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夢 【20年ぶりの夢】

黒澤明監督の「夢」は、わたしと妹のお気に入りだった。小学生だったわたしたちは飽きもせず、そのVHSを何度も、何度も見た。もちろん始末屋の母のことだ、家にあったそのVHSというのは購入したものではなく、ダビングか録画のものだったと思う。

当時、実家のテレビボードは録画VHSで溢れかえっていた。最初は母が「ドラえもん」や「となりのトトロ」などを録画したものが数本だったが、操作を覚えてからは録画VHSを妹と量産した。最初はタイトルが見えるように立てて並べていたのが入りきらず、倒して重ねるようになった。タイトルが見えないので、シールに書いて側面に貼り付けた。

姉妹の幼い頃のお気に入りは、エディ・マーフィーの「ゴールデンチャイルド」でそのせいか、わたしは長いことクリス・タッカーとウィル・スミスを受け入れられなかった。笑 

幼い頃の影響って計り知れないね

黒澤明監督の「夢」は、エディ・マーフィーと同じくらい、お気に入りだった。
「こんな夢をみた」から始まるオムニバス形式。中でも特に印象に残っているのは狐の嫁入りの話と、お雛様の話。今回改めてそれぞれ「日照り雨」「桃畑」というタイトルであることを知る。

先日急に妹が借りてきて「お姉ちゃんも見て!」とウチに置いていったのだ。

最初のクレジットを眺めていたら、並び出てくる有名俳優の名前。倍賞美津子、原田美枝子、いかりや長介、そしてマーティン・スコセッシ!?何役?

昔はわけも分からずただ見ていたものが。大人になると気になることが増える。マーティン・スコセッシの謎が全く解けぬまま、さて、わたしは夢を見始めた。

そもそも誰の夢なんだろう?と子供の頃は思っていたが、黒澤明監督が実際見た夢らしい。「日照り雨」の冒頭、立派すぎるお屋敷の門に「黒澤」とあるので主役の子供は黒澤少年と思って間違いない。まあとにかく、すごいお屋敷だ。

昔から好きだった最初の2話は監督の子ども時代の夢なのか、どちらも大変色鮮やか。わたしも記憶がしっかりあるのでただただ懐かしく、今見てもなお美しい。桃の花びら舞う桃畑を見てたら泣きそうになった。白塗りのリアル雛様達がちょっと怖くもあった子供時代である。

忘れていたのがその後の雪女の話「雪あらし」と、死んだはずの兵隊がトンネルから戻ってくる「トンネル」。しかしこのへんの話も大人になって今見るとなかなか良い。ラッパがせつない。

そしてうすーく記憶にあった美術館の話「鴉」が出てきた。ここでゴッホの登場。奇しくも今年の夏ゴッホ展に行ってきたばかりで、作品鑑賞をする寺尾聰と自分がなんとなく重なる。クレジットのマーティン・スコセッシってゴッホだったんだ。いや、ゴッホって、マーティン・スコセッシだったんだ…てかマーティンスコセッシってこんな顔だ多tん……くだらん感想を持ちながら、今と子ども時代を行ったり来たりする。いい感じ。マーティン・ゴッホ似合ってる。
次はマーティン・スコセッシの映画を一気見したいと思った。最後の鴉が印象的。

ここから続く夢が暗い。
放射能に色がついてる「赤富士」、巨大タンポポの「鬼哭」。「赤富士」は子供心に恐ろしく、よく記憶している。

最後は明るいお葬式の話「水車のある村」。この話に至っては曲まで覚えていた。子どもの頃、「これがお葬式だと?」とあくまで不思議の枠を出ることのなかった一話である。美しい自然と水車のある村を訪れた寺尾聰が、祭りのようなお囃子を聞く。何かと老人に尋ねると、「葬式だ」と言う。

「よく生きて、よく働いて、ご苦労さんと言われて死ぬのはめでたい」

楽しいリズムと美しい映像を見ていたら
自然と涙が溢れてきた。
ちょっと疲れていたからかもしれない。




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