落日
古びた校舎、放課後。
5階の窓から突き飛ばした十五歳の絶望の数々を
日中の陽光を蓄えたアスファルトが
帳消しにしていく様をぼうっと眺めた日。
人前で話すことが憚られるような、
倫理から外れた空想論を並べては、
ゆるやかに、確実に。
青春、ひいては人生を無駄にしながら
私達は確かにそこで息をしていました。
絶望と安寧の間で、滲んで溶けて
ぐちゃぐちゃになって。
思えばこの時間が人生で1番幸せだったのだと
片割れは後に知ることとなるのでした。
本当はどこかで気づいていました。
私達は不幸でいて、不幸でないこと。
けれど不幸でいないと、かわいそうじゃないと
生き辛さに理由をつけられなかったから。
どこまでも気付かないふりして不幸な顔をして、
あらゆるものを睨みつけて文句を言ってやっと
私達は生きる活力と代えられたのでした。
これは 私と、あの日の斜陽と、
あなたとだけの秘密です。
死が希望そのものだった、私達のお話。
𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄
"このまま目覚めなければ良いのに"
と切望して尚迎える朝を、
もう数えることすら諦める程に繰り返している。
どけだけ不幸を嘆いても結局のところ他人事で。
人には人の地獄、私には私の地獄。
地獄を終わらせられるのは自分だけなのに、
毎日他人に期待をしている。
通り魔に刺されねえかな〜、とかね。
本当は別に死にたくはないのだ、
幸せに生きたいだけ。
だけど普通の家庭に生まれなかっただけで
一生普通の幸せは手に入らなくて。
何も知らない何も考えられない赤子の時点で
為す術もなく人生決まってんのウケるな、
どうしろってんねん。ハハハ…
生きていたいけど幸せに生きられる保証がないなら生きていたくないという複雑な心境を抱えて、
増えていくようで減っていく日々を確実に
使い果たしていく。その先に幸せはきっとない。
幸せに生きたいだけの私達は
こんなにも苦労してるのに、
何となく生きてるだけの人たちは随分幸せそうで、いいな。良いな。羨ましいな。
もしいつか、本当に人生を諦めたくなったら
一緒に連れてって。
私はいつでも死ぬ気でいる。
君一人で逝かせはしない。
𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄
拝啓 xxx
いかがお過ごしですか?
私は忙殺の日々を送っています。
でもこれには限界があるということを
とうに私は知っているのです。
大抵忙殺しなくちゃならない程辛いことがあって
苦しむのが辛いから逃げる為に
思考を放棄するために馬車のように働き詰める、
私の悪い癖ですね。
高校生の時から治っていない、
あの日からなにも進んでいません、私は。
日々は地続きです。地獄も然り。
二十一歳の私達は
学生の時に比べれば幾らか自由を手に入れ、
ほんの少し垢抜け(たと信じてい)て、
それでも尚、希死念慮は消えないまま
老けたからプラマイゼロやね。
どこに行っても結局何も変わらないのだと
絶望していました。
そうやってこれからも
過ごしていくのだと思いました。
二十二歳も────
(中略)
私は相も変わらず生きています、弱いから。
縋るものなど何も無いのに。
そうまでして生きたい理由など何も無いのに。
生きてしまっている、己の弱さの所為で死ねずに。
ひとりきりにさせてごめん。
早くそちらに行きたいです。
そう言いながら私は薄情だから多分きっと
生き延びて二十三歳になってしまう、
あなたを差し置いて。
出来ることなら私を怨んで、お願い。
叶うことなら連れて行って欲しい。
そして誰よりも愛しています、ごめんなさい。
親愛なるxxxへ
𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄
病める時も健やかなる時も
いつも隣にいる
"普通"という名の怪物。
平凡な家で生まれ育った人って
ヤバい大人が存在することすら
理解できてなかったりする。
"え?うちの親だってよく怒ってるよ?" みたいな
ちげーよレベルが
普通の人には理解が出来ないとわかっていても
「死のうとする人の気持ちがわからない」
と言われてしまえば終わりなんだよな
死にたいなんて思うことがないのが
普通かもしれないけれど。
頑張れとか死なないでって言葉に含まれる
残忍さって異常だし、なんとなく宥めてくれる人達の言葉は何にもならない、気休めにすら。
なんで望んでもいないのに
親ガチャ失敗しただけでこんな…と、
普通の家庭と比べて自分が直面した
不幸の数々を思い浮かべてみたら病んだ。
この世に味方はいなかった。
どこにも居場所がなくて辛かった だから
「じゃあ一緒に」
と言ってくれる友達が欲しかったから嬉しかったよ
叶わずとも。
ありがとう、覚えていたよ
最期のその時まで。
"普通"に憧れて、"普通"に飼い殺されて。
マンセーマンセー⸜🙌🏻⸝
メンヘラだって幸せに生きたかった。
普通に、ね。
𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄
命は一晩で消えます。
彼女が死ぬのに要した時間、二十二年と四ヶ月弱。
私が死ぬのにはあとどれくらいの時間を要するでしょうか。
こころはあとどれくらいで死に切るでしょうか。
あと幾つ寝れば命を使い果たせるでしょうか。
死んでみようと試みて、
実際に死ぬかもしれないと感じて
分かったことがあります。
死ぬというのは果てしなく怖いということ。
途中で気づいてしまいました。
このままふっと死んだところで
誰にも見つけてもらえないということ。
お別れを告げておきたい人が
自分の死に気づいて欲しいと思える人が
殆どいないこと。
私は彼女のように
"もし自分が死んだら
LINEのトークルームに残した人達に
訃報の連絡を入れて下さい"
なんて頼めるような人も、トークルームに残す人も
ろくにいないのでした。どうしよう。
気づいてしまった途端、
吐き気を催す程の寂しさに襲われました。
お前には何も無いと言われている気分です。
空っぽの人生です、こんなにも足掻き苦しんでも
今手元にある私の生きた証拠の箱の中身が
空っぽなことに気づいてしまった。
どうやったら意味のある人生を送ることが
出来たのでしょうか。
どこで間違えましたか、私は 私達は。
ひょっとして間違えていたのは私だけですか?
