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「芝居の準備方法」を学ぶ。俳優の仕事とは何か?

俳優目線の台本の読み方、そして演技プランを作るための準備作業の具体的な内容をお伝えする前に、まずは、俳優という仕事とは何か? という大前提を共有しておきたいと思います。自分の仕事は何か、という事をきちんと言語化しておかないと次のステップに進みようがないし、俳優という仕事の定義を共有しておいた方が、台本の読み方や準備の方法論、思考術に対する解像度が上がると考えているからです。ここで書く俳優という仕事の定義は、あくまで僕がそう信じているものなので、何か違うな、しっくりこないなと感じたのであれば、それはそれで構いません。僕の演技論、方法論、思考術はこの記事で記述していることが前提になっていると思って頂ければ結構です。


1、俳優の仕事とは何か?

俳優という職業は、役が決まって、台本を貰い、準備をして、現場で演技をする。というのが主な仕事の流れです。その中で、準備という作業が全体の8割を占めています。俳優の仕事は、準備をする事、と言ってもいいくらい、準備という作業が大切な仕事です。
では、その準備作業とは何か。めちゃくちゃ乱暴に言えば、台詞を覚えて、役作りをする。です。そんなことは誰にだってわかります。が、一口に役作りをすると言っても、その作業内容は膨大で複雑、専門的な知識と技術が不可欠です。このnoteでは、その作業内容を具体的に提示し、台本の読み解き方がわかるようになることを目標に「芝居のやり方」ではなく「芝居の準備方法」が学べる場にしたいと考えています。

2、俳優が芝居を通じて伝えなければならないこと

俳優が、芝居を通じて観客もしくは視聴者に伝えなければならないことは何か?
それは“その時、その役にどんな考えが湧き起こっているか”です。
イギリスの俳優、マイケル・ケインも著書「映画の演技」(矢崎滋・訳、劇書房)で、役の考えとは、湧き起こるものだと述べています。そして“その時、その役にどんな考えが湧きおこっているか”という事を芝居で表現する為に最も大事な事のひとつは、相手の台詞を聞き、そして反応する事だと。一見簡単に見えるのですが、相手の台詞を聞き、その反応、リアクションを、役として、あたかも初めて聞いたかのように、且つ、観客もしくは視聴者にちゃんと分かるような新鮮で刺激的な反応をするには、キチンとした技術と知識が必要です。
では“相手の台詞を聞き、そして反応する事”を、役としてする為には、どのように本を読み、どのように役作りをし、どのように表現すればいいのか?

3、そもそも台本とは何か?

台本の読み方。の前に、そもそも台本とは何か? ということにも触れておきたいです。
映像では脚本とも言い、舞台だと戯曲、アニメや声の現場ではシナリオと呼ばれたりもします。様々な呼び方がありますが、意味する所は一緒です。さて、台本とは何か? ネットで調べると『演劇・映画・放送などで、演出のもととなる、せりふト書きなどを書いた本。脚本』と書かれています。つまり……どういう事?
台本とは、作品を作るための設計図です。
映像の台本を例に挙げると、作品の設計図である台本は、スタッフのクレジットから始まり、それぞれのスタッフの所属、連絡先、それからキャストの順に印刷されており、この作品において、誰が、どの役割を担当しているのかが明記されています。それから本編となるお芝居が書かれています。
俳優を含め、それぞれのスタッフが自分の役割を理解し、準備する為の設計図が台本ですから、俳優もただ書かれている事を読むのではなく、俳優目線で、設計図として台本を読まなければなりません。役を演じる為に必要な情報を読み取り、シーンに描かれている事を芝居でどう表現するのか、どんな演技プランを作る必要があるのかを確認するために、本を読まなければなりません。
台本を読むって聞くと、文字を読み上げる事をイメージする人が多いのですが、そうではなくて書かれている文字から、画を思い浮かべる事が大事。是非、画を想像しながら、読んでみて下さい。

4、台本を貰って現場に行くまでにやらなければならないこと

当たり前のことですが、俳優は現場に行く時には“ホンが読めている=準備ができている”状態でなくてはなりません。台本を貰って、現場に行くまでにやらなくてはならない準備とは何か? 繰り返しになりますが、俳優が芝居で伝えなければならない事、表現しなければならない事は“その時、その役にどんな考えが湧き起こっているか”です。
“その時、その役にどんな考えが湧きおこっているか”を体現するための準備作業を明確に言語化すると【脚本の意図を読み取り、自分で役作り、構成、選択をする】と言う作業であると言えます。もちろんこれがすべてではありません。貰った台本が、古典だったり、時代劇だったりすると、その時代の出来事や文化、所作なども勉強して準備する必要があります。またこれは声優の分野になりますが、アニメの場合だと、そのアニメの世界観、アニメ特融の設定を理解しておく必要があります。またアニメの場合だと、演じる役が人じゃない可能性もあります。
【脚本の意図を読み取り、自分で役作り、構成、選択をする】というのは、最低限必要な準備である。と解釈しておいてください。そしてこの準備という作業が、俳優の仕事の大半を占めています。

5、ドラマとは何か?

では、実際に脚本の意図を読み解き、役作りをする為にはどうすればいいのか? それにはまず『ドラマとは何か?』という事を理解しておく必要があります。
ドラマとは、葛藤である。この記事を読んでいるあなたが俳優であるならば、どこかで一度は聞いたことのあるフレーズだと思います。では、葛藤とは何か? ネットで調べると
1.人と人が互いに譲らず対立し、いがみ合うこと。
2.心の中に相反する動機、欲求、感情などが存在し、そのいずれをとるか迷うこと。
と、あります。つまり、ドラマは対立である。という事が分かります。そして、その対立こそが、作品全体、もしくはシーンで描きたい事、見せたい事です。それを芝居で表現するのが、俳優の仕事です。
俳優は、台本に書かれているドラマを表現する為に【脚本の意図を読み取り、自分で役作り、構成、選択をする】という準備をします。

では、『ドラマとは、葛藤である』という前提を踏まえて、脚本を読み解き、役作りをする為に何をすればいいのか? 演技プランを作るために本から、どんな情報を読み取ればいいのか? この記事で記述した事を前提に、次の記事で【脚本の意図を読み取り、自分で役作り、構成、選択をする】という作業内容を具体的に提示していきます。



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