたよ。
朝は窓を開けるともうすっかり涼しくて。秋を感じながらゆっくり秋の味を噛みしめました。秋っておいしいなあ。
ここ数日、ギリギリに起きて朝ご飯も適当になりつつあったのですが、作って食べる楽しさを噛みしめた朝でした。朝にフライパンのジュージューという音を聴くのは、なんだか心にいいですね。
少し疲れてしまっていた私に、作る楽しみと食べる楽しみをくれた重陽の節句。ありがとう。明日からも、ちゃんと作ってちゃんと食べて、時々はちゃんと作られたものを食べつつ、元気に過ごそう。
「時々、親に作ったご飯の写真送るんよ!ご飯作る元気があるんだなーって安心するから。」
近所のおばちゃんに言われたこの言葉に納得しているので、私は時々作ったご飯の写真を家族LINEに送ります。
重陽の節句を楽しんで、秋を感じる余裕があるんだな。わざわざご飯に栗を混ぜて、わざわざ茄子に大葉と胡麻をふりかける気力まであるんだな。そんな風に思って、安心しているでしょうか。秋の夜は長いから、変な心配をさせたくないなと思います。
でも、きっと心配ご無用です。私はもうすっかり、明日のお月見団子のことを考えています。
じっくり読んでいただけて、何か感じるものがあったのなら嬉しいです^^