オージー訛り地獄〜しっかりしてくれ二重母音〜
【Preface】
Hello from Cairns!
なんだかやたら久しぶりになってしまいましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。暦上はもう五つ寝るとクリスマス〜なのに、私の世界はむしろ師走もびっくりの全力疾走をかましています。つまり年末の実感が全くと言ってありません。ケアンズの気候のせいもあるんですけどね、それを差し引いても、サイクロンジャスパー襲来とその後の豪雨のせいで(お陰で?)1週間ほど仕事もなく家でひたすらインプットに勤しんでおりました。コロナ禍で開花した一級在宅士としての才能は健在でして、電気がなければ昼間のうちに本を読むし、夜はシェアメイトとみんなでタロットカードからトランプを抽出して(?)大富豪で盛り上がるし、まあずっとじゃないなら不便を楽しむ才能あるよなぁと再確認したところです。目指せ適応能力カンスト。
ちょっと間が空いたせいで、前置きが近況報告と化していますが、今回は「オージー英語の特徴」を1つ、実体験とともにシェアご紹介しようと思います。本当にね、これは知らないと聞き取れんよ。
引用して気がつきましたが、前回の記事からなんとほぼ1ヶ月経ってました。収支報告も上げるどころじゃなかったし。ばあちゃん(愛車)に関してはまた別途記事にします。なんかこればっか言ってない私?
【The Person of Australian Accent】
と、心の中で勝手に呼んでいる方が職場におりまして。まあぶっちゃけてしまえば、頻繁に会話する人の中で一番英語が聞き取りづらいお方なんですね。ちょっと口うるさいけど面倒見の良い奥さまです。マニュアル車も運転できない上に遅刻癖のある私を、厳しいことを言いつつもなんだかんだホストマザーよろしく受け入れてくれているレンタカー屋の店長ママです。愛車を修理に出している間も、レンタカー落ちの中古車として売り出し予定の車を4日間も無料で使わせてくれるような、かーちゃんみたいな人です。
彼女の英語は本当に色々とびっくりさせられることが多くて、ワーホリをフィールドワークと宣うようななんちゃって言語学徒にとっては大変ありがたい存在です。
「それは年代問わず使っている表現なのかなーそれとも若者が聞くと”鳩が豆鉄砲を食ったよう”みたいにちょっと使い慣れない古臭い表現なんだろうか」と、思わず同年代のネイティブに確認してみたくなるようなイディオムなんかも教えてくれます。ちなみにこの日本語の慣用表現を引き合いに出したのは、この間知り合った20代前半の女の子(日本人)と喋っている時にこれを何の気なしに使ったところ「変わってるけど面白い表現ですね!」と言われてちょっと脳波が途切れかけたから。そっか、これはもう通じるけど「独特な表現」として目新しさを覚えられてしまうのか……と寂寥感に襲われました。歳をとるってこういうことなのかもしれません。しみじみ。
脱線がえげつないことになってますが、以前彼女が教えてくれた件のイディオムはこちら。
さて、今回のエピソードは、そんな彼女から、唐突に話しかけられた時のことです。
彼女はもう半分隠居というか、人がいない時とか気まぐれでお店を覗きにくるので、神出鬼没なんですよね。シフトにも載ってないし。
これの何が問題かというと、彼女が仕事モードなのか世間話モードなのかの判別がつかないので、文脈の推測が立てられないこと。何を隠そう私の一番の弱点はリスニング。ずっと教えてきたアメリカ英語でも、別に全部聞き取れるわけではないし、というかそもそも日本語でも割と視覚情報と文脈に依存しがちなので、耳からの情報に弱いところがあります。だからこそ普段、とりわけ相手の英語のアクセントが私の知っているものと乖離している場合は、滞りなく会話を成立させるためには文脈が必須なんですね。
「今は車の日常点検だから、その話をしようとしてるんだろうな」とか、
「今は休憩中って話したから、業務内容についての話題ではないよな」とか、そんな感じで話題をある程度推測しておいて、聞き取れた部分から聞き取れなかった部分を補足してます。この補完機能は母語でも人間が自然に使っているものです。
まとめると、「店長ママの英語はちょっと聞き取りにくい上に文脈の推測が立てづらい登場の仕方なので咄嗟に理解できないことが多いのぴえん」って話です。
【What are you asking…?】
てことで、投げかけられた問い、というか、私が最初に聞き取った文が今日のサムネになっています。
え、体重聞かれてる……???
