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理想の男性はビスコッティが教えてくれる    【エッセイ:カフェ物語4】

ここは発酵食とスープをメインにした
『Soup Cafe Pono Pono(スープカフェ ポノポノ)』

体の中から元気になってもらいたいと
スイーツも 自然の恵みをギュッと詰め込んだ
体に優しいものばかり

何度も試行錯誤を繰り返し 本気で作ったスイーツたちは
どれも お店で焼いた自信作なのに
どうしてもネーミングで遊びたくなってしまいます


7種類あるビスコッティは
ザクザクと硬い食感が特徴的なイタリアのお菓子
このお菓子のネーミングがまったくお客様泣かせなのです

イズミール地方の小さな村  (いいちじく+くるみ)
『イズミール地方に住むおばあちゃんちの庭は
 優しい陽射しと甘いいちじくの香りで一杯』

気まぐれジンジャーの悪戯  (紅茶+ジンジャー)
『上品な紅茶の香りに紛れて 
 時折やってくるジンジャーの刺激  
 まったく、イタズラ好きなんだから!』

           などなど

 商品名 (材料)
『サブタイトル』

どうしても 小恥ずかしい商品名を付けたくなってしまいます



理想の男性はビスコッティが教えてくれる


ママ友とのランチは
食後のデザートまでいただくのが当然
お昼の『弾丸トーク』と
別腹を生クリームで満たす『悪魔の爆食』を
難なくこなす主婦とは別に

男性のお客様は
ランチの時間帯に限らずカフェの時間帯でも
甘さ控えめな焼き菓子を注文することが多く
優しい甘さのビスコッティは男性客にも好まれます

そんなビスコッティの注文の仕方に
女子大学生スタッフは一喜一憂しているのです


サークル帰りなのか
真っ黒に日焼けした男子大学生のグループが
仲間の一人にニヤニヤと嬉しそうな視線を向けています
「これ 読めよ」
「お前 読めや」
「いやや お前 注文せえや」
「えぇーっ、、 き き 気まぐれジンジャー のこれ ひとつと、、、」

商品名を全部言い切る前に
断念してメニューを指さす男子大学生に

「なんやねん お前 ちゃんと読めやー」

と周りの仲間がケラケラ笑って冷やかします

そんな様子を厨房から見ていたスタッフのともちゃんは
「かわいぃー めっちゃ好きー」
と両手を握り 胸の前でフリフリしています

どうも 逞しい見た目とは裏腹にドキドキソワソワと焦る 
そのギャップがたまらない様子です


ギャップ萌えするのはともちゃん
逆に見た目も性格も『ザ、陰キャ』が好きなのはサツキちゃん

薄暗い研究室で一人薬品を扱っていそうな色味の薄い陰キャ男子が

「気まぐれジンジャーの悪戯
 上品な香りに包まれて  ~  イタズラ好きなんだから をひとつ」

とサブタイトルまで全てを淡々と読み上げると
「はぁ す・て・き」
となるらしい

そして 案外 人気なのは
おじさま

スーツをビシッと着こなした おじさまは
「き き 気まぐれジンジャーの、、、」と顔を赤らめても
「  ~ イタズラ好きなんだから」と淡々と読み上げても
ただただメニューを指さして「これ一つ」と注文しても
どんな注文の仕方でも
「かっこいー」と高評価をもらいます


おじさまがスイーツを頼む姿が どこか素敵なのか
スーツをカッコよく着こなすおじさまは 何をしてもカッコいいのか

よく分からないけれど

とにかく
ビスコッティの注文の仕方で その人が分かるらしく
自分のタイプの注文の仕方をするお客様には
それぞれが
「ありがとうございました(⋈◍>◡<◍)。✧♡」
と最高の笑顔で挨拶してしまう女子大学生スタッフなのでありました



  ~ カフェ物語5 につづく~」

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