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【PubMedで翻訳練習:Covid-19編】Bの巻: blood-brain barrier(血液脳関門)

*PubMedでアルファベット順(A-Z)のキーワードに「covid19」を追加して検索→論文を1つ選びアブストラクトを和訳。(詳しくは、こちらのnoteをどうぞ)

●本日のアルファベット:B (blood-brain barrier) 血液脳関門 + 「covid19」

●本日の論文:『新型コロナウイルス (SARS-CoV-2)のスパイクタンパク質によるヒト血液脳関門の2D静的・3Dマイクロ流体 in vitroモデルにおける関門機能の変性』
Buzhdygan TP, DeOre BJ, Baldwin-Leclair A, et al. "The SARS-CoV-2 spike protein alters barrier function in 2D static and 3D microfluidic in vitro models of the human blood-brain barrier." Preprint. bioRxiv. 2020;2020.06.15. PMID: 32587958

●アブストラクト和訳

世界中の研究者が、新型コロナウイルス (SARS-CoV-2)を理解しようと注力する中、ウイルスが脳血管系を含む複数の器官の血管系に重篤な影響を与えることが分かってきた。中枢神経系への影響として、神経症状(頭痛、吐き気、目まい)、致死的な微小血栓の形成や、まれに脳炎などがみられる。しかし、どのようにウイルスがこれらの軽度から重度の神経症状を引き起こし、どのように脳血管系が影響を受けるのかは、いまだ不明である。そこで、本論文で提示した結果により、SARS-CoV-2スパイクタンパク質が、ヒトの初代脳微小血管内皮細胞(hBMVEC)に、有害な転帰を引き起こすかどうかを検討した。

まず初めに、死後の脳組織を用いて、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2 : SARS-CoV-2スパイクタンパク質の結合標的として知られる)が前頭葉の様々な血管内腔に発現していることを示した。更に、ACE2は細胞培養下のhBMVEC中でも検出された。細胞生存率の解析により、S1、S2、RBDのみを含むS1の切断型、のいずれも、48時間以内の暴露で、hBMVECの生存率に影響を及ぼさなかった。しかし、ウイルスのスパイクタンパク質を血液脳関門の本質的な特徴を再現したモデルシステムに導入したところ、使用したスパイクタンパク質のサブユニットに依存して、関門の破壊が様々な程度でみられた。

我々の発見のカギは、ヒト血液脳関門の3Dマイクロ流体モデルにおいて、S1が関門の完全性の喪失を促進することを示したことである。本中枢神経系インターフェースにおいて、ヒトの生理的状態に最も近いプラットフォームである。その後の解析でもまた、SARS-CoV-2スパイクタンパク質が、血液脳関門の機能を変性させる要因であるかもしれない、脳内皮細胞での炎症性反応を惹起することが示された。総じて、これらの結果は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質が脳内皮細胞に及ぼし得る直接的な影響を示す最初のものであり、新型コロナウイルス感染症患者にみられる神経症状に対する有望な根拠を提示している。

●PMID: 32587958

●検索日:2020年7月12日

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●感想・難しかった点

基礎研究の論文はいつも、専門用語の訳や、内容理解に大変苦労します(;^_^。しかも、現在進行形でばんばん研究が進められている分野となるとなおさらですね。(しかし、新型コロナウイルス、人間の防御機構の最後の砦みたいな、血液脳関門にまで影響を与えるなんて…)

ですが、こういった研究がないと医学の進展もないわけで、今世界中の研究者たちが、何とか新型コロナウイルスに対する治療法を見つけ出そうと、急ピッチで様々なアプローチから研究を進めていることに、心から感謝いたします。前向きに捉えると、これほど世界中の思いが一つの方向に向いている時期というのもないので、打開策が出てこないわけがない、と信じています。


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