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現代アート研究

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現代アートを学び始めた外資系IT企業のプリセールス。 難解な現代アートを探求する学びの記録。
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2020年1月の記事一覧

武田陽介 個展『RAM』と山本捷平 個展『Re: Reiterate』 - アンスティチュ・フランセ

京都で武田陽介の個展、『RAM』が開催されていることを知り、国立国際美術館でインポッシブルアーキテクチャ展を見た後に、見に行った。 武田陽介の京都初個展。 光の扱い方、捉え方が特徴的な作品を作ると認識していた。 ステートメントには、カメラの中が燃えるほどの露光をするとあった。 「Digital Flare」 カメラでないとみることができるない世界、画面の切り取りではない作品。通常、写真作品の場合、カメラで撮影する対象がポイントになるが、彼の作品ではカメラの痕跡、レン

インポッシブル・アーキテクチャー

出張のついでに、大阪の国立国際美術館。インポッシブル・アーキテクチャー展を見にきた。 技術的には可能だけれども、予算がかかりすぎて実現不可能な建築物。 このキーワードが一番の成果だったように思う。 最初の展示室にある映像作品。ウラジーミル・タトリンの『第3インターナショナル記念塔』。ソビエトに建築される予定だった。もしくはコンセプトだけだったか。素材と構造とギミック。そうしたものを実現する技術力は当時にはなかった。それがCGで再現されている。なんとも奇妙な体験。時代が経

「見えないかかわり」イズマイル・バリー展とWhat's Karl Gerstner? Thinking in Motion

2020年から兼業を開始した。 転職という選択肢もあるかと思うけど、新しい職場で一からポジションを取るのは、正直しんどい。けれども昨今の転職市場では、デジタルの人材は引く手数多、年齢もあまり関係がない。こうした状況は2025年あたりをピークとして2030年までは継続すると思う。ひとつの会社で年収を上げていくよりも転職をうまく使ってキャリアを形成していくというのもひとつの考え方だとは思う。 僕の勤務先が副業を認めていることもあり、デジタルの知見を本業と競合しない形でサービス

オープンゼミ: イタリアンデザインの本質、プロジェッタツィオーネについて考える 聴講メモ

東京藝大でハンス・ウルリッヒ・オブリストの講義を聴講した翌日、武蔵美の市ヶ谷キャンパスのオープンゼミを聴講してきた。 講師はイタリア在住の多木陽介氏。年に一回くらい帰国して、そのタイミングで武蔵美でオープンゼミを開催しているらしい。 イタリア・デザインプロジェッタツィオーネとはデザインの替えてに用いた言葉、アキッレ・カスティリオーニが使った言葉だという。イタリアデザイン、まだ、デザインという言葉に馴染みがなかった時代に使われていた。 2018年は生誕100周年だった。

雲のように考える:コンテンポラリー・アートはどこへいくのか 聴講メモ

年明け早々に、東京藝大でハンス・ウルリッヒ・オブリストの公開講義があった。チケットは相当人気で、あっという間に満席になっていたように思う。 ゼミ生も多く参加した公開講座、日本のアート関係者も多く出席していた。結構、名の知られた人も一般席で聴講していた。招待席を埋めていた人達は、ベテランというか、そうした人たちと若い人たち。若い人は学生なのでしょうね。20代から60代が入り混じって、講堂は満席になっていた。 5時間くらい話したいと言ったハンス・ウルリッヒ・オブリストに対して

ファッション批評は止まらない

現実の時間軸に追いついたと思ったものの、noteに整理しておきたいことがまだまだあった。 ファッションはもっと言語化されなければならない。 タイトルは2019年の夏に受講した講義、西谷真理子先生によるもの。アートライティングの一環としてのファッション批評講座だった。 その講義でいろいろと発見があった。 ここ数年は、本業でも兼業でも、ファッションビジネスの支援が多い。とりわけアパレルビジネスに携わってきた。最初はECサイトの構築からだったけれど、そのうちサプライチェーン

研究の方向性 その2

ようやく現実の時間軸に追いついた。 2019年4月から学び始めた現代アート、展覧会に出かけたり、本を読んだりしたことをまとめるのはもちろんのこと、そうしたことを記録しようと思い、12月頃にnoteを始めた。記憶が新鮮なうちに記録しておこうと思った次第。 12月は教授の指導がある。11月に提出した中間報告について講評。 中間報告にあたっては4月からのアート活動、自分の中に元々あるもの・あったもの、社会情勢と情況からアートの交点を議論したいと思っていた。 アートビジネスに

Usuyuki ジャスパー・ジョーンズ

年末、残っている仕事もわずかであり、既にクリスマス休暇に入っている同僚が多くて、オフィスは閑散としている。僕は中間報告を提出して、1年目最後のスクーリングに向けてぼんやりと過ごしていた。 ファーガス・マカフリー東京でジャスパー・ジョーンズの展覧会を開催している。期間を確認したら、終了タイミングギリギリだった。(なんだかこういうの多い) ギャラリーは無人だった。 じっくりと作品鑑賞をする。 作品説明を渡されたが、金額はなかった。 Usuyuki 日本に滞在していたと

やなぎみわ展 神話機械

ゼミで演劇を研究している同級生とアーティストのY先輩から、やなぎみわの神話機械を観よという指令。12/1まで神奈川県民ホールで開催していた。 神話機械とは、機械によるパフォーマンス、開始時間が決まっているので、それにあわせて行動する。 展示はポートレートのような写真作品から始まり、代表作というエレベーターガールに続く。その先に神話機械があり、桃園の写真、インスタレーション的な展示へとつながる。 やなぎみわは、アート・プロジェクトKOBE 2019:TRANS -でパフォ

『現代美術史』出版トークとその後

出版記念トークスクーリングで話題になっていた『現代美術史』。その出版記念トークが祐天寺のギャラリー、why not?で開催される。SEA*1に関する記載が多いということで、ゼミの同級生でSEA研究をしている同級生を誘って出かけてみた。 why not?の画廊主、黄金町のキュレーターと著者は、同じ時期にロンドンへ留学していたということ。その縁で出版記念トークになったらしい。ちなみに、why not?も開廊したばかり。 博士論文を下敷きとしてまとめたという著書。30代の若さで

アート思考について

現代アートの現代性。 現代に求められている形、現代に対する応答としての現代アート。 不連続、不確実の時代、社会がどのようになっているのか、現代アートがそれを見つめ直す助けになるはず。 アート思考が流行った2019年。およそ次の二点になるような気がする。 1. アートの技術を学ぶということ、例えばデッサン 2. ゼロからイチを求める(生み出す)ということ 1については、デッサンを通じて右脳を鍛えようというもので、カルチャースクールのような印象は否めない。確かに、物の