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フライボール革命と神宮球場

今NPBは危機に瀕している。それは投手力のインフレとそれについていけない打者という問題である。

強力な投手が多いパリーグにおいては規定に到達した3割打者はなんと2人のみ。佐々木の完全試合を筆頭にノーヒットノーランが連発。もはや連打で大量得点というのは現代野球界では不可能な時代になっている。
これまでのNPBにはダルビッシュや田中マー君といった飛びぬけた投手はいたし、全盛期の阪神JFKや中日の浅尾岩瀬ら鉄壁の救援陣を持つチームは存在した。しかし過去を振り返り、全球団の投手力がここまで高まったことはなかったと断言できる。そう問題なのは全球団の投手力が向上している点である。

それを成しえた大きな要因の一つがMLBで開発導入された”ラプソード”や”ホークアイ”といった打球投球の速度・回転数・回転の方向・軌跡を解析する最新装置である。これらの解析装置はこれまで”キレ”という言葉で曖昧に語られてきた指標に回転軸と回転数という明確な数値を出した。これにより各投手の球の回転数や軸から変化球や速球の良し悪しを数値で評価できるようになり、それぞれのピッチャーの回転のクセに合わせた変化球の習得ができるようになった。

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さらに球速を上げるためのフィジカルトレーニングやウエイトトレーニングの方法論や、ケガをせずに速い球を投げる方法やTJ手術のメソッドやリハビリメニューも日々進化している。このような理由により、野球界の投手力はアメリカの物価の如くインフレしているのである。

さらに野手陣に追い打ちをかけたのが、守備のシフトである。膨大なデータから各打者の打球傾向に併せて守備位置を変えるシフトと、投手力のインフレにより打撃陣は窮地に立たされることになった。

この危機に対してMLBで編み出されたのが、今回の主題となる“フライボール革命”という方法論だ。先ほど紹介したホークアイは投球だけでなく打球の解析も行うことができ、その結果もっともヒットもしくはホームランになる打球角度が解析されたのだ。これにより連打では点が取れないなら全員でホームランを狙っていこう、とMLBでは考えられたのだ。
結果としてMLBでは打率が低下しホームラン数が増加する現象が起き、なんとか打撃陣が投手陣に一矢報いる形となっている。

それではNPBはどうだろうか?インフレする投手力に対抗するためにフライボール革命を実践できているのか?答えはNOである。

フライボール革命においての絶対条件となるのがホームランを打てるだけのパワーがある事である。そう日本人野手にはメジャーリーガーのようなパワーがないので、理屈ではフライボール革命が理解できても実践できないのだ。広い球場をもろともせず、とらえればホームランを打てるだけの筋力が多くの日本人選手にはないのだ。
フライボール革命を実践するには、クリーンナップ以外の打者も芯でとらえればどんな球場でもホームランが打てるだけの飛距離を出せることが前提となる。クリーンナップ以外は非力な打者が並ぶ日本では無理なのだ。小柄な日本人打者が必死にフルスイングしても外野フライを量産して二軍落ちするのが関の山である。

しかし、例外が存在する。球場がもし極端に狭ければ、非力な日本人でもフライボール革命は実践できるのだ。

これにパリーグの各球団はもうすでに気が付いている。勝ちに貪欲なソフトバンクホークスはいち早くテラス席を導入し、千葉ロッテも後を追うようにマリンスタジアムにテラスを加えた。西部とオリックスは静観しているが、ここ数年投手力のインフレと札幌ドームの広さのせいで苦汁をなめ続ける日本ハムはついに狭い新球場を完成させ来年から移転する。そうNPBが生き残る道は何とか日本でもフライボール革命を実践し高まり続ける投高打低に歯止めをかけることしかないのである。

それに対して問題なのがセリーグである。(ここからの有料パートはヤクルトを憎む阪神オリックスファンの愚痴と怨嗟の声しかありません。ヤクルトさえいなければ……)

今年のセリーグの1位と2位は神宮球場と横浜スタジアムという狭い2球場を本拠地に持つ球団となった。この2チームはこれまで投手力に問題があり中々勝てなかったが、近年の投手力インフレに波に乗って弱点が改善され上位になることができた。

さらに球場の狭さからフライボール革命も実践することができ、投手力のインフレとフライボール革命というメジャー最新の戦い方が実践できているのだ。そら強い。それに対して他球団はどうかといえば、投手力のインフレの恩恵は受けているものの、打撃面ではフライボール革命がてきていない。なぜなら球場が広すぎてクリーンナップ以外はホームランを狙っても打てないからだ。俺が応援している阪神と中日の素晴らしい若手選手、中野や岡林がマン振りしてフライボール革命を実践したとしても、甲子園球場とバンテリンドームでフライを量産するだけだろう。

そんなわけで、ヤクルトとベイスターズ以外の球団は暗中模索しているのが現状であり、引き続きスモールベースボールをやらざるを得ないのである。他球団も開き直ってフライボール革命をやり出したら、ヤクルトとベイスターズの投手陣も神宮や横浜スタジアムで燃やされるのだが、今のところ他球団の迷いのおかげで助かっている。現にフライボール革命を実践する巨人は神宮でヤクルト投手陣を打ち崩して勝ち越している。

昨日スリーランを打った丸山の打球も、神宮と追い風の横浜スタジアム以外ならレフトフライである。ヤクルトの小柄な選手はパンチ力があって凄い!ではないのだ。ヤクルトは神宮というクソ狭い欠陥球場がホームなので小柄な選手もホームラン狙いという贅沢なバッティングが許されるしホームランも打ててしまう、というのが正解なのだ。

ヤクルトの当たり助っ人外国人オスナとサンタナがもしバンテリンドームを本拠地とした場合、フルで試合に出たとしてもオスナはホームラン15本以下、サンタナに至っては10本も打てずにクソ助っ人外国人として解雇されるのが関の山である。

村上だってもしバンテリンドームが本拠地なら、とらえた打球が度々外野フライで終わることが続ければどんどん力み、打撃を崩していき40本打つことすら困難だろう。村上がバンテリンドームで打てているのは本拠地神宮球場で打撃の調子を整えられているからに過ぎない。村上が甲子園やバンテリンドームが本拠地なら絶対に56本は打てなかったであろう。

立浪監督や片岡二軍監督が不憫でならない。バンテリンドームのような欠陥球場でやれフライボール革命をやれだの、スモールベースボールは時代遅れなどとファンやマスコミから叩かれている。本当に叩くべきはテラスを導入しない中日本社である。バンテリンドームと日本人野手の組み合わせなら右打ちバンドスクイズ盗塁を試みるしかないではないか。鵜飼のホームランが何度バンテリンドームに防がれたと思っている。鵜飼も神宮なら20本打てる逸材なのに…

阪神はWAR(選手力を数値化したもの)ではヤクルトを上回っていた。つまり戦力ではヤクルトに負けていないのである。しかし甲子園球場は打者を育てるにはあまりに厳しすぎる環境なのだ。藤川も言っていたが甲子園球場をホームにホームランを毎年20本以上打つ大山と佐藤はもっと評価されるべき選手である。神宮なら二人とも30本確定である。

断言するがこれからNPBでは無駄に広い球場を持つ球団が苦労することになる。よほど戦力を高めないと優勝することは難しいだろう。一刻も早く球場のサイズにある程度の規格を設けることを願ってやまない。

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