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美との格闘(フランス・パリ)

フランス パリ4日目


ピカソ美術館

仮にピカソについてどう思うか誰かに聞いたら、「変な絵だし理解出来ない。強いて言えば『ゲルニカ』は知ってる」って人が大半ではないだろうか?

僕は大学で現代美術の授業をかじったこともあって、少し興味があったため勉強として訪れた。ただ、勉強不足で忘れてしまった部分も多いので、上記の疑問を払拭することは出来ないので悪しからず…。

まず印象としては、①所蔵作品が多いこと ②ピカソの絵は不可解なものばかりではないこと ③ピカソが絵画以外の作品も手掛けていること
の3つに大きく分けられる。

①所蔵作品が多いこと
ピカソは91歳まで生きていたため、それだけ作品数が多い。そのため、彼のストーリーとともに作品を鑑賞することが出来る。

まずはこちら。

早速分からん!それは馴染みのないキュビズムという技法が用いられているため。

キュビズム…それまでの具象絵画が一つの視点に基づいて描かれていたのに対し、いろいろな角度から見た物の形を一つの画面に収めた。(wikipedia)

つまり色んな角度から見たものを繋ぎ合わせた常識破りな技法である。だからどこに口があってもいいし、首が縞模様になっててもいい。

他にもいくつか

ピカソはとにかく絵で感情を伝えたいという信念を持っていた。それはスペイン内戦に対する憤りを反映した『ゲルニカ』にも顕著に表れている。ここにはその一つ、睡眠を客観視するテーマのもと描かれた作品が数点ある。彼にはシュルレアリスムという無意識を表現する時代があり、睡眠は無意識そのもの。その無意識状態を伝えるという意味合いで描かれたのだろうか? シュルレアリスムが気になる方は調べてみて下さい!

②実は意外にも奇抜な作品だけではない。

自画像

もう一点

こちらは一見写実的だが、左の女の非現実的な首の折れ方はやはり特徴的。

③ピカソはアフリカ彫刻を集めていて、それがキュビズム作品の源ともなった。『アヴィニョンの娘たち』は有名。

そのためかは分からないがピカソ自身も絵画以外の作品も手掛けており

理解は全く出来なかったが、彼の新たな側面を見ることが出来た。

美術館自体は大きくはないので1時間程で回れるはずだが、一つ一つ理解しようと試みていたため3時間程掛かってしまった上に、疲弊してしまった。楽しいとは言えないが、絵画と格闘する有意義な時間だった。

オススメ度 ★★★★★

オルセー美術館

印象派好きなら行く以外の選択肢はない。加えてゴッホやゴーギャンなどポスト印象派、それ以外の絵画も数多く展示されている。

入るとすぐに農村絵画で有名なミレーの絵画が迎えてくれる。

これらの写実性から、ありのままの農民の姿、田園風景を伝え、表現したかったことが読み取れる。しかし一方で、ほのぼのとした印象を与えてくる。

自分なりに分析してみると、美化せずリアルに描かれる過酷な労働に耐える農民の姿が、対極的な長閑で豊穣な風景と絶妙に調和しているからなんだと感じた。仮にも、厳しい自然が描かれていたなら、農民の過酷さが浮き彫りになるだろう。

残念ながら僕が訪れた時期は、最も有名な『落穂拾い』がアムステルダムに移動していたそうだ…。

ミレーは僕の数少ない好きな画家の一人だ。

ルノワール

続けて僕が印象派の中でも一番好きなルノワール。モネやピサロ、マネにはない淡さが特徴的だと思っている。

夢の中にいるようで鑑賞していると眠くなってくる。まさに夢心地。

他の印象派たちの作品とどう違うのか分析した。いくつかの特徴に分けてみた。次の作品はその特徴が顕著な気がしている。

①光の表現

細部まで絵を観察してみると色んな所に光が散りばめられていることに気がつくだろう。これは一色に対して微妙に異なる無数の色を配色することによって、光の表現を可能にしている。

②輪郭

輪郭ははっきりしているようで、そうでないようにも見える。部分的な特徴だが、背景の色と少し変えた上で輪郭を表現している。

③筆使い

例えば服のシワ一つとっても、一本一本違う色を用い、動きを見せる筆使いがなされている。

僕が鑑賞した中では大きくこの3つが彼の作品に魅力を感じる所以だと思った。

もはや色使いのみで人や物も表現してしまえるとすら思えるし、色に対する興味をそそられ、帰国後に色についての本を読みあさってみようと思う。

以降は簡潔に…

ピサロ

淡いタッチながら輪郭は比較的しっかりしている。ルノワールとは対照的に光による淡さは用いられていない。

モネ

続いてこちら

これらの作品はモネの中では一番好き。このテーマの作品は他にもワシントンD.Cのナショナルギャラリーにも展示されている。

実は3枚目のモデルの女性は妻カミーユだとされ、1枚目では輪郭だけで顔が描かれていない。これは妻が亡くなった後に描かれ、モネの心情が反映されている。それでもなお、明るく豊かな自然に囲まれた心暖まる作品になっている所に惹かれてしまう。

モネについては以前のパリ編のオランジェリー美術館の所で書いているので省略。

ポスト印象派

ポストは″後″という意味で、印象派の作風を取り入れつつも、そこから脱して新たな作風を作り出す人々のことを指す。

ゴッホ

面白いのが絵画に文字が書いてある。キリストの磔のINRIが書かれた宗教画以外では初めて見た。ちなみに、INRIは「ユダヤ人の王」という意味で、キリストの罪のこと。

驚くのは、作品の力強さと遠近法を無視した所にも表れている大胆さである。直前に真逆の印象派の絵画を見ていたため、その差が明確にわかる。

3時間、時を忘れて鑑賞していた。帰り道に見上げた空に浮かぶ雲は淡く見えるような気がした。

オススメ度★★★★★

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