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話し合いから見えること

大学に入学して4か月を過ごした留学生に、これまでの気づきを教えてもらった(わたしは日本語教師をしている)。その中で、ここ数年毎年のように耳にすることを書いてみたい。

この大学では授業の一環として、あるプロジェクトが行われている。そのプロジェクトには新入生全員が参加し、学科もバラバラにグループが構成され、学生主体で運営される。もちろん、日本人学生も留学生もいっしょだ。

その間、プロジェクトに必要な計画・運営・内容などについての「話し合い」が学生間で密にもたれ、進められていくらしい(わたしは直接関わっていない)。

この「話し合い」についての中国人留学生の所感だ。抜粋してまとめると次のような感じになる。

・日本人は、丁寧にグループ全員の話を聞こうとする。
・日本人との話し合いでは、結論が出るのに時間がかかる。
 中国人なら、多数決で決めてしまうかもしれない。
・日本人は慎重に物事を決める。
 中国人なら、失敗したら修正して進めればいいと考える。

ここでいう「日本人」はグループ内の日本人学生のことだけだし、「中国人」は学習者自身を中心としたごく個別的なものではあるが、さまざまなことを感じているようだ。

日本語で思うように表現できない留学生にとって、丁寧に話を聞こうとする日本人学生の姿勢は安心できる要素だったようで、「日本人のやさしさだ」という人もいた。一方、「全員の意見を反映することなど不可能なのに、なぜ時間をかけるのか」と効率の悪さを指摘する人もいた。

面白いと思ったのは、「中国人なら、失敗したらその時に修正して進めればいいと考える」という指摘だ。詳細はわからないが、「話し合い」の中で日本人学生が失敗を恐がっていると感じる場面があったのだろうか。

さまざまな外国人学習者とふれあっていると、確かに失敗に対する免疫力が高いと感じることがある。失敗の壁が低いというか、そもそも失敗を失敗と思っていないというか。もちろん、国や個人にもよるのだが。

ここからは推測に基づく話となってしまうが。

失敗も大小さまざまなので一概には言えないけれど、失敗を過度に恐れる要因の一つは、必ずどこかに正解があると思っているからではないか。どこかに正解が隠れている。正解を探し出さなきゃ。正解に辿りつかなければ、失敗してしまう!

わたし自身がこのタイプだ(った)。既知の世界に正解があると思うと、未知の世界に踏み込まなくなる。正解が善で失敗が悪だと思うと、失敗しないように振るまおうとする。

でも、世の中は正解かどうかわからないことだらけで、特に最近は絶対正しいことなどないのではないかと思わされる。いい大学に入っていい会社に入れば一生安泰だと言われたのだって、ほんの十数年前の話だ(ですよね?)。

「話し合い」の中で一人一人が自分の考えを表し、それを丁寧に聞く。これは本当に大切なことだ。

さまざまな意見を出し合うことで、思いもしなかった考えに触れたという声。トラブル時、問題解決へのアドバイスに本当に助けられたという声もあった。個では得られない、チームワークでこそなせる技だ。

そして、物事を慎重に進めること。これも程度の差はあれ必要だと思う。

その上で話し合いに求めること。
それは、絶対的な正解を探すのではなく、メンバーの声を形にして一歩踏み出す心意気を共有することではないか。慎重に協議をするのは、失敗しないためではなく声を形にするためでありたい。

…なんて、口で言うほど簡単なことじゃないな。

わたしの学生時代にはコミュニケーションを主軸にした授業などなかった(と思う)し、留学生と密に時間を共にすることも多くなかった。今の時代の必須スキルを「話し合い」を通して学んでいるのだと思う。

ところで、日本人学生はどのように考えているのだろう?きっとまた違う見解が表されるのだろうな。

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日本語教師。日本酒、妖怪、恐竜好き。趣味で長唄三味線を習っています。多様な人たちとの触れ合いの中で、感じた事や考えたことを綴っていきます。
コメント (2)
私が20代の頃(現在55歳です)東京から地方へ戻り、高校時代の友人たちとしばらく遊んでいましたが、話し合いとまではいかなくても、何かについて話していて、ちょっと違う意見を言うと〝怒って反論〟ととらえるのか、「まあまあいいじゃない..」と必ずなだめる人が現れました。
当時でも東京ではそんな事はあんまりなかったように思います。変わった連中の集まる専門学校だったからかも知れませんが。
違う意見を異質なものと捉えてしまうのでしょうか?意見される=否定されると感じるというのもありそうですね。社会人になって少し離れると、変化することってありますよね。
いつもコメントありがとうございます!
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