ポプラ社 こどもの本編集部
新人作家・近藤瞳さんデビュー作が、新人離れしているワケ。 『まって! まって!』制作こぼれ話。
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新人作家・近藤瞳さんデビュー作が、新人離れしているワケ。 『まって! まって!』制作こぼれ話。

ポプラ社 こどもの本編集部

今春、新人絵本作家さんのデビュー作を担当させていただきました。

それがこちら👇

『まって! まって!』 作・絵/近藤瞳

【『まって! まって!』あらすじ】

風に飛ばされた帽子を追っていく女の子の目線から、やさしくて愛しい日常のひとコマを描いた作品。ごく少ない言葉だからこそ、女の子の心の機微が伝わってきます。主人公以外の周りの人たちの様子まで楽しい、絵を読むおもしろさがつまった、何度も開きたくなる絵本です。


近藤さんは、こんなひと👇

近藤瞳(こんどう ひとみ)
1988年生まれ。埼玉県出身、香川県在住。武蔵野美術大学空間演出デザイン学科卒業。キャラクターグッズデザイナーを経て、絵本ワークショップ「あとさき塾」で絵本を学ぶ。本書がデビュー作。

『まって! まって!』は、風に飛ばされた帽子を追いかけていく女の子が発する最小限の言葉(と、周りの人たちのざわめき)だけで綴られた、超シンプルな絵本。ちょっと中ページをご紹介。

文字のない絵本と違って、声に出して読み聞かせもできる。

物語を語り聞かせる絵本とも違って、絵を見るだけでも楽しめる。

さりげないのに、とってもスゴイ絵本なんです!


ストーリーの構成も、絵の技術も、新人離れした近藤瞳さん。そもそも絵本作家を志すキッカケって何だったんだろう? そういえば、聞いてませんでした!!!

ということで、この場を借りて、新人絵本作家・近藤瞳さんに直撃インタビュー!

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――単刀直入に……絵本作家になろうと思ったきっかけは何ですか?

大学2年生のときにクラフト・エヴィング商會の吉田(篤弘)さんの授業を受けたことがきっかけです。「架空の店を作る」という舞台美術の授業だったのですが、その授業がすごくおもしろくて、ストーリー性のある作品をつくりたいと思いました。

学生のころは、時間もアトリエもあったので、絵本のほかにインスタレーション作品もつくっていましたが、卒業後は時間も場所もお金もなくなり(笑)、絵本制作のみになりました。

絵本の制作を続けているうちに、出版してたくさんの人に読んでもらいたいと思うようになりました。

学生時代のインスタレーション作品。「こどものまち」というお話を創作し、その世界観が立体で表現されています。
手前の本には、「こどものまち」のお話が綴られています。近藤さんの原点がそこに⁉

――近藤さんは、東京・神保町にある東京堂書店さんでアルバイトをされていたころから、絵本の制作に取り組まれていたと聞きました。今作とはずいぶん違った作風だったとか…。どんな作品を描かれていたのですか?

当時はおとな向けの絵本をつくりたくて、少しもの寂しいというか、淡々とした詩的な絵本をつくっていました。ミリペンやGペンを使ってモノクロで描いたり、シルクスクリーンを使って色を入れたりしていました。

個人制作とは別に、大学の友人と共同制作でストーリー絵本もつくっていました。


当時制作した絵本の数々。全然タッチが違う! シックで詩情あふれる作品群です。
「えほんびより」というユニット名で活動していたころ制作された東京堂書店さんのしおり。現在でもお客さまに配布されています。

――『まって! まって!』では、編集協力として作品制作の最初からトムズボックスの土井章史さんが携わってくださいました。土井さんとのご縁は、どのようにはじまったのでしょう?

