コンセンサス調査&分析 2021年1月号

Summary
コンセンサスは「不況」から「回復」へシフトしている最中とみられるが、実体経済はまだ「不況」終盤であり、株価は既に「回復」を全て織り込んで次を織り込もうとしているように見える。株価はコンセンサスとの乖離を埋めるべく、短期的には調整の可能性が高いと予想。

目次
①1月アンケート結果
②現在の景気循環ステージの考査
③今後のコンセンサスの行方
④株価方向の予想(方向性のみです)
⑤データソース

画像1

画像2

①1月アンケート結果 
 まずはなぜこの2つのアンケートを取ったのかという背景を申し上げます。景気循環サイクルは、どのステージにいるかを認識することによって長期的な投資スタンス(少なくとも1年以上)が大きく変わるからです。そして投資判断材料は、景気循環サイクルの認識の裏付けもしくはシグナルになるからです。今後もこれを軸にお聞きして参りますのでよろしくお願い致します。
 景気循環サイクルの結果は、見てわかる通りかなり分散しています。この状態だと、はっきりしたコンセンサスはまだ形成されていないと言って良いでしょう。しかし、上位で「回復」が33.6%、その次に「後退」が28.7%と、全く異なる2つのステージが上位なのが非常に興味深いです。
 投資判断材料に関しては、過半数の52%が「Money Supply」、そして「Interest rate」が24.7%となっています。この結果が意味することは、「過剰流動性相場の気にしている投資家が多い」もしくは「回復局面を債券市場が織り込むかどうか気にしている投資家が多い」ということになるでしょう。今の相場は過剰流動性相場であり、過剰流動性相場ではファンダメンタルズ要因より需給要因が株価のswing factorとしてより強く作用する傾向があることので、当然な結果なのかもしれません。
 二つの結果を合わせてみても、やはりコンセンサスは形成されてないようにみられます。仮に「回復」ステージが本当のコンセンサスであれば、GDP寄与度の高いConsumptionがもう少し上位になったはずだと考えます。


②現在の景気循環ステージの考査
 次に私が考える現在の景気循環ステージを考査していきます。結論から申し上げますと、私の中で今は「不況」の終盤で「回復」のシグナルが出てきたばかりのステージだと考えます。理由は下記のとおりです。
 「不況」の明白なエビデンスはGDP成長率の急落です。日本のケースを見てみると、2020年Q2(4-6月期)の実質GDP成長率がyoy-8.3%(Q3、2次速報基準)と急落したことで「不況」の条件をクリアしました。中身を見ても、家賃を除く民間消費が同-10.4%、民間設備投資が同-5.7%だった上に失業率の急増と企業収益の急落も伴ったので「不況」の条件が揃っていますね。
 「回復」のシグナルはまだ出てきたばかりではございますが、実質GDP成長率がQ3(7-9月期)でyoy+5.3%と急回復した点です。しかし、Q4(10-12月期)以降にコロナ禍がむしろ悪化したことや今後ワクチンの普及タイミングなどを考慮すると、本格的に「回復」ステージに突入するのは2021年Q2以降になる可能性が高いと見ています。余談ですが、一般的に「不況」ステージは1~2年くらいと割と短いと言われています。今回もそれくらいの長さになりそうなのは偶然ではないでしょう。
 ざっくりとした今回サイクルのおさらいですが、2009年リーマンショック後から「回復」が始まり、2018年3月にかけて「回復」と「好況」の期間があったと考えます。その後始まったFedのテーパリングと米中貿易摩擦を引き金に「後退」が始まり、2020年1月まで続いたと考えられます。「後退」は一般的にはインフレ上昇と金利上昇による民間消費の衰退が引き金になる言われていますが、今回はそれらが無かったことが特徴で、トランプ政権による政策らによって本格化したという点が興味深いです。また「不況」に関しても、典型的な形ではなくpandemicによっていきなり始まった点が特徴です。まあ結果が一緒なので良しとしましょう。

画像3

③今後のコンセンサスの行方
 アンケート結果がかなり分散しているため、コンセンサスはまだ形成されていないと申し上げました。しかし、2020年ほとんどの間の実体経済が「不況」だったことを考慮すると、現在が「回復」という答えが3割もあるというのはコンセンサスは既にシフトし始めたということなのかもしれません。私は正確にはまだ「不況」だと見ていますが、2021年Q2以降から「回復」ステージに本格突入すると見ているので、方向性はこっちになってくるでしょう。現段階ではコロナの第3波が凄まじく、これから悪化する可能性があることから「後退」や「不況」のど真ん中だと感じる方が多いのかもしれまっせん。もちろん本当にこれ以上に悪化して本格的な「回復」ステージが先延ばしになる可能性もございますが。。。

④株価方向の予想
 結論から申し上げますと、短期的には株価は先を織り込みすぎでコンセンサスとの乖離を一度埋めるべく、調整する可能性があると考えます。
 株価は常に経済の先を見ているので、経済のコンセンサスが「不況」から「回復」へ向かうということは、株価は「回復」から「好況」を織り込み始めると見ることができます。しかし、実体経済が本当に「回復」ステージへ向かうまでは時間がかかりそうですので、短期的にはその乖離を埋めるための調整が発生するかもしれないと予想しているのです。
 ですが、これから本当に新たな景気循環サイクルが始まるのであれば、長期的にはまた上がっていくでしょう。今は前代未聞の過剰流動性相場ですし、2020年4月から強気相場が始まったとすれば、調整後はワクチン期待という楽観の中で相場が成熟していくステージなのかもしれません。
 いずれにせよ、株の一番おいしいはもう過ぎたと考えた方がよさそうです。「不況」ステージは、見極めが一番難しく上昇の期待値が一番高いと言われていますが、残念ながらそのステージは4月から既に始まってしまっているからです。また次のチャンスが来るまで確実かつ緻密に計画を立てていきたいものです。

 今後も簡単な分析ではございますが、このように皆様の意見をお聞きし、コンセンサス動向をお伝えできればと存じます。よろしくお願い申し上げます。

⑤データソース
アンケート オリジナル
統計 内閣府GD Freak!










この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?