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アンソニージャクソンの話でもする。ポングの息抜きトーク(16)

【知ったキッカケはジャズへの悩み】


十代の頃からず~っと憧れ。ミーハーなぐらい好き。自分の中でのアイドル的存在。尊敬、畏怖の対象。

【アンソニージャクソン】

振り返ってみると知ったキッカケ、入り口は意外とネガティブな理由だった気がしないでもないかも?

音楽学校に通い始め、そこで突き付けられた難題。

「ジャズをやる!」

完全にロックメタル野郎だった自分にとってジャズってのは天敵もいいところ。まさしく分厚い壁って感じでした。


ただまぁ『ジャズ』って音楽、ノリ、雰囲気について言えば、ルパン三世やカウボーイビバップみたいなアニメが好きだった為、全くの無縁ってわけでもなくそれなりに興味はありました。

当時、ジャコとかもすでに知っていたし、心構え的にも、

「せっかく音楽学校に入ったんだ!自分からじゃ絶対やらないような事こそやろう!」

なかなか前向きな姿勢、いっちょやってみっかと。


しかし・・・・

最初は本当、何をしたらいいのか全く分かりませんでしたね~。

ベースラインの作り方は勿論、何より一番の違和感、凄まじいまでの壁を感じたのは、

「エレキベースでどうしたらいいの?」

これがも~~、どうにもなりませんでした。

「まずこれ聴いてみな!」と、先生からおすすめアルバム、凄いプレイヤーを教えてもらったところで、そこから聴こえてくるのは、

「ボン、ボン、ボン、ボン…」

退屈でよく分からないベースなワケです。


今となっては「まともなオーディオで聴け!」って言えるし、その凄さも魅力も分かります。

でも、やっすいしょっぼいラジカセ、小さなテレビのスピーカーから音楽を聴く生活だったあの頃では、ジャズのベースは一体何をやってるんだか何が恰好いいんだか、ま~ったく理解できませんでした。

それをお手本にしろと言われてもさっぱり分からない憧れない。真似しろったって、そもそもロクに聴こえてないんだから、真似のしようもない。

当時使ってたベースはかった~い木材、アクティブで出音もそのまんまな物ばかり。タッチを変えるって発想も皆無だったし、手も足も出ないとはまさにあの事。


そんな流れがあって、

「これじゃ駄目だ!どうにもならねぇ!映像が欲しい!資料が欲しい!どうにか参考になるものを見つけにゃならん!!」

と思い悩んで辿り着いたのは、

【ミシェルペトルチアーニトリオ】

そして、

アンソニージャクソン】

いやもう、感動も感動でしたね。

今聴いてもなお、超感動させられます。


【まさに異次元の存在だったアンソニージャクソン】


ペトルチアーニトリオにハマり、圧倒的な存在感にやられたアンソニー。

「よし!じゃあ俺もこれを参考にするぞ!」ってなったかと言うと~?

「ま、正直無理だね!!」

完全にこっちでした。


6弦ってだけでも困難の対象。しかもあのフォデラのコントラバスギター。タッチも縦横無尽。

自らの手で全てサウンドコントロール、というだけでなくボリュームペダルも駆使したり、そんなの当時の自分じゃ全く手の出しようがありません。

ソロのフレーズも何かよく分からない。フレーズも感覚もとても真似できるモンじゃない。何から何まで違いすぎる。

ペトルチアーニのピアノも、スティーブガッドのドラムも、学校でやる事になったジャズのそれとは全く違うそれ。

「めちゃくちゃ参考になった!」

って言えればかっこいい話になりそうだけど、結局、どうにもなりませんでした。


それでもです。

「エレクトリックでここまで出来るんだ!」

希望、概念を与えてもらったのは本当に大きい。

毎日がジャズへの絶望で満たされてた少年にとって、これほど勇気と力になった人はいません。

「何だかよく分かんない….これまで聴いてきたベースとは違いすぎる….でもすげぇ!この人半端じゃねぇ!ベースってここまでやれるんだ!俺も何かやってやるぞ!」

十分すぎるほどもインパクト。凄み。深い魅力。未知のワクワク感をアンソニージャクソンからこれでもかともらいました。


ちょっと言葉悪く言ってしまえばですよ?

