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舞台『阿修羅のごとく』ストーリーと感想

WOWOWライブで放送された舞台『阿修羅のごとく』を録画したものを観ました。

ストーリーと感想を備忘録として書きます。
※ネタばれがありますのでご注意ください。
※文中の敬称は省略させていただきます。


『阿修羅のごとく』




【原作】

向田邦子

【脚色】

倉持裕

【演出】

木野花

【出演】

小泉今日子
小林聡美
安藤玉恵
夏帆
岩井秀人
山崎

【ストーリー】

とある日、三女・滝子(安藤玉恵)の話したいことがあるという連絡により、四姉妹が集まることに。
数日前、70歳を迎える父親が愛人らしき人物といるところを目撃した滝子は、興信所に父の身辺調査を依頼したのだ。
四人は母親に知られることなく、父に浮気を解消してもらうための作戦を練る。そんな姉妹だが、実は自身の生活にもそれぞれ悩みを抱えていた。
長女・綱子(小泉今日子)は仕事先の妻子ある男性と不倫関係、次女・巻子(小林聡美)は夫の浮気の予感にもやもやした日々を過ごし、三女・滝子(安藤玉恵)はその潔癖さで男性との出会いもなく、四女・咲子(夏帆)はボクサーの彼との不安定な生活に疲弊していた。
ままならない現実にあたふたと、それぞれの業を抱えて正直に生きようとする四姉妹の闘いの日々は続く。阿修羅のごとく…。

【感想】

美術はとてもシンプル。客席が四方に設えられたセンターステージの素舞台。黒子がテーブルや椅子、電話などを運びこむところから物語は始まる。全体的に暗く色味のない舞台上で、公衆電話の赤色がひと際目立つ。

暗転で転換されるとき、静かな雅楽、太鼓、三味線が響く。フラメンコの激しい楽曲も流れる。この音楽の使い方がとても印象的だった。

ストーリーは原作に忠実だったが、後半の四女の件がカットされていて、母親の葬儀までだった。後半をばっさりカットしたのはどういった意図なのだろう?

キャスト全員が実力のある方々なので「ん??」と感じることなく、ノンストレスで安心して作品を楽しめる。
長女・綱子の妙に色っぽい未亡人、次女・巻子の良妻賢母、三女・滝子のお堅い潔癖さ、四女・咲子の恋愛第一主義と献身。もうそのままなのではないか?と思うほどはまっていた。
次女・巻子の夫の言動にいらっとするのは変わらないな~。いい悪いではなく、男の本音にいらっとするからだ。
ラスト、四姉妹が明るく雑談しながら母親の葬儀に参列するため、喪服に着替えている。現実はなにも変わっていないし、問題も解決していないだろう。
それでも、彼女たちはそれぞれの立場で、今日も明日も踏ん張って生きていくのだ。
舞台をかすかな涼風が流れ、カタルシスを連れてきてくれた。

【余談】

『阿修羅のごとく』は原作も既読で蔵書にもある作品。
NHKのドラマ版(1979-1980 和田勉・高橋康夫)、映画版(2003 森田芳光)も観ていたし、今はないセゾン劇場で上演された舞台も観に行ったことがある。
何度観てもいいものはいい!と感じさせてくれる作品だと思う。

向田邦子の作品はどれも人の業が描かれていて、ときどきしんどくなることがある。メンタルが下がり気味のときは近寄らないことにしている。引っ張られるからだ。
それでも嫌いではないので、読むし観る。そこに人という生きものの真実があると思うから。

【リンク】

モチロンプロデュース「阿修羅のごとく」


WOWOWライブ 向田邦子「阿修羅のごとく」


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