もう答え合わせすらままならないのに
𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄
処世術は所詮顔。
この世を生き抜くために必要な金も顔面偏差値も
何もかも持ち合わせていないのやばやばのやば!
勘違いしないと生きていけないけど
勘違いすらできそうにないこの顔、何?
人格形成ミスられた被害者はこっちなのに!
人生詰んだのは自分のせいじゃないのに!
自分が一番辛いのに!
理不尽だ死ね!全ては環境が悪い
私を不幸にするすべての要因、
不幸になればいいのに。
わかったようなフリをしてくれている人でも
結局すぐに愛想を尽かして離れていくのを見て
自分にも相手にも絶望してしまう、
もって三ヶ月以内。
いい加減幸せにさせろや、なんなんですか本当に。
嫌でも美人のこと妬むし嫉むし
人の目見て話せないし不快にさせるし
ブスでいていいことないよ、
なんでこの世にブスが存在するんですか?
平等にしてくださいよ…
努力も愛情もすべて無駄になってしまうくらいなら
最初から期待したくなかったのに。
なんでほんの少しでも幸せになれると
勘違ってしまったんだろう。
いつから、どこから。
人生が狂い始めたのは、平穏が崩れたのは。
?
それでも愛していたんだ
𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄
私が死にかけている夜に
世界には穏やかな夜が流れている
なんていう皮肉。
世界は綺麗だ、私の醜さと対比して。
彼女が亡くなった夜にもそうだったのでしょうね
私が平然と過ごした夜が
彼女の最後の地獄だったなんて。
今私の目の前では
随分とゆっくりな走馬灯が流れています。
そちらはどうですか。
死んでも迷惑になって疎まれて、
生きていても誰かの迷惑にしかなれず、
"お前なんか産むんじゃなかった、死んじまえ!"
と慟哭され。
なんの為に産み落とされたんですか、私は。
どうしたら上手く生きられた?
ひとつでいいから自分を必要とされたかったです。
なんでもよかった、それだけで。
なんて嘘です。ごめんなさい。
私を見て欲しかった、ちゃんと。
愛して欲しかった。
愛される素質がなくてごめんなさい。
抱きしめて欲しかったです、最後くらい。
謝って欲しかった。
家族でいたかった。ヒトになりたかった。
無条件に愛されたかった。
まだ死にたくない
私はまだ生きていたいんだと思う
ごめんなさい
𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄
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この
文 ショ
ヴ
に
八
意
味
ガ
あ
...
What the Hell
What the Hell
What the Hell
…
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穏やかな放課後
橙色の記憶
私が生きる限りは脅かされない
傷の舐め合い ささやかな希望の記憶
あの日私達は確かにそこにいた
二人の少女は生きていた
死にたがりの夢を描いた
まだ子どもだった
それを幸せと疑わなかった
そうだよね
本当に?
𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄
元より不出来な頭を懸命に醒まして思い出す
記憶達は本当に定かなのか どこまでが本当で
どこから私の改ざんがはじまっている?
何一つ自信がない
私が信じていたもの全てが嘘かもしれない
あの日見た景色は あなたの声は においは 温度は
何が正しい どれが本物で ねえ 嘘つきはだあれ?
そう思った途端、なにかが切れた。
おまえだ
かのじょをころしたのは みごろしにしたのは
すくえなかったのは
わたしだ
ひとごろしは
それでも
こんな私を愛してくれるかい
こんな私を
許してくれるというのかい
君は。
とんだ大馬鹿者だな。
そんな君を心から愛している。
愛するということは傷つけるということ。
幸せになるということは忘れるということ。
こんな文章も私のことも忘れていて欲しい、
どうか。
私はずっと忘れずにここにいる。
抱き締めすぎてもはや原型を留めていない記憶と
間違えているかもしれない愛と共に。
君よ お帰り。
君の きみだけの地獄へと
𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄
願わくば
どうか君だけは幸せであれ
君自身が為るべき
目一杯の幸せと愛に溢れて
生きていけますように
どうか
私の分も
彼女の分も
おしまい
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