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【後編】facebookで見つけた車を800ドル値切って買った話。

Hello Japan from Australia!
傘がやたら大きくて持ち手が真っ直ぐなのしかないケアンズからお送りしています。

人生初のマイカー購入をオーストラリアで個人取引で経験するという #私だけかもしれないレア体験 をしました。この記事はその後編、いよいよ本命の一台の試乗からお話していきます。

↓前編はこちら

【Time for the Inspection】

2022年12月27日。
シェアハウスにインスペクションをお願いした車がやってくる日です。偶然お休みだったオーナーが一緒に車を見てくれることになっていたので、リビングで2人で到着を待っていました。その間、彼がパソコンを見せてきて、値切りレクチャーが始まりました。

試乗の間に軽く会話をしてから、他の車も候補に入れてるって話をしな。
Townsville(ケアンズから車で4時間くらいの大きめな街)に似たような製造年、走行距離の車があって、そっちは1000ドルくらい安いんだ、って。でも遠いから、ケアンズで買えるならその方がいいんだよね。みたいな感じだ。

シェアハウスのオーナー(筆者による意訳)

更に、価格ドットコムのオーストラリア版のサイトで、相場も教えてくれました。

https://www.redbook.com.au/

確かに、相場の最高額をつけてある……やっぱり交渉には相場を知っておかないといけないよね、そりゃあ。基本的に値切りをする発想なく生きてきた関東人なので、世間知らずのようなリアクションをしてしまいました。
それを見て更に心配になったのか、件の車が到着した時には、私より先に出ていくオーナー……。

娘の初のマイカー購入が心配で口も手も出しちゃうお父さんやん。

当の車は、古い車だとわかるような塗装のくすみ方をしてはいるものの、目立った傷や凹みは全くなく、外装も内装も綺麗な状態でした。ライトにヒビが入っているようなこともなく、丁寧に乗られていた車という印象でした。

ただ、悔しいことに今の持ち主が車から降りるなり始まったオージーおじさん同士の英会話にはさっぱりついていけず……ところどころ聞き取れる単語や、シートを指差すジェスチャーなどから文脈がなんとなく追える程度。

おそらくお父さん(オーナー)が色々と気になるところを指摘して、車の持ち主が回答しているのはわかりました。タイヤに釘が刺さってるとか、本当によくみてるなぁ…と感心しながら内装なんかを眺めていきます。どうやら、大型バスでこの車を牽引しながら長距離旅行をして、街中の観光や日々の買い物なんかにこの車を使っていたようです。

悲しいことに彼らの会話に口を挟むことはできなかったので、レンタカー屋さんのバイトで培った日常点検の手順でエンジンルームやタイヤもチェックしていました。

【Let's Test Drive!】

一通り話が終わったようで、いよいよ試乗です。さすがにお父さん(オーナー)はついてきません。ただ、乗る前に「走行中にハンドルを少し放してみて、偏っていくかどうか確かめるんだぞ」とチェック項目を追加してくれました。

隣に初対面のオージーおじさんを乗せての運転。さすがにちょっと緊張します。家の前のラウンドアバウト(環状道路)を出て、ハイウェイに向かいます。いずれしないといけない値切り交渉にどう持っていくか、更にそれをどう英語で言うかなど、頭の中は大忙し。

道中自分が語学学校を卒業したてだということや、バイト先のことを話し、本当に車がないと困ることなんかを話していきます。車のことをSheで置くのに好感が持てたので、私もそのまま同じ代名詞を使って会話を続けました。合間合間に、車の走り具合や出発前に見た時の様子などで賞賛の言葉を挟むことも忘れません。

10分ほど走って、適当な交差点で引き返した頃合いで、いよいよ価格交渉に挑みました。原文ままではありませんが、伝えた内容を書き出してみます。

Frankly speaking, I like her so much. I can easily imagine that I am on the road with her. She's much better condition than I thought.
But now I'm contacting another seller in Townsville, and the car is about 1000 dollar cheaper than her though it has the similar condition to her, like odometer and years. That one isn't made in Japan and it's a bit hassle to go there and drive it back to here. 
Then I'd love to buy her in conclusion, but she's actually over my budget. So, would you mind me asking  if there would be any chance of getting discount?

