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【超短編小説】セーブポイント
K駅近くのS喫茶店の隅の席で、外を見たままじっと動かないでいる男がいたら、それが私です。大抵の場合は洋服店のマネキンが着用していたらちょっと首をかしげたくなるような出で立ちをして、ホットコーヒーかアイスティーを手元に置いています。エネルギッシュな人々の波に揉まれていると、心がしわくちゃになってどうにもならなくなることがあるのです。だから私は時々、誰にも心配をかけないようにして、一人でくたびれているのです。
人の往来というのは面白いものです。かつては私もそこに居ました。色々あってくたびれて、最近ようやっと普通の人のふりが上手になりました。それでも元には戻っていません。くしゃくしゃにした紙を元通りにしようとしても無理な話です。それでも私たちはシワひとつないふりをして、あの中を歩かなければならないのです。この喫茶店にはそういったくしゃくしゃの人たちがじっと身を潜めています。TikTokの話題に花を咲かせる女子高生や、熱心にMacBookを操作する成人男性たちに混ざって、くしゃくしゃの私たちはもう一度あの波を歩くために休みます。飾り気のない飲み物を持って、じっと不条理と苦痛に耐えています。
喫茶店というのは不思議な場所ですね。人の動きが停滞する空間の中で、それらの独立が保たれるというのは、我々にとっては救いです。
長々と失礼しました。私はそろそろあの波に潜ります。そして明朝には再びもみくちゃになって、この店の片隅でくたびれていることでしょう。道中またくたびれたらどうするのかって? ご心配ありがとうございます。ですが問題ありません。そのために、駅の構内にはカフェが乱立しているのですから。
貴方もどうかお気をつけて。
それじゃあ、よい一日を。
気の利いたことを書けるとよいのですが何も思いつきません!(頂いたサポートは創作関係のものに活用したいなと思っています)