この記事はスクロール禁止⁉ めくると怖いビジュアルホラー『めくるな‼』~1話まるごと試し読み~
この夏、背筋も凍る新感覚ホラー短編集がリリースされました。
その名も『めくるな‼』(作・地図十行路 絵・誰でもない)。
特長は、怖い話のラストに最恐イラストが待ち受けていること。あまりの怖さに、企画会議ではポプラ社内が騒然となりました。
イラストの直前には警告として「めくるな‼」の表記がされており、ラストのページを「めくるのか」「めくらないのか」は読者にゆだねられています。
怖いと分かっていながらも、めくる手を止められない。めくるなと言われると、ついめくってしまう…。そんな人間の心理を試すような短編集です。
今回は刊行を記念して、『めくるな‼』の中の1話をまるごと掲載!
「めくる」かわりに「スクロール」しておたのしみください。
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『見られてる』
「だれかに見られてるんだ。ここ最近、いつもいつも。
家の中にいても、外に出ても……ずっと、だれかの視線を感じるんだ。
ああ、いや。〝だれか〟っていうか―〝なにか〟 かな。
なんて言ったらいいか、わからない。
でも、とにかく人間じゃない。人間のはずがないんだ。
だって、そいつ。『人間だったら、こんなところにいるはずがない』ってとこから、ぼくのことを見てることが、よくあるからさ。
さいしょに気づいたとき、そいつは、駐車場にとまってるトラックの下にいた。
よく晴れた日だったから、そのぶんトラックの下のかげは暗くて。
そいつの顔とか体とかは、見えなかった。
ただ、やけにぎょろっとした目だけが見えて、そこにだれかいるってわかったんだ。
今思えば……そのとき目を合わせたのが、いけなかったのかもしれない。
あのとき、あいつに気づかずに通りすぎてれば……。
そしたら、こんなふうに付きまとわれることも、なかったのかも。
でも、あのときは、そんなこと思いもしなくて。
なんか、気味悪い人がいるなあ。
あの人、あんなとこでなにしてんだろ?
まあ、変な人と関わらないほうがいいよなあ。
……なんてことを思いながら、何気ない顔して、ちょっと早足でその場をはなれたんだ。
でも、それで終わりじゃなかった。
そのことに気づいたのは、だれもいない家に帰ってからだった。
たしか、おやつに丸い一口チーズがあったよな……って思い出して、冷蔵庫に近づいて。
冷蔵庫のとびらを開けようとしたとき、視線を感じた。
見られてる――。
なんでかそれが、はっきりわかった。
ぼくは、部屋の中をあちこち見回して。
ふと、冷蔵庫の横に目をやって……ギクッとした。
冷蔵庫とかべの間にある、五センチくらいのすき間。
そ こ に 、 あ い つ が い た ん だ。
トラックの下にいたのと同じ、ぎょろっとした目のやつが、じっとこっちを見てたんだ。
もちろん、大きさはちがってた。トラックの下にいたのは、人間と同じ大きさに見えたけど、こいつはもっと小さい。幅五センチのすき間に入れるくらいなんだから。
ぼくは、おやつのチーズをあきらめて、急いで冷蔵庫からはなれて台所を出た。
あいつが……家の中まで付いてきた。
そうとわかって、どうしようって気持ちでいっぱいだった。
あれからずっと――。
いつもいつも、あいつはいろんな場所からぼくを見てる。
学校のつくえの中、ロッカーの荷物のすき間、かばんの中、うわばきの中、図書室の本と本のすき間、理科の実験で使った顕微鏡の中、通りすがりの空き家の縁の下、道端の小さな神社のおやしろの中、少しだけフタが開いた浴そうの中……。
見かけるたびに、そいつの大きさはちがっているから、いつもまったく同じやつなのかはわからない。
もしかしたら、『同じ種類で大きさのちがうやつ』が、そこらじゅうに、いくつもいくつもいるのかも。
――ここに来るとちゅうもさ。
コンビニによって、ボトル缶のレモンティーを買って飲んだんだけど。
半分くらい飲んだところで、急に、缶がずしっと重たくなって。
缶の口をのぞいたら、あのぎょろっとした目が、ちゃぷちゃぷゆれるレモンティーの中にしずんでたんだ。
……あ!
まただ。また、あいつの視線を感じる。
今も、すぐ近くにいる! どこからか、ぼくのことを見てるんだ!
ねえ。ちょっと、さがしてみてくれよ。まわりにある、いろんな穴とかすき間とか。
ぎょろっと大きなふたつの目が、どこかにひそんでるはずなん―……。
……ん?
……おい、ちょっと!
なに、笑いこらえてるんだよ! さてはきみ、これっぽっちも信じてないな!!?
まじめに聞いてくれよ。
こっちはじょうだんで言ってるわけでも、怪談話を聞かせたいわけでもないんだぞ。
真剣になやんでるから、こうやって、信頼してる友だちのきみに
相談して―。
だから、笑うなってば!
…………ふうー。
……もう。なんか、気がぬけちゃったな。
きみがあんまり笑うもんだから、ぼくも、だんだんバカバカしくなってきちゃったよ。
やっぱり、ぜんぶ気のせいだったのかな」
ぼくがそう言うと、友だちは「あたりまえだろ」とまた笑った。
「気のせい気のせい。どうせ、こわいマンガかなんか読みすぎたんだろ。
むだにビクビクしてるから、なんでもない暗がりに、おかしなものがひそんでるような気になってくるんだよ。
だいじょうぶだって。落ち着いてたしかめてみりゃ、なにもいないことがわかるから。
ぎょろっと大きなふたつの目、だっけ?
そいつがなにかの見まちがいだって、はっきりするよ。
――にしても、おまえってば、ほんっとこわがりだなあ」
この先は…スクロールするな‼
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【エピローグ】
いくら「気のせい」……と思いたくても。
のぞき見てくる”なにか”は、それをゆるしてくれないみたいだね。
そして、なによりやっかいなのは……。
のぞき見してくるその”なにか”の、正体も目的もわからないってことかもしれない。
もし、こんなやつに、わけもわからず付きまとわれてしまったら――。
あなたなら、ねえ、どうする?
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最後までスクロールしてしまったあなた。
後悔していますか?
それとも、たのしんでいただけたでしょうか?
このようなお話を10話収録しているのですが、最後の1話の絵はこわすぎるので袋とじにしました。ぜひ現物でご確認ください。
「いけない」といわれるほどやりたくなるのが人間の心理。
この夏はぜひ『めくるな‼』で涼しい夏を!
★紹介した本はこちら!
※ここから先に、本には載せていない怖すぎる絵があります。
こんどこそ絶対にスクロールしないでください。