率直に言って、この子のことがとっても気に入りました。彼女と旅をするところも簡単にイメージできたし、思っていたよりもずっといい状態ですね。
ただ、今もう1人タウンズヴィルの人と連絡をとっていて、その車はこの子より1000ドルくらい安いんですよね。走行距離とか年数とかの状態は同じくらいなんですけど。そっちは日本製じゃないし、向こうまで行ってこっちまで運転して帰ってくるのもちょっと手間なんですよね。
だから、現状ではこの子をぜひ買いたいと思ってます。でも、正直予算オーバーなんです。だから、値引きしてもらえたりしませんか?

運転しながら英語でここまで話をするのは、結構大変でした。できればチャットとかでゆっくり文を考えたいくらいでしたが、直接話すのに勝ることはないと、思い切って頼んでみたのです。交渉の持っていき方をあらかじめお父さんに聞いておいたおかげで、それなりに伝えられました。

【His Answer is…】

残念ながら、答えはNO。曰く、

「見てわかる通り年数の割に状態が極めていいし、実際にもう4.5人からメッセージをもらっている。今回君からのインスペクションを受けたのは、君が最初に、丁寧なメッセージをくれたからってだけだよ。買わないなら次に連絡をくれた人に連絡するだけ」

こんなようなことを言われました。さすがに英語でなんて言ってたか、細かいところまでは覚えていませんが……。比較的バッサリ断られたので、そこではShe's worth it.と納得したように返し、それ以上追いすがりはしませんでした。その後も取り止めもなく話をして無事帰宅。今日中には返事をするとの形になってインスペクションは終了しました。

帰宅するなりHow was it??と聞いてくれるお父さん。安くしてもらえないか聞いてみたけどダメだったわ〜さすがに4800ドル言い値で買うくらいならもう少し探そうかな、と私がいうと、更に彼からコマンドが。

「もともと定価では買うつもりはないんだろうし、夕方くらいになったら残念だけどやっぱり予算オーバーだ、という話に一旦断れ。それであと何人かあの車をインスペしてから、話がまとまらなければまたお前のとこに安くするからと戻って来るかもしれないから」

まあ確かに、あの車じゃなきゃいけない理由はないし、もう少し気長に探せばより好条件の子も出るかもしれないしな、と、彼の提案に乗って返信をして、他の車も探していました。

最後まで礼儀正しく。
ほぼお父さんの言う通りに送りました。

あくまでも追い縋る様子は見せず、「めっちゃ良かったけどやっぱりちょっと高いから見送ることにする😭いい買い手が見つかるといいね!」と送りました。

するとまさかの返信が返ってきたのです。

【Successfully Making Him Chase Me】

帰宅後色々考えてくれたらしい。

簡単にまとめると、
「君がいい人だし、本当に試乗を楽しんでくれてたから500ドルまけるよ、RWCつきで

これがそもそも売るためのやり口なのか、本当にそう思ってくれたのかはわかりません。(お父さんによれば「みんな値切られるの前提で高く値付けしてるんだ!」とのことですが笑)

でも、品定めしようとか、買い叩いてやろうみたいな態度よりは純粋にワクワクしていることを表現しようと心がけていたのが功を奏したと思いたい!それに何より、仮に値切り前提であらかじめ高めの値段設定をしてくれていたとしても、私にとっては500ドル安くしてくれるというお得感しかないので損はありません。

感情表現はちょっと大袈裟なくらいに。

この返信からも、より大きな車を買うことにしたとはいえ、大切に乗ってきた車なんだろうな、とわかりました。
(やっぱりネイティブはI am省略するんだなーとか、関係ないこともわかりました笑)

ただ、もう夕方だったことと、返事が来たのがバイト開始直前だったので、返事を明日まで待ってもらうことにして、翌朝また連絡することに。

私としては、本当に定価では買えないし、他を探すつもりになっていたのも事実だったので、計算通りというよりは予想外の展開でした。ただ、せっかく向こうから値下げを提案させることに成功したので、もうちょい下げられそう、と思ったのも事実です。

男は追いかけさせてなんぼ。
買わせて"もらう"んじゃなくて買って"あげる"んだ。

心に飼っているメンタル師匠の甘言(?)に乗ることにした私も、大分欧米の文化に染まってきたということでしょうか……。恋愛に限らず、男というものは引かれるとつい追いかけたくなる習性があるのは事実なのかもなぁ、なんて意外なところで男性心理を目の当たりにしたような気持ちになりました。

【When In Australia, Do As Aussies do.】

Oops, but I digress. Where were we?

