冬
刺すような北風に心が沈み
熱いシャワーに手足が痺れる季節がもうすぐやってくる。
ああ、熊のように冬眠したい。
冬は、一日一回はそんなことを考える。
どれだけ着込もうと風は身体に入り込み、どんなにホカホカのミルクを飲んでも手は温まらない。
これだけ書くと、冬はなんていやな季節なんだろう、なんて思えてしまうが
煌びやかなイルミネーションや幻想的な雪景色の魅力も捨てきれなくて。
子どもの頃は、雪が降れば学校は休みになるし、たまの雪遊びが楽しくて、
クリスマスにはサンタさんも来るし、お正月のおせちは好きでなかったが、お年玉はやっぱり嬉しい。
もうサンタさんもお年玉もないけれど、おせちはちょっとだけ好きになりました。
黒豆と栗きんとんが好き。
最近めっきり寒くなって、
もうすぐ冬だなあと思ったわけ。
植物が枯れる季節、ある人の訃報を聞いた。
その人とは全く面識がなく、有名人というわけでもない。
どんな人なのかも知らないし、当然お葬式にも呼ばれていない。
けれど、わたしの大切な人が、すごく大切にしていた人。
わたしの大切な人は
「何もしてあげられなかった」
と言う。
この手のお話のとき
「生きているうちにやりたいことをやろう」
と、よく言われるが
「生きているうちに全部」なんて無理じゃない?と思う。
「これさえできれば満足」「これを言えれば満足」
なんてもの、あるかなと。
愛している人への愛は、
何万回愛していると言っても伝わらないし
ひとつ、何か一緒にできても
またつぎ、そのつぎ、と思ってしまう。
わたしが欲深い人間だから?
それもあるかもしれないけれど。
人は、いつか、死ぬ。
生きているうちに満足なんてできないから。
生きていても死んでいても
天国にいても地獄にいても
愛を捧げたい。
冬になりそうな空を見ながら
ふと考えた。
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