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クリエイターチームの著作権&契約関係【弁護士監修記事】

ある日のこと、「クリエイター同士でチーム組んだらさ、メンバーみんなの間で契約書交わさないとだね」と言ったところ、はこしろちゃん(イラスト担当)に「え、なんで必要なのです…?」と即答されまして、思わず言葉に窮したリーガルライターぽなです。こんにちは。

これを読んでいる方の中には、これから異業種のクリエイターさん同士でコラボ、あるいはチームを組んで仕事を獲りたいという方もいると思います。

ただ……皆様はご存知でしょうか。こうした時に「今度コラボしようよー」「いいよー」などというフワッとしたノリでチームを結成してしまうと、後々トラブルを招くリスクがあることを。

「そんな大袈裟な」と思われる方もいるかもしれませんが、実はクリエイターがチームで仕事をするって意外とオオゴトなんです。契約書や著作権など、気をつけなければいけないポイントがいくつもあります。

そこで本記事では、これからチームを結成しようと思うクリエイターさんが気をつけるべきポイントについて、河野冬樹弁護士(@kawano_lawyer)監修のもと、まとめました。

これからチームで仕事を獲りたいと考えている皆様のお役に立てたら幸いです。

1.クリエイター同士でチームを作るなら契約書は作っておけの巻

クリエイターチームを結成する際、まずやらなければならないことがあります。

それは「メンバー同士の関係を法律的に整理すること」です。

主な理由は次の2つ。

①チーム(除く法人)名義では契約書が作れないこと
②仕事上のトラブルが起きたときに「詰み」が起きやすくなること

まず民法上、法人を除く「団体」は契約の当事者にはなれません。つまり企業様と契約する場合、法人成りしない限りはチーム名義では契約書を作れないということです(①)。

筆者も実際に経験して一瞬血の気が引いたのですが、これってすごく怖いことだと思いませんか。なんといっても契約書なしでクライアント様と取引をすることになるのですから。

もちろんメンバー1人1人と企業様が個別に契約を結ぶということはできます。しかし、そうすると今度はメンバー間のつながり、すなわち「横の関係」の問題が出てきます。少なくとも契約上はメンバー同士の間になんのつながりもないことになってしまうからです。

そうなると必然的に誰が責任者なのか、プロジェクトに伴って発生した権利や義務が誰に帰属するのかなどの点もウヤムヤになってしまいますので、トラブルが起きたときに「詰み」が発生しやすくなります(②)。

というわけで、安心して仕事を受けるためにも、メンバー内部の関係についてあらかじめ法律的に整理し、きちんと契約でコントロールしておくべきなのです。

あくまでもこれは個人的な見解ですが、特にお金が動くような案件であればメンバー間で契約書まで取り交わしておくべきだと思います。

2.請負か組合か、それが問題だ

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先ほど「メンバー同士の関係を法律的に整理してみよう」という話をしました。

クリエイターが法人以外の形でチームを結成しようとする場合、主なやり方として次の2パターンが考えられます。

①元請・下請パターン(請負契約)
②組合パターン(組合契約)

前者は1人がリーダー兼発注元(元請)となり、他のメンバーを下請とする形で仕事を投げる方式。

後者はメンバー全員で仲良く手をつなぎ、「組合」という名前の1つの運命共同体を作るイメージです。

以下順番に解説します。

(1)リーダーはオレ様だ!ピラミット型構造で組織を作る場合〜元請・下請パターン

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便宜上、1人を元請、他のチームメンバーを下請とする形で仕事をこなすパターンです。

まずクライアント様とリーダーが契約を交わし、リーダーが各メンバーと請負契約を交わします(※このときクライアントの立場から見ると、リーダー以外のメンバーはいわば孫請けということになります)。

元請・下請パターン最大のメリットは、人間関係が比較的シンプルということです。リーダーだけ固定で、あとは案件の内容に合わせて毎回違ったメンバーに仕事を振るということもできます。仕事を獲ってくる人が固定されている場合は、このパターンもアリかもしれませんね。

ただしデメリットもないわけではありません。

元請・下請パターンでチームを組んだ場合、クライアントと直接契約関係にあるのはリーダーのみです。他のメンバーはいわば下請ポジションになるので、クライアントとは何の関係もないということになります。

