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【超短編小説】わるいやつら

 こちらの後日譚です

 ラスターは首を軽く動かして、目の前で動かなくなっている生き物に目をやる。名前はタリス・キーロウ。反魔術師の過激派組織の末端構成員で、素行はよくない。ドゥーム派であることを盾にして好き勝手に振る舞っており、特に最近は付き合っていた彼女に振られて自暴自棄になっていた。その勢いで酒場の看板娘に殴りかかり大暴れ。めでたく暗殺依頼が出たというわけだ。いくら末端構成員といってもドゥーム派の輩を殺してしまえば抗争の理由を与えてしまうことになる。今回は「地区の人に手を出した以上、こちらも黙って見ているワケにはいきません」という大義名分を得たと言うわけだ。……もっとも、コバルトはウキウキしていた。目に余る問題児を殺せるのが嬉しかったらしい。タリスが地区住人に暴力を振るったという知らせが来てすぐに、彼はネロをたたき起こしてラスターに暗殺依頼を出していた(哀れなカラスの魔物は終始不機嫌だった)。
 あとは証拠品――装飾品を持ち帰ればいい。コバルトはこういうところはキチンとしているので、身体の一部を強請ってくることはない。死体処理班の到着よりも先に外部の人間がやってきて死体が発見されたとき、指が一本でも不自然に欠けていたら事故死の偽装が成り立たなくなるためだ。
(まぁ、情報屋やってるから暗殺偽装なんて即バレるだろうし……それにアイツが直接依頼するってことはよーっぽど信頼がないと、ね)
 悪趣味な金の時計を回収して、ラスターはその場を離れた。そういえば、タリスが惚れ込んでいた女は失明した上に精神を病んでしまい故郷に帰った(彼女の兄が連れて帰った)。タリスが自暴自棄になったのもある意味ではあの女のせいとも言える。
 だが――。
 本当の元凶は、どちらかというと。
 ラスターは頬を撫でた。もう傷は治っている。

気の利いたことを書けるとよいのですが何も思いつきません!(頂いたサポートは創作関係のものに活用したいなと思っています)