閑話休題。翌朝、どんなふうに乗ってきたのか、トランクの大量のオイルはなんだったのかなど、後から気になってきたことを尋ねていきます。

こんな感じで各地を各地を旅していたらしい。
スケールでか…。

なんとなく聞き取れたことは概ね間違っていなかったようで、バスでこの車を牽引して旅して回っていたようです。試乗の時にトランクに大量に積み込まれていたタンクはオイルで、このバス用のものだったとか。それにしてもbusが思っていたよりガチガチの「大型バス」でびっくり。車「で」旅をするんじゃなくて、車「と」旅をしているような感じですね。She と呼称しているのもなんだか納得がいきました。

大型トラックの運ちゃんをしていた知人が、大型車は走行中の衝撃を緩衝してくれるような設計になってるし、全部の車を上から見下ろせるから運転が楽だというようなことを言っていたのを思い出しました。レンタカー屋でバイトする程度には車も運転も好きなのですが、そこまで空間認知能力があるわけでもない柑橘にはなかなか理解し難い感覚です。(自分の体すらドアにぶつけるような人間には、大型車まで間隔を拡張するなんて土台無理な話です)

ちょこちょこ車と本人を称賛する文章を挟んでいくあざとい柑橘。

会話の中で、エンジンがToyota製であることも判明。ダイハツはトヨタの子会社になったので、言われてみればそうか、という感じでしたが、これを聞けたのはラッキーでした。
前編でも触れた通り、オーストラリアでは日本車は長持ちすると評判で、中古車でも割高で取引されているのですが、中でもTOYOTAに対する信頼は別格の感があるのです。まさに世界のTOYOTAなんですね。

こんな風に質疑応答の形でおしゃべりをしつつ、頃合いをみてもう一声値下げ出来ないか、正直かなり緊張しつつも訊いてみました。

試乗の時の値下げ交渉には応じなかったのに、その後断ろうとしたら相手方から500ドル下げようかとの提案が来たということは、向こうとしてもこちらを悪くない買い手だと判断したということでしょう。
他にメッセージをしてきた人たちが私ほど好印象ではなかったか、もしくは早く買い手を見つけたいか、いずれにせよ自発的に値下げを申し出てきたことを考えると、もうひと押しできる可能性はあると判断しました。

それから、希望的観測の域を出ませんが、車の綺麗さや話している時の口ぶりから、この車に、ただの移動方個室ではない愛着を持っているような気がしたのです。「大事に乗ってくれる人に譲りたい」は本心から出た言葉のように思えて、そのお眼鏡にかなう購入者たり得ると判断されたのでは、と考えました。車を"it"と呼ばなかったのは、付喪神好きには高ポイントだったのです。

それを逆手にとって値切りにいくのは足元を見るようでゲスくない?(善なるゆずぽん)

日本(関東)で値切り交渉などほとんどしたことがないのですが、ここはオーストラリア。郷に行っては郷に従え、です。売る人と買う人に、上下関係などありません。何かお願いがあるなら、とりあえず訊いてみて、ダメならダメ、OKならOK。希望を飲み込む必要なんてないんです。更に値下げしてくれるならラッキー、ダメならその時にまた改めて4300ドルで買いたいか考えてみるだけです。

ということで、ぶっちゃけでお願いしてみたメッセージがこちらです。

心持ちは完全に「ここが勝負どころ!」

ざっくり訳すと、

正直こんなに親切な販売者は初めて。1月の頭には車を買いたいと思ってるんだけど、3700ドルで売ってくれたりしないかだけ聞かせてほしい。1週間で用意できる金額としてはこれがマックスなんだよね。こんな質問して本当に申し訳ないとは思うんだけど、できるだけ両親に頼るのは避けたくて……。