そのため、リーダー以外のメンバーの行動をクライアントが直接コントロールできませんし、何かトラブルがあったときにリーダー1人に責任が集中するおそれもあります。

たとえばクライアントが未払いを起こしたときを考えてみましょう。

法律上はリーダーがみんなを下請として使っている構造になるので、リーダーにはメンバーへの報酬支払い義務がある。しかし元手となるクライアントからの入金はない……うーん、なかなか悲惨な状況になりそうですね。私がリーダーの立場なら泣きます。

また著作権についても、クライアント視点で見たときには問題が起こる可能性があります。今、直接取引している相手イコール成果物の著作権を持っている人とは限らないからです。

このように元請・下請パターンでチームを作った場合、結果的に著作権の権利者が誰かが見えにくくなってしまうという側面があります。

さらに、リーダー以外のメンバーが仕事をとってきた場合、営業してくれた担当者と実際の契約相手が違う…なんてことも起こり得ます。

そのためクライアントにとっては、余計なコミュニケーションコストが増える、予期せぬ著作権トラブルに巻き込まれる、といったリスクが出てきてしまうのです。

(2)みんなで仲良く運命共同体〜組合パターン

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組合パターンは、民法の組合契約を利用してチームを作るパターンです。

組合契約とは、特定のプロジェクトや仕事を遂行するために、メンバー同士が財産や労働力を少しずつ出し合う契約のことをいいます。そして組合契約によって作られた団体(チーム)のことを組合といいます。

組合の特徴は、契約によってメンバー同士の横のつながりができていることです。誰かがやらかした時はメンバーみんなで責任を負うことになるので、責任の所在もはっきりしています。

また会社のように、代表者を決めたり、役職を振ったりすることもできるので、各自の役割分担もしやすい。

さらに代表者は他のメンバー全員を代表して、さまざまな契約を結ぶことが可能です。このときの契約によって背負う義務は組合、すなわちメンバー全員に帰属しますので、実質上は組合が契約の当事者になっているのと同じような効果が期待できます。

特に大きなプロジェクトを請け負った場合やチームのメンバーが固定されている場合には、おすすめの方法といえるかもしれません。

3.クリエイターがチームで作った作品の著作権について〜基本的な考え方〜

さて、ここまではクリエイターでチームを作る際の契約を中心に話を進めてきましたが、もう1つ絶対に忘れてはいけない問題があります。それは、出来上がった成果物に対する権利(著作権、著作者人格権)の問題です。

で、ここからが厄介なところ。

チームで作った成果物に対する著作権・著作者人格権の帰属先はチームの形態ではなく、出来上がった成果物の性質および実際の創作プロセスにおける各メンバーの貢献度によって変わってきます。

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というわけで、場合分けして考えなければいけないんですよね。ここでは基本的な考え方を、ざっくり紹介します。

(1)共同著作物になる場合

2人で1枚の絵を描いた場合のように、各自が制作を担当した部分をバラバラにして考えるのが難しい作品ってありますよね。こうした場合、出来上がった作品は共同著作物といわれるモノになります。

この場合、著作権も、著作者人格権も、制作に関わったみんなのモノ(共有)になると考えられます。そして共同著作物の場合、著作権も著作者人格権もみんなで行使することになるのが原則です。自分以外の制作者のクレジット記載を落としたり、自分1人の判断で使用許可を出したりすることはできません(※ただし著作者人格権については、みんなで話し合って代表者を1人決め、その人に権利の行使を任せることもできます)。

(2)個々の成果物が独立している、あるいは分離可能な場合

個々の成果物が独立している、あるいは分離可能な場合は、その部分については作ったクリエイターさんが著作権の権利者になります。著作者人格権についても同様です。たとえばLPに掲載された広告マンガを具体例として考えてみるとわかりやすいと思います。

(3)成果物が、原著作物・二次的著作物の関係にある場合

シナリオをもとに漫画を描いた場合のように、制作した制作物が原著作物(原作、原案)と二次的著作物(原著作物をもとに作られた作品)の関係になる場合があります。

その場合、原著作物については原著作物を作った人が、そして二次的著作物については二次的著作物を作った人(+原著作物を作った人)が、権利を持つことになります。

4.チーム結成は慎重に…!

