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「個性的になりたい!」って実は同じ考え方な気もする。

【嫌悪してた『普通』が普通じゃなくなってきてる?】


「普通に弾くのはつまらない!」

「人と同じは嫌だ!」

「ベースって凄いんだぞ!」

なんて思うのはいいけど、それで肝心なるベースの旨味ってモンが失せていったら、何とも本末転倒。

ありがちな思考だけに、、と言うか、バリバリの当事者だったから笑えない。

罠、と言ってしまうのも、冒涜なようではあるが、実際、その罠にハマってしまった希薄なベースが珍しくないのか、地味~でフツ~なベースが意外なぐらい喜ばれたり、妙に納得される事があったりする。


特に意識するでもなく、ただルートをキープするだけでも、

「ベースらしいベース!」

なんて評価されたりもするのだから、ある意味、皮肉っちゃ皮肉。しかも一度や二度の話ではない、強い傾向、当たり前だって印象まである。

そう考えると、

「逆にもう普通が普通じゃなくなってきてるのか?」

なんて興味まで湧くかもしれない。

普通じゃなかったベースを普通に当たり前に見かけるようになり、【普通】だと認識してた方が逆に個性的になっちゃうのかって。


現実、友人に急遽サポートを頼まれた際、面白い体験をした。

前任者は、大手楽器店のイベントで優勝経験もある方で、相当な凄腕だろうと安心して頼んだところ、予想に反して大変な事態になってしまったそうな。

どうやら、派手なテクニックや客席に向けたパフォーマンスばかりを意識するスタイルだったらしく、時にはバッキングを一切放棄する事も珍しくなかったとか。

出音やタッチに関しても、普段からソロ用みたいに特化して作っているのか、いざバンドの中に入ってみると一瞬でかき消されてしまったり、ベースとしての存在感が全く無い。

とにかく周りの音を聴かない合わせない。タイムもグルーブもクソもない。どうやってもバンドサウンドにならない。そんなベースに懲りてしまったと。


その流れで自分が呼ばれたわけだが、

「あ~そうそう!ベースってそうだよな~!」

と、妙に納得されてしまった。

技巧的な事をやったわけではない。斬新に面白い事をやったわけでもない。アイデア豊富どこかむしろ、「つまんねー!」なんて言われてもおかしくないベースを弾いたとも思う。

でも本当、それが一番の正解だったりもするのだから、音楽ってのは恐ろしい。そして、多くの場面でそれを求められるのが、ベースという楽器の性でもある。

そこを放棄してしまい散々な評価になるのは、不思議な事でも何でもない。


フレーズのバリエーションが増えたり、指がよく動くようになったり、そうなるとついつい、何かやりたくなってしまう。

そこで抑えるかどうするか、エゴだろうと何だろうと主張するか、悩ましいところでもある。

得意ぶって話をしてるようだけど、前述した通り自分も、「これが俺のスタイルだ!」って同じような事をやってた当事者だったし、そこに拘りと誇りを持ってた時期があるだけに、他人事とは思えない部分が多々ある。

抑えるか、攻めるか、そのバランス感覚というのは、一生悩み続ける問題なのかもしれない。

ただまぁ、「刻みつまんねぇ!」とはもうならないけどね。


【変わった楽器を使ったり高音域を多用したり音域を拡張したって個性が確立されるわけではない】


ベースにはまだまだ多くの可能性が眠ってると思うのは間違いないと思うし、それを追及していく姿勢が素晴らしいのも間違いない。

一方、そんな無理に新たな何かを求めずともベースは十分良い楽器だし、地味に弾いたって楽しく満足できる楽器だよなって、それを心底実感するのも本音。

ギターや他の楽器へのコンプレックスを丸出しにするのもどうかと思うし、そのゆがみを持ってる当事者だけに、こじらせて旨味や魅力を見失ってしまうのも痛感してるから怖い。

無理に捻くれようとするのはもう何か違う。「個性!個性!」と意識して周りを過剰に気にするのもおかしな話。

そうやって迷い続けるってどうなんだろうと疑問が増えてきた。


弾けない人間が何言ってんだって話になるが、行き過ぎた超多弦ベースなど、自分はあまり惹かれない。

ゆうに10弦を超えるなど、正直、どう扱うべきか分からないし、ポテンシャルを引き出せる自信も全く湧きそうにない。

まず特殊であるのがアピールポイント、それを使うこと自体が目的になってしまう、そこにアイデンティティを見出すって感じになってしまうと、楽器としての存在意義は微妙になるように思えてしまう。

特に【ベース】として考えるのであれば、逆に足枷になってしまうだろう部分が多々気になっていく。

6弦時点でも、低音弦のハイポジションを使うのは難しくなるのだから、超多弦でとんでもないストレスになるのは容易に想像できる。

「超多弦と4弦、どちらかを一生の一本として選べ!」と言われたら、自分は何の躊躇いもなく4弦を選ぶ。大は小を兼ねるとはいかない。


「人と同じは嫌だ!」って思うのは本当によく分かる。何度も繰り返すけど、自分もその当事者だし、それで多弦ベースを長く愛用してきた部分もある。

「4弦なんか絶対弾かねぇ!」なんてずっと胸に抱えてきたし、一時期は7弦ベースをメインにするつもりでいたりもした。

しかし、個性を求めたはずが、その肝心の部分が薄まってしまってる気がする、道具の方が勝ってしまってる気がする、逆に縛られている気がする、そんな葛藤も多く抱えてきた。

「本当はあれ好きなんだけどあいつと同じはなぁ….」

「人と同じってのはやっぱ嫌だなぁ…..」

こんな感じに捻くれたり、そんな人も少なからずいると思う。

「個性が欲しい!オリジナリティを確立したい!」

非常によく分かる気持ちだ。


でも、よく分かるって事は、

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