宮澤大和

作家、演出家。ぺぺぺの会メンバー。『信仰、未知と差異のデマゴーグ』(呆然戯曲賞自由部門…

宮澤大和

作家、演出家。ぺぺぺの会メンバー。『信仰、未知と差異のデマゴーグ』(呆然戯曲賞自由部門)、『信号』(朝日新聞・あるきだす言葉たち掲載)、『No. 1 Pure Pedigree』(こりっち舞台芸術まつり!最終審査ノミネート)、『夢の旧作』(SAF vol.14優秀賞)など。

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記事一覧

リモートやデジタル化が進むなかで, 失われつつある「リアルな体験(リスクを伴う)」の価値を再認識し, どのようにそれを取り戻し…

自己表現と他者からの視線の狭間で揺れ動く心情 下北沢にはよく遊びに行っていました。古着を買ったり、演劇を観たり。 けれども代田のほうへ足をのばしてみたことはあり…

宮澤大和
2週間前
94

ヨーゼフ・ボイス ダイアローグ展 《社会彫刻》 行動を通して社会を変革する

 エントランスをくぐると、ハットをかぶった人間がこちらに向かって歩いてくる。  セピア調の写真が飾られてある。写真は等身大よりも大きいように見受けられるが、どう…

宮澤大和
3週間前
100

Forbesを読むことに意味と信頼性はあるだろうか

自分の好きなことで商売を始めると、その商売はうまくいきづらいので、きらいなものを売りましょう と提唱しているのは藤田田氏です。氏は『ユダヤの商法』でそう著してい…

宮澤大和
1か月前
100

デューク・エリントンの音楽を聴きながら何をしていたんだろう?

この街に住むことを決めたのは2ヶ月前のことだった。 ぼくはある用事で呼び立てられて、机を挟んで2人の人間と向かいあった。 あれこれ質問攻めにされ、その質問のひとつ…

宮澤大和
1か月前
93

あらゆる芸術の鑑賞方法(それを踏まえたうえでの創作の方法)

能動的/受動的な鑑賞 音楽を聴くというのはひじょうに集中力を要する行為です。 私たちはつい音楽を「ながら」で聴いてしまいがちですが、そのような聴きかたでは音楽…

200
宮澤大和
1か月前
62

情報自体の価値はますます薄弱なものになっていく, 今, 大切にしないといけないことは情報化できない経験

 まだ具体的なプロジェクト名を明かしていいのかどうか、わかりかねるために、それら情報をうまく匿したうえで、自分の活動についてを記していく。ある人にとってはそれは…

宮澤大和
1か月前
107

近頃の映画鑑賞

映画『ダンケルク』を観終えたあと、『生きる』を観始めました。

宮澤大和
2か月前
70

なぜ読書は最良のインプットの方法なのか

またすごい本に出逢ってしまいましたので紹介します。即座に実用的な本です。 菅付雅信氏の『インプット・ルーティン』です。 さて、『インプット・ルーティン』のなかで…

宮澤大和
2か月前
84

完璧主義に囚われることなくアイデアを世に出し続ける

noteを書きました。完成していないけれども、記事を公開することにします。 たとえ完成していなくても、未完成であったとしても、世に出すということに意味があると考えま…

宮澤大和
2か月前
40

ノートブックで日記をする

昨日から日記をつけ始めた。正確にいうと、再開した。もっと正確にいうと、ノートブックに日記をつけることを再開した。この間も、ロディアのメモパッドを使用して日記(メ…

100
宮澤大和
2か月前
43

意味を喪失した人間はナンセンスな言葉しか発することができないのかもしれない

どのように書くのかを問い続ける日々だった。そういう期間が定期的に自分のもとに訪れる。瑣末な圧力が重なって、変化をもたらそうとしてくる。変化しないと生き残れないで…

100
宮澤大和
2か月前
75

自分ばかりを頼りにしていたらいつの間に孤独になっていた

一日がかりで本を読んで過ごす日がある。月に一度くらい。 以前まではいっしょに付き添ってくれる人がいたけれど、今はそんな人もいないので、少々さびしい。だからといっ…

100
宮澤大和
2か月前
74

ジャーマンポテト

もう5日も経ったのかと私たちは電話で言いあった。私たちが離れ離れになってからもう5日も経ったのか。この分だと、あなたが一時帰国する11月までもあっという間かもしれま…

宮澤大和
2か月前
65

ウィンストン・チャーチルの映画を通じて、技術の進化と歴史の繰り返しに思いを馳せる

チャーチルがタイピストに自分の言葉をタイプさせた時代と、現代の音声入力技術の進化を比較してみると、歴史の繰り返しを感じます。 音声入力技術が進化することで、私た…