トムズボックスのお店には学生のころから通っていましたが、土井さんに絵本を見てもらう勇気はなくて……。

2014年ごろから絵本のコンペに出しはじめて、最終選考近くまで残ることはできても受賞には届きませんでした。「これは、絵本を一から知っていかねばならない!」と思い、2017年のトムズボックス夏のワークショップに参加したことがきっかけです。ワークショップを終えた後、そのまま次の年のあとさき塾を受講しました。

――そこから土井さんにラフを見ていただく日々がスタートしたわけですね! 『まって! まって!』は、最初は違うタイトルだったんですよね。

ラストの展開を最初に思いついたので、最初は「ちびちびさん」というタイトルでした。1年くらいかかって、一度文章をすべてなくしたときに、「まって! まって!」に変わりました。

こんなにラフを描いていたとは!!! 構図やキャラクターが少しずつ変化しています。

――最初のラフと現在の仕上がりでは、タイトルだけでなく、だいぶ変化がありそうですね。

文章も最初はふつうの絵本くらいあったのですが、途中で文章なしになり、その後「読み聞かせを助ける」くらいの文章になりました。それと、初期のラフは女の子についてくるのはお父さんとお母さんだけでしたが、最終的にだいぶにぎやかになりました! 冒頭とラストは最初のラフからほとんど変わっていません。道中に出てくる建物やキャラクターが変わっていった感じです。

――土井さんからのアドバイスで心に残っているものはありましたか?

最初からずっと言われていた「絵本の中に体ごと入る」です。絵本の世界に入りこめれば、自ずとキャラクターたちが動き出すんですよね。

――土井さんからはじめてラフを見せていただいたとき、いっしょに一場面を本描きした絵も見せていただきましたが、そのときから新人らしからぬ絵のうまさを感じました。イラストレーターとして活動されていた時期はあったのですか?

いいえ。でも絵を描くことは趣味なのでイラストをSNSに載せたりしていました。手紙を書くときは、そのイラストを印刷したポストカードを使ったり。それを見てくれた方にイラストを頼まれたりはしましたが、仕事として活動はしていませんでした。

コロナ禍で会えないお友だちのために描いたオリジナル作品。気の置けない友人とのゆったりした時間が感じられます。
ポストカードにした作品のうちの一枚。女の子とクマの子の朝のほのぼのとしたひとときが、色鉛筆とペンを組み合わせた独特のタッチで、やさしく描かれています。

――ご自身の中で、絵を描く際のこだわりはどこでしょう?

人物も動物もちょっとふくよかに描く、です。(笑)林明子さんの『こんとあき』に出てくるおばあちゃんの体型がすごく好きで、あんなふうに優しさとあたたかさがにじみ出る絵を描きたいなぁと思っています。

『まって! まって!』の制作風景。ゆったりとふくよかな人物には、ころっとして愛らしさがあります。

――これが絵本作家としての第一歩となりますが、これからどんな作品を描いていきたいですか?

子どもと、お父さんお母さんがいっしょに楽しめる絵本を描いていきたいです。うちの2歳の娘は、先にソファーやベッドにお気に入りのぬいぐるみや毛布を配置して居心地の良い空間をつくってから「えほんよんで」と絵本を持ってきます。彼女にとって絵本を読んでもらう時間はとても幸せで大切なものなんです。それは私たち親にとっても同じです。

きっとどの家庭でも、親子で絵本を読んでいる時間って幸せに満ちていると思います。そんな親子の素晴らしいひとときに、いろんな発見をしながら、驚いたり笑ったりしながら、いっしょに楽しく読める絵本を描いていきたいと思っています。

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やわらかななかにも、強い思い、創作に対するまっすぐな姿勢を感じる近藤さん。

そんな近藤さんが絵本への思いを熟成させてできあがった『まって! まって!』。隅から隅まで味わってください!!!

(文・井出香代)


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ポプラ社 こどもの本編集部
ポプラ社で「こどもの本」を作り届ける人たちです。日ごろ絵本を担当しているメンバーが、小さなチームを作り、記事を発信していきます。大人になったあなたも、久しぶりに、こどもの本にワクワクしてみませんか?