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こがねい落語特選『新春 昇華爛漫の会』

会場:こがねい宮地ホール
住所:東京都小金井市本町6-14-45
アクセス:JR武蔵小金井駅南口駅前
鑑賞日:2024年1月28日

こがねい落語特選『新春 昇華爛漫の会』へ行ってきました。

出典:リーフレット

【演目】
立川小春志 『牛褒め』
古今亭文菊 『あくび指南』
柳家わさび 創作落語
柳亭市馬 『竹の水仙』


【牛褒め】

江戸の愛されキャラ、与太郎もの。

父親が与太郎を呼んで、ちょっと伯父さんのところへ行って、家を褒めておいで、と言う。
伯父さんは家を普請したばかり。
普段、見下されている息子だけれど、ここで上手に家を褒められたら、汚名返上もできようと、褒め言葉を教え込みます。
「家は総体檜づくりでございましょう。天井は薩摩の鶉杢目(うずらもくめ)でございますな。畳は備後の五分縁で、左右のかべは砂ずりで、庭は総体御影づくりでございましょう」
台所には立派な大黒柱があって、しかし目立つところに節穴が空いており、伯父さんはそのことを大層気にしているから、
「秋葉様の火伏せの御札を貼ってごらんなさい、穴が隠れて火の用心になる」と言えば、おこづかいをくれるだろうよ、と言われて、与太郎は伯父さんの家へ行きました。

記憶違いから、褒めたつもりが悪口になってしまいますが、伯父さんは怒ったりしません。
台所の大黒柱の節穴を隠すアイディアには、「おめえ、偉いなあ」と感心してくれます。

気分があがった与太郎は、今度は牛を褒めてやろうと牛小屋へ行き、「この穴(肛門)に秋葉様の火伏せの御札を貼ってごらんなさい」と言う。「への用心になります」


家を褒める時の口上がつらつらっと出て面白いです。
でも意味がわからないので、調べてみました。


天井は薩摩の鶉杢目(うずらもくめ)で

鶉杢とは尾久杉の別称で、木目がうずらの羽に似ているから、だそうです。

出典:一枚板比較


畳は備後の五分縁で

備後(現広島)のいぐさを使用した畳は、水が染み込まない上等品で、献上品として重宝されていました。
「五分縁」は、通常は約一寸(3.03cm)で仕上げるところ、五分の幅で仕上げた縁のこと。
縁が細いためにすっきりおしゃれに見えるそうです。


左右の壁は砂ずりで

砂を水で練った漆喰で塗った壁。
茶室や客間などに使用された高級品です。

出典:SUUMO公式Webサイト


庭は総体御影造りで
御影石で作った庭。

出典:KOMETRI.COM公式Webサイト


というわけで、伯父さんの家がいかに高級だったかがわかりました。


秋葉様の火伏せの御札
静岡県浜松市の秋葉神社。
中世~江戸時代には「秋葉権現」と言われ、全国から詣でる秋葉講で賑わっていました。
御祭神は火之迦具土大神(ヒノカグツチのオオミカミ)、すなわち伊邪那岐・伊邪那美の御子で、火の主祭神です。


出典:秋葉山本宮公式Webサイト



【あくび指南】


町内に「あくび指南所」ができました。
あくびなんてどうでもいいけれど、表にいた女の人が美人で色っぽい。
ひとりじゃなんだからと、イヤがる友だちを連れ立って、あくび指南所の門を叩きました。

あくびには春夏秋冬がありますが、夏が一番簡単だからと、師匠がお手本を見せてくれます。
隅田川に浮かぶもやった舟に、揺れるともなく揺れていると、退屈であくびが出る、という設定です。
セリフも長いし、揺れるともなく揺れるのも難しい、何度やってもうまくいかないので、脇で見ていた友だちが飽きて、「退屈でならねえ」とあくびをしました。

師匠「おや、お連れさんはご器用でいらっしゃる」


江戸時代、お稽古所がたくさんありました。
子どもの教育熱心だったのは江戸のお母さんも同じですし、年頃の娘に箏・三味線・日舞・茶の湯・などを習わせるのは、武家奉公に出すための必須条件でした。武家奉公は、花嫁修業の場であり、良縁のためのスペックなのです。うまくすれば玉の輿にのれるかも。
これらの師匠は男性が多かったのですが、男性向けのお稽古所の師匠は女性が多かったようです。
独身できれいな師匠のお稽古所は、男性のお弟子さんでいっぱいで、結婚するとさーっと減ってしまったとか。


【竹の水仙】

東海道中の、古く傾きかけた旅籠に、みずぼらしい身なりの客が泊まり、大酒を呑んでいます。
5日ばかりして支払いが心配になった女房にせっつかれた主が、催促に行くと、お金は持っていないと堂々と答えます。
そればかりか、お金の算段をするから、ノコギリを持って裏山へ行こうと物騒なことを言う。
客は切り出してきた竹で、水仙の蕾と筒を作ると、「水仙を筒に挿して、たっぷりと水を入れ、表に置いておけ」と言いました。
翌朝、日が差し込むと同時に蕾は開花し、あたりは芳香に包まれます。たまたま通りかかった大名行列、籠の中から見た殿様が家臣に「竹の水仙を買ってこい」と申し付けます。
家臣に値段を訊かれた旅籠の主が、2階の客にいくらで売るのか尋ねると、200両だと言う。
高すぎでは?
主がおそるおそる200両だと言うと、家臣はとんでもないと城へ帰りましたが、お殿様に「1000両でも足りない名人の彫刻だ」と叱られて、もう一度買いに来きました。
こうしてみすぼらしい客が伝説の名工・左甚五郎だったことを知るのでした。


彫刻の水仙が花開く、なんて幻想的なんでしょう。
ファンタジーだと思っていたら、実際に作った方がいるんです。
彫刻家の大竹亮峯さんです。

水仙が咲く動画

からくりは秘密だそうです。
水を抜くと、また元の蕾に戻るのだとか。

落語のオチでは、この水仙を作ると寿命が縮むと言っていましたが、大竹亮峯さんは長生きして頂いて、ぜひ人間国宝になって頂きたいです。


カバー写真:落語の演目が『時そば』だと思われた方、申し訳ありません。

<参考資料>

一枚板比較
https://solidwood.jp/solidwood/slab/type/woodgrain/uzuramoku

もとはし畳店webサイト
https://www.motohashi49.com/bingo5beri.html

SUUMO公式Webサイト
https://suumo.jp/article/oyakudachi/oyaku/remodel/rm_knowhow/sunakabe/

KOMETRI.COM公式Webサイト
https://www.komeri.com/contents/event/12_oniwa/japan_style.html

秋葉山本宮公式Webサイト
https://www.akihasanhongu.jp/shinpumamori/index.html

和楽Webサイト
https://intojapanwaraku.com/rock/culture-rock/132828/

大竹亮峯さんHP
https://japanese-sculpture.com/ryoho-otake/index.html#profile

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