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お弁当箱のゆくえ

先日、バスの中にお弁当箱を忘れてきてしまった。

毎日ではないけれど、
夕食が残った時にお弁当に詰めて
翌日会社に持っていくことにしている。

いつ買ったか覚えていないお弁当箱は
買ってしばらく役目を果たすことなく眠っていたもの。
が、結婚して自炊が習慣化したおかげで復活。使う機会が増えた。

レンジに入れる際には蓋を取ってと書いてあるにも関わらず、一度(いや、2度くらいしたかも)蓋ごとチンしてしまったものだから、蓋がいびつに曲がってしまっているのが特徴。
つまり、よく漏れる。煮物とか。
自業自得と言えばそうだけど、あれはほんとうに参る。


お弁当の日も増えたし、買い替えてもいいかな?

そんなことを思いながらも、惰性で使っていたディズニーキャラが描かれた黄色いやつ。

さらにそれを覆うランチトートも
「気にいるものが見つかるまでの繋ぎ」的に買ったダイソーさん。申し訳程度に保冷のアルミ素材はついているものの、うっすい。

さて、そんなわたしのやる気のないお弁当箱。

その日もいつものようにバスの座席の脇にセットし、(変な位置で持つと漏れるから)半分寝ながら終着駅まで揺られていた。

普段なら少し手前で意識が戻り、お弁当箱を忘れないようにしなきゃと頭の中で唱えるところを半分以上眠りの世界にいたからか、1人席でいつもよりお弁当箱の位置が席の間にフィットしていたからか。そのまま置いてきてしまった。

気づいたのは、会社に着いてから。

あ!と思ったものの、
近くにコンビニもあるし、お昼ご飯が食べられないわけじゃない。
お弁当箱ももう買い替えても良いと思っていたし。諦めるのもありかなあ、なんて考えてしまった。

そうなると、わたしのお弁当箱のゆくえは。

おそらく営業所に送られて、
持ち主が現れるのを待つ。
翌日になっても来なかったら?
中身はお弁当。バス会社の人も困ってしまう。
他の忘れ物ならば一定期間保管して、警察署に送られるだろうけど、お弁当箱の場合どうするんだろう。

わたしがバス会社の人なら、
ずっと置いてはおけないけれど、「もしかしたら、すごく持ち主にとって思い入れのあるお弁当箱かもしれない」と思ってそのまま捨ててしまうのも気が引ける。
かといってそのまま放置したら中身は腐ってしまう。
中身を捨てて(もしくはいただいて?そりゃないか。)洗って保管する?
いや、色んな落とし物が届けられる中で一お弁当箱さんにそこまでの待遇ができるのだろうか。

うーん。
もやもやと妄想が膨らみ、
どっちにしろバス会社の人がすごく困ってしまうだろうなあと思い電話してみることに。

案の定、わたしのお弁当箱は営業所に届けられていた。場所を聞いてみると会社からバスで10分程度のところにあるそう。
親切にも会社の最寄り駅から営業所行きのバスの時間も教えていただき、休憩時間で向かうことにした。

会社を抜けて、乗ったことのないバスに揺られバスに忘れたお弁当箱を取りにゆく。

ちょっと恥ずかしいような情けないような気持ちだ。

ああ、この運転手さんや他の乗客はわたしがバスに忘れたお弁当箱を取りに行くために乗っているなんて思わないだろうな。(だから何)

営業所に着くと、
受付すぐのところにわたしのよれよれのお弁当箱はスタンバイされていた。

「これ、取りに来ました」と告げ、無事にわたしの手元に戻ったお弁当箱。
バス会社の人も心なしか
「取りに来てくれてよかった。」と他の忘れ物よりも強く思ってくれたかもしれない。わたしだったらそう思う。

そのまま会社に戻り、
何事もなかったかのようにわたしの胃の中に消えたお弁当箱の中身。
いつもと変わらない、というか昨日食べた味、だった。(残り物しか入れていない)

財布やスマートフォンなど、
何がなんでも取り戻したい忘れ物もあれば、
ビニール傘やハンカチみたいに「しょうがないかな」と、取りに行く手間を惜しんで諦めてしまう忘れ物もある。

もし、帰りのバスで空のお弁当箱を忘れていたら。取りに行かなかったのかもしれない。ものすごく疲れていたり、疲れていなくても営業所がすごく遠い場所にあったりしたら「もういいや。」となっていただろう。

今回たまたま中身が入っていて、バス会社の人たちへ思いを馳せる心の余裕があっただけのことだけど。

ただ、こうして無事に生還したお弁当箱を目の当たりにすると
なんだかすごく大事なものにも思えてくるから不思議だ。

わたしのお弁当箱は運がいいのかもしれない。
使い続けたらいいことあるかな。なんて。

次、煮汁が漏れるまではご機嫌で使えそうだ。


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