詩を暗記すること

以前に「万葉集やダンテの詩を暗記すると、相応しい状況に直面した時にふと頭で詩を詠んでしまう」というお話を聞いた。

当時はそんなこともあるんだなと軽く流したが、上智大学の名誉教授でいらっしゃったピーター・ミルワード神父の「シェイクスピア物語」を拝聴している中でも「嵐に遭遇した時にふと頭にシェイクスピアの一節(該当箇所は忘れた汗)が頭によぎった」とおっしゃっていた。

詩を暗記することに価値があることが分かりつつあるとともに、詩は同時に歌でもあるので何回か声に出していると覚えてしまう力がある。これは元々紀元前8世紀のホメロスの『イリアス』や『オデュッセイア』が文字ではなく、歌あるいは声として伝承されてきたことに由来するだろう。

『イリアス』冒頭の「Menin aeide, thea, Peleiadeo Achileos」は古代ギリシャ語で全く意味が分からないが、数回声に出して読んでみると自然と覚えてしまう。

そもそも「古典」は英語で"Classic"だが、ラテン語で「艦隊」を意味する"Classis"に由来する。ラテン語が公用語だった古代ローマでは国家の危機に際して艦隊の寄贈を求めた。つまり、艦隊(Classis)=古典(Classic)は危機に際して必要なものだということ。古典は人間の精神を艦隊のように強固にするものとも言える。

前述の通り、ミルワード神父が嵐の中で古典であるシェイクスピアの一節を想起したのは偶然ではなく、必然だったのだろう。


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