6日連続の演奏会記録

普通にフルタイムで会社員をやっているにもかかわらず、計画性のなさにチケットをポチポチ取っていたら6日連続で演奏会通いになってしまった。
今回はそんな愚行を犯してまで聴きに行った記録を簡単に書き留めておこうと思う。

【1日目】チョン・ミョンフン×東フィル 『オテロ』

この日は1回目の『オテロ』へ。表題はシェイクスピアの『オセロ』のことだが、私が最も好きなシェイクスピア作品をオペラ化したものなので、とても楽しみにしていた公演だ。

しかし、素晴らしい演奏であることは冒頭を聴いただけでもわかったのだが、前日の寝不足で何度船を漕いだことか…。とりあえず2回目の鑑賞が後日控えていたので、初日は全体を把握することに徹した。


【2日目】大野和士×都響

・ニールセン フェロー諸島への幻想旅行
・グリーグ ピアノ協奏曲
・シベリウス 交響曲2番

これはなんと言ってもシベリウス2番が素晴らしかった。以前同曲を音大の学生が演奏するのを聴きに行き、一切心揺さぶられずこの曲には抵抗感があったが、本演奏会で印象がひっくり返った。演奏会の印象というのは、会場・指揮者・奏者・観客・そして自分のコンディションという色々な要素が絡み合って形成されるが、やはりプロとアマの差があるのだろうか。
清濁がともにあるからこそ美しい音楽が築けるという新たな境地をこの曲は感じさせてくれる。

【3日目】キンボー・イシイ×N響

・ラフマニノフ ピアノ協奏曲2番
・リムスキー・コルサコフ シェヘラザード

これはなんと言ってもラフ2に驚嘆。ピアニストであるガルシア・ガルシアのパワフルかつ静謐さも忘れないタッチができる振り幅がすごいなと。ラフ2の情感を余すことなく表現されていて印象的。
3楽章で苦して甘美な「憧れ」を体験できた。


【4日目】鈴木秀美×山響

・ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲
・シューベルト グレイト

これはピリオド奏法ゆえなのか分からないが、終始あまり乗れず…。一方で隣のおじさんはノリノリだったが、演奏中に体激しく動かされると迷惑なのでやめてくれ…。


【5日目】チョン・東フィル 『オテロ』

この日の『オテロ』は前日にたっぷり睡眠をとったため、鑑賞中に一切眠気を感じず。会場のマナーも良し!

これを聴くためにオペラ通いしてるんですよ、と言いたくなるような熱演。

マエストロはこの作品を「オペラ音楽の山頂」と言ったが、まさに。音楽は感情を描くとよく言われるが、後期ヴェルディほど多様に、そして深く人間の感情を炙り出し、繊細に音楽に表した人はいるのか(オテロが妻を絞殺する直前の音楽なんかは特に)。以前、ヴェルディを知らない時期にシェイクスピアを何作か読んだ時に同じような感想を持ったことがある。『オテロ』はシェイクスピアの4大悲劇の一つを題材にしてるわけだが、ヴェルディはシェイクスピアに出会うべくして出会ったのだと思う。決して偶然ではない。

彼とよく対比されるのがワーグナーだが、その目指すところは感情というよりも気高い精神なような気がする。金管の使い方に分かりやすく両者の違いがよく出ているかなと。

何ヶ月か前に聴いたヴェルディ「リゴレット」の大名演に驚かされたばかりだが、この「オテロ」も本当素晴らしかった…。

【6日目】トーマス・ダウスゴー×PMF

・メンデルスゾーン ヴァイオリン協奏曲
・ブルックナー 交響曲9番

前半のメンデルスゾーン、これは神技ですか…。ソリストの金川真弓さんが上手すぎて、曲というよりはその技巧と表現に心を奪われていた。ヴァイオリン協奏曲というのは、ベートーヴェンであろうと、ブラームスであろうと、誰であろうと基本苦手で眠気を誘われることが多いのだが、この演奏は別格。ヴァイオリンが苦手な連れも、この演奏には大変感動したそう。弱音から強音への移行、一寸の乱れなく一直線に響く弦の音、協奏曲でありながらオケに埋もれない強靭な音、あぁまた聴きたい。

後半のブルックナー9番も良かった。マエストロは暗譜で完全に場を掌握。テンポは早めで、その推進力が微細なミスを気にさせない(ピッツィカートや金管のミスは気になったが)。

この曲は真っ直ぐに神を見ていた交響曲8番までのブルックナーとは一線を画していて、死の淵と楽園を行き来しながら神を探すブルックナーの姿が目に浮かんだ。アダージョ楽章では虚空を眺め、そして終盤では救済感に浸り、自分がホールにいるのではなく天に昇ったかのような気分になった(もはや宗教的体験と言えそう)。高い水準のオケとホールで聴くブルックナーは素晴らしいですな!!!

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