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【エッセイ】母の肩揉みしすぎて指が曲がる

物心ついたころから、私は母のマッサージを毎日のようにするのが日課だった。
小さいころから甘えん坊で、母が大好きだった私は、どんな時でも、目の前に母の背中があれば揉みつづけた。

朝起きたとき、洗濯物を干したあと、昼寝のあと、お風呂の中で、夜寝る前のおやつを食べながら、など。

母のほうから、マッサージしてほしいと言われる前に、私は母の肩を揉みたいと思うけどほど、私は母を愛していた。
なぁんて素晴らしいこどもなんだろう。

しかし、母はだんだんと調子に乗ってきた。
私が小学生の高学年になると、夕方のお昼寝から何が何でも起きてこなくなった。
17時になると、目覚まし時計が鳴り、母親はうつ伏状態になり、私に揉まれる体勢になってスタンバイしているのだ。

私が中学生になると、指の力加減や押し込む角度、スピードまで事細く注文をつけてきやがった。思春期だった私は、内心面倒臭いなコイツ、と思いつつ、普段家族のために、家事育児をやってくださっている母のために「良い子」でありたかったので、黙々と身体全身揉みまくった。

来る日も来る日も母の背中を押しまくった。
そして、いつのまにか、私の両指はグニャッと思い切り反対方向に反るほど曲がるようになってしまった。

母はそれを見て「勲章だね、すごいすごい!」
と感動していた。少しは私の曲がった指の心配をできないんだろうか、、この母親は!!この頃から、母の凝りやすい背中を憎むようになっていた、、、

高校生になって、いよいよ今まで奴隷の如く
肩を揉まされ続けたことにイラだつようになっていった。

大学で上京した私は、長期休みに実家に帰省すると、1番最初に一軒家全体の大掃除が待っている。そして夜はマッサージをしてほしいといってグルリと向けてくる厚かましい母の背中が待っている。なんて憎らしい後ろ姿。

クラスの友達に、「私さー実家帰省すると、いつも倍つかれて帰ってくるんだよね。めちゃくちゃ働くんだよ」と話すと、「えー!スパルタじゃん、、、うちなんて実家帰ったらなんもしないよ。ずっと動かないし。」と言われ心底友達のいえが羨ましくなった。

私が今まで母親にやってきたことは、ただ子どもの立場や子ども心を利用されたものだったのだろうか?

社会人になってから、なかなか帰省できず、親に会えない日が続いた。久々に帰った時には親孝行がしたいなと、相変わらず優しい心の私。そんな時、母からのラインが届いた。
「帰ってきたら部屋の大そうじが待ってるよ〜ん。」私は悲しみと、怒りと、諦めのトリプルぜつぼう感に襲われた。なんなんだうちの母は!子どもに甘えてるだけじゃないか、、、

とはいえ、やっぱり年に数日間しか今は会えないので、文句を言いつつ、いまだに帰省するたび、家中の大掃除や母のマッサージはやらせて頂いている。

さて、数日前、なんとなく私が暇をしていたときに描いた、ガジュマルの絵を母にラインで送った。なかなか、頑張って描いたのでどんな感想が貰えるかドキドキしていたが、
既読がつくとすぐに、「あぁ〜、誰か母の肩をもみもみしてぇ」のメッセージとぐだぐたスタンプが来た時は、バゴーン!と噴火しそうなほどの怒りを抑え、スンとした態度ですぐにでも整体に行くことをお勧めしてあげたのである。



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