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王子様が迎えに来ると妄想してた

私が病みすぎていた過去。
卓(たく)と出会って、初めての恋心に、あまり素直になれず、下ばかり向いていた頃。


恋愛などしてはいけないと、何故か自分を制していた。

私は自分に自信が無くて、
卓(たく)が、

牛乳瓶みたいな私のメガネ、
そして三つ編みしていた髪を、


「外してみて」

そういった時、素直にメガネを外し、髪を解いた。


卓がそれから、「すごいな、女って。こんなに変わるんだ」

音楽室にあった鏡を見て、私自身驚いた。

多重人格だけど、顔も違うんだって、初めて色気づいた瞬間、
卓が少し冷たくなった気がした。

卓は頭が良くて、きっと女子にすごくモテるんだろうなとか、

あの時だけ、私は普通の中学生の純粋さを持っていたと感じる。


手しか触れたことは無いけれど、

「どうしたの?」
って聞いても何故かぶっきらぼうになって、
卓が
「眼鏡外すのは俺と居る時だけ」


その頃は全く意味が分からなくて、
「うん、わかった。」

けれども、初めて鏡で見た自分の素顔が、特に目の二重の辺りが、自分自身気に入ってしまい、コンタクトレンズに変えた。


「どうかな?」
って言っても、なんだか、喜ばない彼に対し、再度メガネをかけた。

「俺の前では外しても良いよ」
2人でピアノ弾いたり、楽しかった思い出に、まだ恋とか全く分からなかった私は、

いつか、あの苦しい家から連れ出して欲しくて、
「卓は私の王子さまで、いつか迎えに来て欲しい」

そんなふうに言ったら、
「うん……」

そこから何故か関係が変わってしまって
避けられるような気がして、とても心が苦しくなった。
やはり私はダメなのかなとか、お嫁さんになりたい夢とか、もう汚い体と壊れた心で、無理なんだと、思った。


卒業の時、卒業の前に転校が決まっていた私は、
卓が、「第2ボタンをやるから、取りにこい」

そう言った意味がわからなくて、
紺色の制服の金色のボタンを、


私は父を陥れてしまったことで、卒業式は、もう横浜に戻れないこと、そんな事を話して、

「じゃ、今やるよ」
ボタンを外そうとした。何故ボタンなんだろうと思って、そんながっちり着いているの、取れないから、私のバックから、小さいソーイングセットのハサミで切った。不器用で少し生地も切ってしまって、背の低い私は、彼の顔を見上げたら、彼が顔を赤くしていたので、

「私みたく耳まで赤くなっているよ?最初にあった頃みたいに」
って笑ったら

「うるせーよ」
何故怒ったのか分からなくて、
結局サヨナラも言えなくて、卒業前に私は横浜を去った。

恋愛に激しく疎かった中学の頃。
多分好きだったのかなとか、やはり初恋は実らないのかなとか、考えたりした。
今でも彼の顔は覚えている。

背が高く、頭良かった。
意外に純粋だった。
そしてお互い子供だった。

今もたまに実家で弾くショパンは、かなり下手くそになって、1日でも練習をサボると弾けなくなるピアノの鍵盤を見て、何度か思い出した。

けれども指が覚えていて、しばらく弾いてると思い出す。ピアノは目が見えなくとも弾けるもので、私は音大へ行きたかった。


父はピアノは遊びだと言って、反対していた。
あとは私が半端なく音痴で、歌が全く歌えなかった。

エチュード、第3番 「別れの曲」 Op.10-3
これも有名だが、練習曲。

今の旦那さんと、似てるよね。
なんだかね。
初めて会った時、懐かしい感じがした。

私の中に、純粋さが確かにあったこと。
そんな事思い出させる初恋の人。

どこかのバーで私がいつもオーダーしていたカクテル、


ロングアイランドアイスティ

似て非なるもの。
何故か思い出す、この味。


もうこんなものを飲む機会なんてないだろう。

「普通のお嫁さんになれたみたいです」

普通の夜ご飯


だいぶ遠回りしたけど、あの思い出は私を何度も救ってくれた大切な人生の宝物。

秋の海
いつかの横浜


最後までお付き合い下さり大変ありがとうございます。

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