クリエイターにとって、表現の幅が広がる異業種コラボは魅力的なものです。ただ後述するように著作権の問題も絡むことから、結果的にメンバー同士の関係が複雑になる可能性もあります。

さらに、ややこしいのは同じクリエイターでも業種にとって著作権への考え方がまちまちなこと。たとえばWebデザイナーやWebライターはサイト更新の都合上、「著作者人格権の不行使」についても比較的寛容に構えている方も多いような印象があります。一方、イラストレーターや漫画家さんの場合は「著作権人格権不行使条項ダメ絶対」がデフォルトです。

このように同じクリエイターでも、業種によって「業界の常識」がまったく違います。これからコラボを始める方は、この点にも十分に注意が必要なんじゃないかなあと思う次第です(ライター私見)。

5.チーム滅亡の原因は「不公平感」〜「カネと負担、権利」の分配問題を考える

法律論とはまったく関係ない話になりますが、チームが揉める最大の原因は「カネと負担」の分配です。

行動経済学によれば、人は「不公平さ」というものに本能的に強い反感を抱く生き物であるらしく、お金や負担の面で不平等があるとチーム内部で争いが起きる危険が高くなります。

実際に、こうした内輪もめが原因で崩壊するチームは業種を問わず後をたちません…(共同運営の法律事務所や司法書士事務所も例外では……ゲホゲホ

それゆえに「公平なチーム運営・ルール作りを心がけること」こそ、チームの内部崩壊を防ぐための最大のポイントといえるかもしれません。

事前にどんなに役割分担や報酬の分配方法についてきちんと取り決めておいたとしても、想定外のイレギュラー案件の打診を受ける可能性はあります。そして、ここでメンバーみんなの話し合いをスムーズに進めるためには、日ごろの信頼関係が欠かせません。すでに不満を持つメンバーがいた場合、話をまとめるのが途端に難しくなります。

さらに、著作権関係に関しても、争いの火種になる可能性がある。

これは河野先生が「注意するべき点」として挙げてくださったことなのですが、著作権や著作者人格権は実際に創作に関わったメンバーにしか発生しません。

つまり、クライアントとの交渉や営業といった創作活動以外の仕事を担当しただけのメンバーには出来上がった成果物に対して何の権利もないということです。

これは、チームで仕事をする上では非常にまずいと思うのですよね。著作者人格権については譲渡ができない権利なので仕方ないとしても、成果物の著作権だけはメンバー全員の共有にしておくとか、そうでないなら報酬の取り分を多くしてあげるとか、創作をしていないメンバーに対して何らかの手当てをしておかないと多分、後で揉めます

そう考えると、チーム内の契約関係であれ、著作権関係の取り決めであれ、最初のルール設定は非常に重要なものといえるでしょう。誰かが一方的に有利もしくは不利な内容のルールになっていないかどうか、第三者にチェックしてもらうのもアリかもしれませんね。

おまけ

ある日の昼下がりのこと。某勉強会の休憩時間中に、河野先生がニコニコしながらおっしゃいました。

「この間、クリエイターチームの話していたじゃないですか? そのうちの共同著作物なんかのパターンでね、もし作者の1人が死んじゃって著作権の相続が発生したら…」

ええと、もともと著作権が共有になっている状態で? しかも相続まで起きるってことですよね? 

先生、楽しそうな顔でなんておそろしいことをおっしゃるのですか。というわけで、次回「著作権と相続」に続く(かもしれません)。

謝辞

今回も、監修をお願いした河野先生には大変お世話になりました。そもそも本記事は、ライターが先生に法律相談を持ちかけたところからスタートしており、本記事で書かれた内容の大半は先生からいただいたご回答に依拠するものです。改めてお礼申し上げます。

河野先生Twitterアカウント
@kawano_lawyer
Webサイト
https://kawano-law.net

カバーイラストについて

素敵なカバーイラストは本文にもチラッと登場した、はこしろさんの作品です。「はこしろちゃん、ヴィクトリア朝好き…だよね? 好き? ああよかった。じゃあヴィクトリアンっぽい感じで頼むわ。あとホームズ」という筆者の超適当なオーダーに応えてくださり、ありがとうございます。

はこしろさんTwitterアカウント
@white_cube_work

ライター参考文献

「基本講義 債権各論Ⅰ 契約法・事務管理・不当利得」(潮見佳男/新世社)
「リーガルクエスト 知的財産法」(愛知靖之、前田健、金子敏哉/有斐閣)


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グータラでリーガルなこたつライター。好きなものはコーヒーとおふとん、ハーゲンダッツ、プリン。書評書きや読書会主宰の顔も持つ。慶應大学法学部法律学科出身。

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創作活動がお仕事になるのが嬉しい1年目。でも少し気持ちに余裕のできた2年目から、少しずつモヤモヤや不安も増えてきた。そんなクリエイターさんのために、クリエイターに身近な法律問題をテーマにマガジンを作ることにしました。今のところ【弁護士監修】の記事がメインとなる予定です。

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