「嫌だ」が聞きたい
「嫌だ」
この一言がどうしても言えなくて、
これまで何度も自分を粗末に扱った。
1人で行くの嫌だ
あの人の悪口聞くの嫌だ
今日は眠いから嫌だ
あなたのこと好きでいたいから嫌だ
言えなかった嫌だはたくさんある。
嫌な気持ちを押し殺して我慢するのって本当に嫌だから、向かい合った相手に嫌な思いをさせることが嫌だった。
だから嫌だが言えなくて。
言葉あそびになってきて若干訳がわからないけど、本当にそうで。
嫌だと言われたくない、だから言いたくない。
てやつで。
ドSかドM思考に転換してくれない限り、
決して喜ばせる言葉にはならないと思う。
だから口にするにはそれ相当の理由と覚悟がいるような気がしていて。
この言葉に頼ることはあまりなかった。
今思えば最近の私は、全く違う。
かわいい女の子に対してはドMだし、弱々しい男子にはドSだから…条件付きで「嫌だ」を喜ばしく受け取るなぁ〜…なんてこれを書きながら気づく。
ちょっとこれ言い出したらややこしくなるのでSMは抜きにして話を進める。
こないだ見た映画。
主人公が憧れの女の子に「嫌だ」と言った。
憧れの子に。
一言だけ言い放った、「嫌だ」
例えば「好きです付き合ってください」「ごめんなさい…」からの「嫌だ」だとしたら説明がつくんだけど、それじゃない。
全然違ってる。
「あの話、聞かせてよ」と傷心中の憧れの子が言うのに対し、「嫌だ」と立ち去る。
私なら尻尾振って駆け寄るだろう。し、傷心中な事をいいことに頭を撫で撫でしながら鼻の下伸ばして彼女が聞きたがったことを語るだろう。
が、主人公は立ち去った。
嫌な事情を説明する時間もある。
相手を悲しい気持ちにさせないためのフォローだっていくらでもできそう。
なのに、四の五の言わずに立ち去った。
なぜだろう私はそのシーンにとてもグッときた。主人公とキスしたくなった。
どちらかの言えばヒロインの方が好みだったのに、この「嫌だ」で逆転した。
嫌なもんは、嫌なんだ、と。
当たり前のことを言っていて恥ずかしいけど、本当に頷けた。
こんな当たり前のことすら自分は言えずにいたのか、と思った。
そしてもうひとつ感じたのは、
嫌だと言う方も、そんなことを言うのは嫌なんだ、ということ。
これも当たり前のことなのに、すっかり忘れていて。エゴの塊だと、すっかり思い込んでいた。
そしてその嫌だを言うとき、ものすごくセクシーなんだ。
映画のヒロインは「なんでどうして」と聞きもしない。
理由はいくらでも想像できた。
想像することが大切なんだろうなぁ、とふと思った。
相手に納得してもらうことが必要だとついつい説明しすぎる私は、ちょっとくらい相手を信じて想像を委ねてもいいんじゃないかなぁ。
「嫌だ」に覚悟が必要だというのは、変わらない。
相手を信じる覚悟、を。
「嫌だ」と言える人は、魅力的でセクシーだ。
どうでもいいなんでもいいが口癖の私の「嫌だ」はどこかにあるはず。
大切な人にこそ信じて「嫌だ」と伝えよう。
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