「眼鏡かけた太ったおっさんが座ったまま何か変なベース弾いてる」

かっこよく見える要素が1mmもなく思えそうじゃないですか。

ロックとメタル一辺倒、性格悪く反抗心にも満ちたクソガキがね~、そんな人に憧れだすとか有り得ないっちゅー話です。

それでも違うんですよアンソニージャクソン!

メッチャクチャかっこよく見えちゃう!圧倒されちゃう!ソッコー尊敬!焦がれてやまない!その事実のとんでもなさって凄すぎませんかと!!


「生き様」って簡単に言うのも安っぽく聞こえちゃいそうだけど、でも本当、それが出てなきゃあんな魅力を出せるわけがない、まさにその塊、象徴たるプレイヤーがアンソニージャクソンその人なんじゃないかと思います。

聴いて凄い。見るともっと凄い。知れば知るほど引きずり込まれる。純粋なプレイヤーそのものであると同時にスター性も備えた異次元な存在。

いやほんと、かっけぇんですわ。


【キャプテンフィンガーズの衝撃】


一気にハマッてしまったアンソニージャクソン。

となれば当然「もっと聴きたい!知りたい!」ってなります。

「先生!アンソニーの凄いやつ教えて下さい!」「じゃこれ聴いてみな!」で返ってきたアルバムが、

【リーリトナー&ジェントルソウツ】

そして難曲、

【キャプテンフィンガーズ】

こいつにまたとんでもない衝撃を受けました。


ペトルチアーニトリオでのどっしり重厚なサウンドとプレイからは一転、フランジャーをかけてピックで軽快に攻める、超絶バリバリにキメまくるアンソニー。

落ち着いたベースの人なんだと思いきや、スピーディーに駆け抜ける。ガンガン弾くんだと思いきや、ゆったりどっしり伸びやか、イメージ通りなアンソニーも当然の如く出てくる。

どこで何を弾こうがアンソニージャクソンその人。もうどうなってんだと。

「これも6弦で弾いてるんだ!」と思いきや、ジェントルソウツはまだ4弦の時代。「楽器が凄いからあんな事できるんだな….」って幻想とか言い訳もブッ飛ばします。


もうほんと、たった二つのバンドを知るだけでこれほどの情報量をぶつけられる人って、そうそういるもんじゃないでしょう。

しかも、ソロアルバムでもリーダーなのでもなく、あくまで【ベース】ってポジションでそれをやってのけると来たモンです。

「もっとベースの凄さを知りたい!ベースの可能性を探りたい!」と躍起になっていたポング少年。そのアグレッシブで自在な姿勢にやられないワケがありません。


キャプテンフィンガーズを聴くだけでも価値がありますが、このアルバムは全部通しで聴いてこそのまさに名盤。

ガンガン攻めたベースサウンドだけではなく、アンソニーらしい難解なアプローチも炸裂。スライドバーを使用したユニークなアプローチも入れるなど、遊び心も満載。

ほんと凄いんっすよ!!


【ミシェルカミロトリオの衝撃】


・ミシェルカミロ

・オラシオエルナンデス

・アンソニージャクソン

BS NHKでやってたモントルージャズフェスティバルで知ったこのトリオ。

これがも~神懸かり的!!

