マガジンのカバー画像

ウツボット

5
意訳:鬱bot
運営しているクリエイター

記事一覧

沈香

沈香

バスタブに映る月をぼんやりと眺めていた

彼女はもうそこにはいなかった

もう今日からは

自分のせいにしかできない

彼女の骸を盾に逃げていただけだった

最低なことに私は生きたかった

こんなにも

"私は不幸です"

と言わんばかりの顔を提げておきながら

決死の覚悟どころか

やり残したことすら定まらないまま

首が絞まって苦しくなって

体液がのぼったきたからか

直前に吸おうと試みた煙

もっとみる
22歳、私 没日

22歳、私 没日

迷いなくカーテンを開けられる確率
22%

𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄

同い歳を辞めるのが嫌で
23歳になりたくなかった

1番なりたくなかったものに
なろうとしている

なってしまう

もうすぐ もう間もなく

私は 彼女を追い越して

通り過ぎる

もっとみる
最愛

最愛

君のことを世界でいちばん嫌いな夜がある.

襟足を緑にぶち抜いたって

私は理想の自分にはなれませんでした

きっと

それは顔をいじれど

声を変えども

私を私たらしめる醜い髄がある限り

一生手に入らない

それは愛でした

そもそも愛されなかった私に貴女に

自分の愛し方などわかるわけもなかった

だから貴女は醜さをひとつひとつ治しても

ずっと切なかったのでしょう

救われると思った

もっとみる
何もない休日に米を炊く

何もない休日に米を炊く

夕に仕事に行き
明け方に帰り
昼に起きる生活を繰り返している

生活のルーティンが定まったのは
自分の中ではかなり大きな変化で

自由だけど多忙で
眠りは出来ても
ひと息つくのは難しいような

日々.

眩し過ぎる朝は
無理にカーテンを開けなくても良い

脱ぎ捨てられて床に散らばる服とか
朝起きて鏡に映る崩れた顔とか
捨て忘れちゃったゴミ袋とか

出来なかったことばかり
やけに目に付いてしまうな

もっとみる
落日

落日

古びた校舎、放課後。
5階の窓から突き飛ばした十五歳の絶望の数々を
日中の陽光を蓄えたアスファルトが
帳消しにしていく様をぼうっと眺めた日。

人前で話すことが憚られるような、
倫理から外れた空想論を並べては、
ゆるやかに、確実に。
青春、ひいては人生を無駄にしながら
私達は確かにそこで息をしていました。
絶望と安寧の間で、滲んで溶けて
ぐちゃぐちゃになって。

思えばこの時間が人生で1番幸せだっ

もっとみる