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一輪の花に込められた想い

偶然見つけた温もり溢れる空間

倉敷の大橋家旧邸という場所を見学した時のお話。

大橋家旧邸は、江戸時代に財を成した大地主の邸宅で、重要文化財に指定されている。

私はその存在すらつゆ知らず、倉敷を散策していた。その途上で案内板を見つけ、吸い込まれるように入った。

一歩足を踏み入れると、外界からは画された静寂さに包まれ、おしとやかな雰囲気が広がっていた。
まるで風情漂う倉敷の街に、一人上品に佇む艶かしい女のようであった。

一通り見学を終え、縁側で涼んだり、座敷に座りながら無心になったりした。

たった、一言

驚くことに、気がつくと1時間ほどが経過していた。
その場を後にしようとすると、管理人の女性が親切にも声をかけてくれ、詳しく館内を解説して下さった。

その中で彼女が放った一言が深く心に染み渡った。

「お客さんに喜んでもらうのが嬉しくて、毎日毎日お花を入れ替えていて、今日もほら、このお花も、あのお花も、きれいでしょ?」と。

私は悔いた。「空間」に惚れ惚れとしただけで、「お花」には全く目を向けていなかったことに。

心を込めて生けられたお花を見過ごしておきながら空間に惚れ惚れとしていた自分は情けない。
たしかに、よくよく見るとお花一輪一輪は色鮮やかに美しく映った。同時に管理人さんの温もりある想いもそこに見たような気がした。

彼女は24年間それを続けているそうだ。お客さんに喜んでもらうために、日々想いを込めて。たとえコロナの状況下で観光客が疎らでも。

何気なく大切なことを見過ごしていること、そして当たり前一つ一つに想いを込めることの愛おしさを学んだ。

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