さらに深まるアンソニーワールドにやられました。


自由自在なタッチ、超絶技巧の駆使なんてもう当たり前。スーパーとんでもないピアノ&ドラムにわけ分かんなく絡んでいく様は驚愕そのもの。

「ピアノトリオって事は大人しいんでしょ?っていやいや!こんな手加減なしのゴリバキサウンドそうそう聴けるもんじゃないよ!!?」

声を大にしちゃいます。

かと思えば、ボリュームペダルを駆使したサウンド、アタックの世界とは異なるその伸びやかで美しい、魂を抜かれるようなサウンドに涙腺も緩んできてしまうと来ました。

あれはほんと脳天やられます。

電気走ったって感じ、未だに覚えてます。

言うまでもなくソッコー、ボリュームペダル買いに行きました。


そして、ブルーノート東京にこのトリオがやってくると来たモンですから、これまたソッコー予約しましたよ。

初ブルーノートはこのミシェルカミロトリオ。前から二列目、目の前でこれでもかと体感した思い出、一生忘れないでしょう。

初めて目撃したアンソニージャクソン。

圧倒的存在とその様に、

「ベースの魔神や….」

そんな言葉が思わず浮かんできてしまいました。

あの異常な集中力。別空間に飛んでっちゃってる表情。全身全霊込めて演奏する姿。隠しようもなく放出されるエネルギー。

「これが本物か!!」

終わった後にはもはや放心。


実際に観て驚かされたのは、そのダイナミクスのコントロール。

大きな音は勿論、ものすご~く小さな音まで自由自在、全神経を集中して縦横無尽に表現する様、あれは生で観ないと絶対分からないと思います。

音色自体に関して言えば実のところ、そんなに綺麗なモンじゃない印象あるし、ボリュームもトーンもない楽器の特性なのか、タッチノイズから何から剥き出しに再生される感が強いのも確か。

一方、だからこその壮絶なまでに力強い、生々しく豊かな表現が出来るんじゃないか、納得させられるしかありません。

バッキバキなぐらいの特性なんじゃないか、でも涙を誘うってぐらいに美しい音を出せる、静寂を感じさせるぐらいのアコースティックサウンドを表現できる、一体どんな次元でコントロールしてんだって話ですこれ。

人間、あそこまで高められるのか?

エレクトリックベースとはそこまで行けるのか?

神か魔か。魔なる神な人か。

まさしくベースの魔人。

や~、あれは凄い一日だった!!


【アンソニージャクソンを語ると長くなる】


まだほんのさわりって感じか、その出会いと憧れについてだけ語った気もするアンソニージャクソン。

まぁでも、今回はひとまずこの辺で。

そのタッチの使い分け、音のコントロール、細かな部分まで話し出すと、たぶん止まんないっす。

フォデラのコントラとかにしても未だに欲しくなったり、楽器やアンプについても沢山ネタが出てくるのは間違いありません。


さてはて、如何にもげに語ってるようですが、コピーとかした曲って実はあんまり無いんですよね。

【ドナルドフェイゲン】【ナイトフライ】

あのアルバムの【I.G.Y】とか【ルビーベイビー】なんか大好きだし、コピー入門にもおすすめだけど、正直かなり地味かも?

派手なやつだったら、

【アルディメオラ】【ツアーデフォースライブ】

【スペイン高速悪魔との死闘】とか必聴だけど、ゆったりさせるところは徹底的にゆったりさせるのが何ともアンソニー。

何と言うか、アンソニーをコピーしようと思ったら、

【アンソニー概念】

そこまで取り込み真似して成立すると言うか、そこまでやらないと意味が無い気がするってか、畏怖しすぎちゃう、重く捉えちゃう部分があったりして?


冒頭のジャズ話に戻ると、ブリッジミュートかまして親指で弾くってのを真似してみたものの、ま~、自分がやると軽かったこと軽かったこと。

音は抜けない、聴こえてこない、低音も出ない、カスみたいなベースなっちゃってビックリ。

今でこそ使える奏法として身に付けられましたが、浅く真似するだけじゃこれっぽっちもらしくならない、散々に痛感させられるのもアンソニージャクソンの凄さ。

フェンダーだろうが、ギブソンだろうが、フォデラだろうが、アンソニーはアンソニー。何を弾いてもあのサウンド。あのプレイ。

素晴らしすぎます。


そんなワケでまた次回があったらよろしくどうぞ。

アンソニー語りは長くなるぜい!!


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