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【エッセイ】飛行機の中で鼓膜が爆発?!

去年の年末年始の話だ。

うちの母はものすごく掃除に対する意識が変だ。美的感覚がおかしい。

母は結構神経質で、家族に「部屋の隅まできちんと掃除機をかけて」といったり、ルンバがくまなく床のゴミを拾えるように、あらゆるものを床からどけてテーブルの上にどかしたりする。絨毯は必ず一定方向にきっちりと掃除機をかける。

仏間に父の仕事道具や私物が広がっていると
ものすごい剣幕で「これ!ここ片付けてよ!自分の部屋じゃないんだからっ!邪魔ッ!」と言ってすごくイラついている。
また、階段に家族の洗濯物が畳んで置いてあるのだが、それを持たずに二階へ上がろうとすると、「なんで目の前に洗濯物あるのに持ってかないの?!」とこれまたキレられる。まぁこの感じはどこの家庭にも多少はあるだろうか。

ここまで聞くとなんだかうちの母は綺麗好きな人なんだなと印象を持たれるだろう。しかし、母は変なのだ。なぜかとゆうと、母のベッドの周りはものすごく汚いのだ。着ていない年代物の服やタオル、昔から続けているクロスワードパズルの雑誌などが山積みになっている。
逆に父のベッドの周りには何もなく整頓されているのに。

私が寝室の掃除をかけるときにみるに見かねて、「お母さん、ここ邪魔で掃除かけれないよ。ちょっと片付けてよ。」というと、「片付けたくたって、仕事が忙しいのよ!」と逆ギレされる。因みに母の中ではキレてる認識はないらしい。言い方の問題だと思うが、言われた方がそう感じる話し方は治すべきではないだろうか、、。
掃除中、積み重なった雑誌がザザーっとなだれてきた時は非常に腹ただしい気持ちに襲われた。自分だって掃除できてないのに、なんで人には厳しいんだろう、、、。

さて、去年そんな調子の我が家に冬休みに帰省したとき、私は帰ってからすぐに家中の大掃除が待っていた。ハウスダストアレルギーの私にとってこれほど辛いことはない。

夜はひいおばあちゃんの代から譲り受けた、中綿が板のようにが固くなった布団で、ほんとうは寝たくないのに、自分で敷いて寝た。
するとすぐに鼻水がツーと垂れ始める。そのうちホコリやダニのアレルギー症状で、鼻で呼吸ができないくらい鼻が詰まってしまうのが毎年お決まりのナイトルーティンだ。

我が家は母のこだわりで細かく掃除されてる箇所はあるものの、なんていったって家で使ってるあらゆるものが古いのだ。布団もカーテンもクローゼットもダニと、カビの温床である。

私はアレルギーが辛いので布団を変えて欲しいと懇願するが、子どもの健康被害より、勿体無い精神が上回るらしい、、、。
なんだか、描いてたら悲しくなってくる。ダニ計測器なんてものがあったら、母にプレゼントしてあげたいくらいだ。数値化してヤバさが視覚的に理解できれば心変わりするかも知れない。

私は年末年始の一週間、毎日鼻水を垂れ流し、鼻をかみまくり、箱ティッシュを2箱消費した。もうかんでもかんでも垂れてくるので、ティッシュで鼻栓をしてその上からマスクをして過ごしていたが、ダニ育成布団で寝てるんだからまるで無駄だった。

ついに東京に帰る当日。私は相変わらず鼻水がダラダラのまま、飛行機に搭乗した。今まで何度となく飛行機には乗ってきたが奇跡的に大きなトラブルに見舞われたことはなかった。だから、私は鼻水なんて垂れ流しておけばいいやぐらいに軽く考えていた。

しかし、飛行機が離陸してまもなく、ピキ、ピキと私の両耳から音が鳴り始めた。
少し痛いなと思っていたら、飛行機の上昇に合わせてどんどん痛みが増していく。
「うっ、、、かなり痛い」キューッと耳が締め付けられていく。もうここまで行ったら止まるだろ、という限界の締め付け感に達したにも関わらず、まだ耳の圧力は止まらない。

私はあまりの痛さに身体をくねらせ、耳に手を当てた。このあたりで斜め後ろの男性が私の動きに気づきこちらをチラ見している。

キューーーーーーー
痛い痛い痛い、、、!
キュキュキューーー
死んじゃう!鼓膜破れる!
バキバキ!!!!!!!!
あぁぁぁぁぁーーーー!!

私は悶絶して涙をポロポロと流した。
右耳の奥で何かが爆発した。「もう、私の耳は音が聞こえないかも知れない。」そう悟ってしまった。
すると続けてめまいと吐き気に襲われた。もう大人なのに、あまりの辛さと飛行機という密室で逃げられない不安で大汗をかきながら、震える手でCAさんに助けを求めた。
CAさんに優しく抱えられながらお手洗いに逃げ込み、10分ほどうずくまっていると、なんとか真っ直ぐ立てるほどには落ち着いた。

私は東京について翌日耳鼻科に行った。カメラで耳の中を見てもらうと、鼓膜の奥が内出血で真っ黒になっていた。どうやら、鼓膜自体は破裂しておらず聴力には影響がないことがわかり、心の底からホッとした。
残念ながらおばあちゃんからもらったお年玉が、初診料と検査代、薬代でなくなってしまった。トホホすぎる。

耳鼻科の、先生には「お母さんに部屋を掃除してもらいましょう」と言われた。先生、私だって言い続けてるんだよ。
まぁお医者さんに言われたら母もさすがに反省するだろう。私まで落ち込んでしまったが。あとで母に全てを報告すると、私にまた実家に帰ってきて欲しいようで、ようやく何十年も使い古した布団を処分してくれた。

遅いよ、遅すぎるよ、お母さん、、、。

これからは、母の重たい腰を動かすには仮病だって使おうじゃないかと思う。

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