基本的に嘘はありません。年末年始のパブリックホリデーフィーバー(時給2倍)を考えれば、生活費を残してそのくらいの額なら人に自力で工面できそうでした。
「人が下手に出てやったら調子に乗りやがって💢」みたいに激昂されても怖いなーと思ったりもしましたが、ダメ元で聞いてるよ感が出せるように文面もかなり考えて送りました。
500落とすと言ってくれたところにもう600落とせない?ときいてますからね。間で折衷案が出ればラッキーくらいのつもりでした。

して、回答や如何に……。

【A Happy Medium】

言ってみるもんですね。

ドキドキの回答は、

3700ならRWCなし。
RWCありなら4000が限界。

I NAILED IT!!!!

概ね予想通りになりました。向こうからしても1000ドル値下げはちょっと損した感覚になってくるだろうなとも思い、この辺りがお互い気持ち良く終われる落とし所だと判断。

購入決定!!!

その後500ドルのデポジットを払い、彼は車を年明けすぐにRWCに通すと約束してくれました。デポジットを払った時も、きちんと領収画面のスクショを送ってくれたり、その後文書で宣誓書を送ってくれたりと、個人としてはかなりしっかりとした手続きを踏んでくれて一安心です。

年明けすぐに、RWCの予約をしたことを連絡してくれました。その後も都度向こうから連絡をしてくれるので、本当に引きがよかったなぁと思っています。

お父さん(笑)によると、RACQ(the Royal Automobile Club of Queensland)に依頼すると150ドル程度で車の調査点検を代行し、レポートしてくれるサービスがあるとのことでした。私は今回利用はしませんでしたが、遠隔地での購入であれば依頼していたと思います。

代わりというわけではありませんが、PPSR(Personal Property Securities Register car history)というサービスで、その車の情報は一通り確認しました。その車の盗難歴や所有者の変遷など、過去にトラブルがなかったか、相場も含めてチェックできるものです。こちらは36ドルと安価なので、本当は購入を決める前に確認した方がいいものですね。買い手によってはこの書類も開示して投稿している人もいます。その方が信用度は増しますからね。

結局、このレポートでもAll Greenでした。

【How To Buy a Cheap and Good Car?】

2023年1月15日現在、RWCを通すにあたっていくつか交換が必要なパーツがあったそうで、それが終わるのを待っているところです。この後、実際に車の所有者を書き換えるのに必要な手続きなどもあるので、また正式に納車と手続きが済んだら報告記事を書こうと思います。

ここには、現時点での私が思ったことをまとめておきます。

  • まずはオンライン、オフライン問わず地域事情を仕入れる
    (個人のブログや売買サイトのチェック、車持ちの知り合いに聞くなど)

  • 都市部で探す(やっぱり選択肢が多い)

  • 4.5時間の運転で行ける圏内までは視野に入れて探す

  • バイト先や友人に車を探していることを言いふらす
    (どこから情報が入ってくるかはわからない)

  • ネイティブと英語で渡り合える人、機械系に強い人に同行してもらう

  • 個人売買では交渉が当たり前なので、とにかく同時進行で連絡しまくる

  • 手持ちがあれば即金即決を武器に、試乗の時点で値切りに行く
    (「4000なら今この場で現金で払えるんだけど」など)

私個人としては、やっぱり「周りの人に頼る」が一番大事かなと感じました。日本では大抵のことを自分でやれてしまうし、自分でやった方が早い病罹患者だったので、実は一番ハードルが高いことでもありました。
けれど、いくらそれなりにコミュニケーションが取れる程度の英語力があるとはいえ、ネイティブには敵いません。そんなわけで、なんでも自分でやらなきゃと思いがちな私には、車購入は人に頼るいい練習になりました。

やれることは自分でやった上で、詳しくないことは手伝ってもらう。

今回の件でこの辺りの匙加減を学べた気がします。

Do it yourself at first. This is the most important thing. However, it does NOT mean you have to do everything by yourself.
Ask for help after you do what you can do. Then you must find you always have someone on your side.

Thank you for reading. Hope to see you soon again!

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