宮澤大和
2か月前
45

本物の詐欺師

 一生懸命、ていねいに喋ろうとする人の姿には胸を打たれる。  その姿を目の当たりにするときに、ぼくはいつも思う。じょうずに、器用に喋る必要なんてないのだと。  対…

0〜
割引あり
宮澤大和
3か月前
45

間違いを起こさない人間はかえって悪人だと思う。起こした間違いに対して、くよくよと悩むからその人は善人なんだと思う。

「遠くなかった?」  と、きみは訊いてきた。  3時間の道程だ。  遠くないはずはないけれど、ぼくは首を振った。 「移動時間が苦じゃないんだ」 「よかった」  と…

0〜
割引あり
宮澤大和
3か月前
45

リモートやデジタル化が進むなかで, 失われつつある「リアルな体験(リスクを伴う)」の価値を再認識し, どのようにそれを取り戻していくか.

自己表現と他者からの視線の狭間で揺れ動く心情 下北沢にはよく遊びに行っていました。古着を買ったり、演劇を観たり。 けれども代田のほうへ足をのばしてみたことはありませんでした。しばらく歩くと大きなやなぎの木が植えてあった。風にそよぐその姿が印象的で、写真を1枚撮った。 写真を撮ることは好き。だけれども「写真を撮っている自分の姿」はなぜだか気恥ずかしい。そのため、人前で写真を撮れないでいる。ほんとうは撮りたいのに。 自分は忘れっぽい。だから覚えておくためには記録にのこしてお

ヨーゼフ・ボイス ダイアローグ展 《社会彫刻》 行動を通して社会を変革する

 エントランスをくぐると、ハットをかぶった人間がこちらに向かって歩いてくる。  セピア調の写真が飾られてある。写真は等身大よりも大きいように見受けられるが、どうだろう。もしかすると、等身大であるかもしれない。写真のなかの人物はずんずんとこちらに向かって歩いてくる。ブーツを履いている。それがズムズムと音を立てる。  しかし、ふしぎと威圧感はない。  写真に映る人間の眼差しに、深い憂いのようなものがあるからだろう。  これまで歩んできた道程にも、これから歩もうとする道程に

Forbesを読むことに意味と信頼性はあるだろうか

自分の好きなことで商売を始めると、その商売はうまくいきづらいので、きらいなものを売りましょう と提唱しているのは藤田田氏です。氏は『ユダヤの商法』でそう著しています。 その理由は、自分の好きなものとなるとついついその魅力に溺れてしまい、これでは商売にはなりません。が、きらいなものとなるとどうすれば売れるのかを真剣に考えることができるからだといいます。 確かに、藤田氏が言っていることは、自分の経験に照らし合わせてみると正しいように思えてきます。 私は、演劇や芸術を愛しすぎ

デューク・エリントンの音楽を聴きながら何をしていたんだろう?

この街に住むことを決めたのは2ヶ月前のことだった。 ぼくはある用事で呼び立てられて、机を挟んで2人の人間と向かいあった。 あれこれ質問攻めにされ、その質問のひとつひとつに対して真摯に回答していった。 どれだけ真摯に答えてみても、僕から見て左に座る方の人の表情は変わらない。変わらないというかずっと目表情のままだった。 右に座る人は対照的でずっとにこやかにしているのだけど、その笑顔が心からのものでないことにはちゃんと気づけていた。 ぼくが話し終わるたびに相槌を打ってくれるの

あらゆる芸術の鑑賞方法(それを踏まえたうえでの創作の方法)

能動的/受動的な鑑賞 音楽を聴くというのはひじょうに集中力を要する行為です。 私たちはつい音楽を「ながら」で聴いてしまいがちですが、そのような聴きかたでは音楽における表面的なものしか感受することができません。 ちなみに、私は楽譜がよめるわけでもないし、楽器をひいたり、唄だって別段じょうずというわけではありません。 カラオケはあんまり得意じゃなくて、できることなら避けて通りたい道だと思っていますが、たまに飲み会のあとで行くカラオケは楽しかったりすることもあります。

¥200

情報自体の価値はますます薄弱なものになっていく, 今, 大切にしないといけないことは情報化できない経験

 まだ具体的なプロジェクト名を明かしていいのかどうか、わかりかねるために、それら情報をうまく匿したうえで、自分の活動についてを記していく。ある人にとってはそれは難しい所為であるのかもしれないが、ぼくにとってはわくわくする。  なぜなら、ある物事を匿しながら書くことは文学の根源であるからだ。  古今東西の小説や戯曲を読み返してみる。なかでも名作と名高いものは皆、なにかしらが匿された状態で書かれている。  随筆でもそうだ。面白い随筆っていうのはそういう構造になっていることが