だって、3回聞き返してもゆっくり行ってもらっても、How light、lightにしか聞こえないんですよ。
そこで私も、自分の思いつく限りの言い換えを試しました。
lightだと、軽いか明るいで、でも主語がitとかthis officeとかじゃなくyouなのは確実だったので、私個人について尋ねているのは確実。てことで、冒頭の通り聞いてみました。
多分違うよなーと思いつつ可能性を潰すために訊いてみましたが、答えはもちろんNO!の一言。そして今度はゆっくり言い直してくれました。でもやっぱりライトにしか聞こえない。一応LとRは聞き分けられるので、Right(右とか正しい)の可能性もない、と。
すっかりライトに取り憑かれた私は、さらに想像力の翼をはためかせます。How are you?を1日に何度も聞いてきたり、Happy days!が口癖の彼女だから、lightを「気分の明るさ」的に使ってるのか…!?柑橘、2度目の挑戦です。
そんなこと真っ向から尋ねる上司なんている⁉️
そんなのvery happy以外答えようがないやん!
と思ったそこのあなた、日本人ですねぇ。うちの店長ママは本気で聞いてきたことがあるんです。
bossyは「boss:上司」を形容詞にしたものなので、直訳っぽく行くなら「(典型的な)上司っぽい」ってことですね。cloud(雲)とかsun(太陽)がcloudy(くもり)とかsunny(晴れ)になるのと同じです。決してコーヒーのブランドの話をしているわけではありません。
さて、困った。他にI am light.から類推できることがありません。手詰まりです。そんな時にできることはただ一つ。
はい、降参です。白旗を上げる。匙を投げる。surrender. Give up. 人生何事も引き際が肝心なのでね、大人しく自分の脳みそでの解決にこだわるのは辞めました。
【VOWEL💢💢💢】
この見出しに使った単語をご存知の方は、ぼちぼちオチが見えてきた頃かと思います。そう、タイトルにも使っている「母音」です。ちなみに「子音」はconsonantと言います。yの発音はどっちになるんだ問題で度々話題になるやつですね。いやならないか。
わかんなーい!と両手を上げて降参の意を示した私に、ようやく彼女が説明を付け加えてくれました。
もうお分かりですね。彼女はそもそもlightと言っていなかったのです。
いやLATEやんけ!!!
カタカナにするならレイトだよ!しかもちょっと注意しようと思ってたやつだよ店長ママ的には!
そう、前回の出勤時に私がちょっと遅刻した時の話をしようとしていたのでした。
このやりとりをしている間に店長が口を挟みたそうだった理由もようやくわかりました。私の遅刻問題についてはそのちょっと前にコッテリ絞られた後だったのです。「もうその話はしたし、約束もしたから」と彼女を止めようとしてくれていたのでしょう。優しいかよ。
この一件の後、ニュースなんかでも意識して聞いてみたところ、どうやらこれもオーストラリア英語の特徴のようでした。実体験レベルでは、ブリスベンの近くで暮らしている人も同じことを言っていました。
【G'day mate!】
などと書いているうちに、もっと特徴的なところにこの癖が表れていることに気がつきました。一生、とまではいかなくても、十年に一度くらいの不覚。
このタイトル、どのように発音するかみなさまご存知でしょうか。
グデイ メイト、ではないのです。
ぜひ以下のリンクからオーストラリア英語ネイティブのG'day mate!を聞いてみてください。forvoという、いろんな国の人のアクセントを聴き比べることのできる無料サイトです。
https://ja.forvo.com/word/g%27day_mate%21/#en
おわかりいただけたでしょうか。
どちらかというと、グダイ マイっ、のように聞こえますよね。
これ、レイトがライトになっちゃうのと同じ現象なのです。
[ei]という母音が、[ai]っぽくなっちゃうんですね。オーストラリア英語が「訛っている」と言われる理由の一つには、この母音の移動があったのでした。この挨拶死ぬほど聞いてたのに、やっぱりlateとか、別の単語になると咄嗟にはわからないものですね……お陰でいいアハ体験にはなりましたけど。それにしても悔しい。
【Postscript】
いかがでしたでしょうか。これが「オーストラリア英語の洗礼」の一つですね。このところオンライン英会話で講師として話したり、出先で人と話すときに、自分の英語がオーストラリア英語によってきたかもなーと思うことが増えてきていたので、その中でも私がまだ引っかかるところを取り上げてみました。
オージーに似てレイジーになりつつある今日この頃、アメリカ英語ほど単語の途中や最後にある"r"を巻かずに発音するようになっている柑橘ですが、この母音のズレはそこまで全般的に発生しているものだとは思っていませんでした。自分の盲点に気がつけるのも、フィールドワークの醍醐味ですね。
Thank you for reading.
I'll never be LATE for work!! lol
Have a good ONE.
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