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イスラム飯:イスラム×お酢×ヴィーガン

ハラールに気をつけて暮らすことが多いですが、ヴィーガンの知り合いもいます。ある時ふと思ったのですが、イスラム教徒とヴィーガンの食生活は食べられる分野が重複することがあります。

実は今年のラマダン中に、イフタール(断食明けの晩餐)でキャベツパイを焼いたことがありました。キャベツをクミンとコリアンダー、塩で炒め、茶色になるまで鍋で炒めます。そしてパイ生地にそのキャベツパイの中身を敷き詰めて、チーズをのせてオーブンで焼きます。

これはお肉は一切使っていないし、豚やアルコール由来の調味料もないのでハラールと言えましょう。ただ、ヴィーガンからすると、問題はチーズとおそらくパイ生地に含まれているバターなどの乳製品だと思います。

しかしながら逆を言えば、乳製品なしで作れればイスラム教徒でもヴィーガンでも食べられる食事が作れる、ということになります(完全肉食主義のミータタリアンはこの際置いておきます)。

逆にヴィーガンが食べれて、イスラム教徒は食べられない食事がある場合があります。例えば「お酢」です。

正確に言えば、イスラム教徒は「お酢の種類によって摂取できるお酢が変わる」のです。

まず第一に問題とされるのが原料です。上記のインドネシア語のサイトの解説「ハラールなお酢 vs ハラームなお酢」によれば「自然の食べ物からできたお酢」なのか「アルコールから精製されたお酢」なのかで「ハラール」なのか「ハラーム」なのかカテゴライズ分けされています。例えばアルコールから作られるワインビネガーやモルトビネガーはアウトですが、お米から作った米酢は問題ないとします。

第二にアルコールに対してのトレーランス(許容性)が問題になります。というのも、酢は微量ながらにアルコールが含まれているからです。下記のミツカンのお客様相談室によると、お酢には0.2%程の微量なアルコールが含まれていると解説されています。そして、それは原料が発酵する際に自然に発生するものなので、避けられません。

そのため、人様々、基準様々です。アルコールであればすべからく駄目という人もいるし、育った土地の基準に従い、問題ないと捉える人もいます。また、酩酊しないので問題ないと解釈する人もいます。そのため要確認になります。ただし、原材料にアルコールと書いてあるものは注意が必要です。

私はミツカンの『純米酢金封』を買っています。「国産米100%」とあるように原材料表記にも「米」だけなんです。ヴィーガンにもお酢のアルコール成分にゆるいイスラム教徒の人にもシンプルに説明できます。

無難なのはハラール認証のあるお酢を選ぶこと。例えばハラールのお酢が出ているので、迷ったらハラール酢を買ってしまった方が早いです。

ですが、上記の問題でイスラム教徒が頭を悩ませる一方で、ヴィーガンには何も問題がありません。原料の収穫過程で企業が何かしらの動物を追いやっていたりしない限りは。

ここで、「自然に発酵してできたもの」というのが重要なキーワードになります。お酢を通して、イスラム教との食事とヴィーガンのライフスタイルが共存する空間が見えてきます。それは「自然の食事はどちらも食べられる(可能性がある)」ということです。即ち、野菜や天然の発酵物、それら由来の調味料ですね。

逆にいえば、ミータタリアン(完全肉食主義者)は例外とし、『自然の食事』は誰もが食べられる万能の原料なのです。動物性の食事になると二者、制限されるものが増える点は同じです。この点はある意味、ジャイナ教の視点とも言えるでしょう。

とはいえ、二つの観点は違います。エシック・ヴィーガン(思想的にヴィーガンになった人)は倫理的、あるいは反種差別的な観点から抑制します。一方で、イスラム教徒は宗教的な理由からお肉を食べることを抑制します。

結局は人間なので、お腹が減ったら何かを食べなければなりません。そういうところでお互いの人間性が料理やフードダイバーシティーを通し、わかるところが面白いですね。


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