近頃の映画鑑賞

映画『ダンケルク』を観終えたあと、『生きる』を観始めました。

なぜ読書は最良のインプットの方法なのか

またすごい本に出逢ってしまいましたので紹介します。即座に実用的な本です。 菅付雅信氏の『インプット・ルーティン』です。 さて、『インプット・ルーティン』のなかで著者は「桁外れのクリエイターたちは桁外れの読書家である」という説をもとに、この本を展開していきますが、この点について皆さんはどう思いますか? やっぱりなにかをクリエイト(創出)するには「読書」という行為は不可欠なのでしょうか。 どうでしょうか? 「インプット=知識の拡充: 多様な知識や情報を摂取することが、新しい

完璧主義に囚われることなくアイデアを世に出し続ける

noteを書きました。完成していないけれども、記事を公開することにします。 たとえ完成していなくても、未完成であったとしても、世に出すということに意味があると考えます。 公開後に、完成させたいと思い立ったらいつでも編集することはできるし、そうして再リリースすればいいわけです。 これは、ディジタルの利点です。

ノートブックで日記をする

昨日から日記をつけ始めた。正確にいうと、再開した。もっと正確にいうと、ノートブックに日記をつけることを再開した。この間も、ロディアのメモパッドを使用して日記(メモ)をとり続けてはいたのだけれど、ノートブックに戻ってきたのはどうしてだろう。

¥100

意味を喪失した人間はナンセンスな言葉しか発することができないのかもしれない

どのように書くのかを問い続ける日々だった。そういう期間が定期的に自分のもとに訪れる。瑣末な圧力が重なって、変化をもたらそうとしてくる。変化しないと生き残れないではないかという強迫観念と、そう簡単に自分らしさを捨てるべきではないという頑固一徹さが闘いを繰り広げる。 時によって、その場合場合によって、様々な結論に達することがある。強迫観念がこれまでの方法を打ち崩すこともあれば、頑固一徹さが強迫観念に打ち勝つことだってあるにはあるのだが、どちらにせよ方法は大なり小なり変化はしてい

¥100

自分ばかりを頼りにしていたらいつの間に孤独になっていた

一日がかりで本を読んで過ごす日がある。月に一度くらい。 以前まではいっしょに付き添ってくれる人がいたけれど、今はそんな人もいないので、少々さびしい。だからといって、誰か、別の人を誘って行く気にもならない。なぜなら、本を読んでいるときはほとんど喋らない。たまに目があったら微笑しあったり、どちらかが空腹を感じ始めたら昼飯はどうしようか? と話しだしたりするだけだ。 そんなでいっしょに行く意味はあるのかと、大部分の人に訊かれるのだけど、いっしょにいる意味は確かにあったのだ。その

¥100

ジャーマンポテト

もう5日も経ったのかと私たちは電話で言いあった。私たちが離れ離れになってからもう5日も経ったのか。この分だと、あなたが一時帰国する11月までもあっという間かもしれませんね、と言うと苦笑された。電話越しだから表情は見えないのだが、苦笑しているのが確かにわかった。 今夜は何を食べるのと、聞かれてそういえば今夜は何を食べるのかを考えていなかった、と気がついた。家にある食材で何かしら料理をしようとは考えていた。

ウィンストン・チャーチルの映画を通じて、技術の進化と歴史の繰り返しに思いを馳せる

チャーチルがタイピストに自分の言葉をタイプさせた時代と、現代の音声入力技術の進化を比較してみると、歴史の繰り返しを感じます。 音声入力技術が進化することで、私たちは再び手でタイプするのではなく、話すだけでテキストが生成される時代に戻るかもしれません。

本物の詐欺師

 一生懸命、ていねいに喋ろうとする人の姿には胸を打たれる。  その姿を目の当たりにするときに、ぼくはいつも思う。じょうずに、器用に喋る必要なんてないのだと。  対して、じょうずに、器用に喋る人を目の当たりにしたときに、どんな感情をいだくのかというと、噓くさい、って思ってしまう(ことがある)。  詐欺師には、じょうずに、器用に喋る、というイメージがある。  たどたどしく喋って人をだます詐欺師がいるのだとしたら、いち度会ってみたいものだ。  けれども、もしかすると、真の詐欺師の

¥0〜
割引あり

間違いを起こさない人間はかえって悪人だと思う。起こした間違いに対して、くよくよと悩むからその人は善人なんだと思う。

「遠くなかった?」  と、きみは訊いてきた。  3時間の道程だ。  遠くないはずはないけれど、ぼくは首を振った。 「移動時間が苦じゃないんだ」 「よかった」  と、きみは言った。 「移動時間には何をしていたの」 「いろいろだよ。本を読んだり、あとは、きみから勧められた通り日記を書いている」 「ちゃんと続いているんだ」 「続いているよ。内容はついてきているか、いまいちわからないけれどね」 「いいんだよ、内容なんて、気にしないでも。日記っていうのは、書くこと自体に

¥0〜
割引あり